図書紹介
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世界をつくった6つの革命の物語  新・人類進化史(How We Got to Now)
(スティーブン・ジョンソン著、大田直子訳、朝日新聞出版、2016年8月30日発行、第1刷、324ページ、1,900円+税)

デニマルさん : 11月号

今回紹介の本は、現時点では余り話題になっていない。しかし、面白い内容で参考になる点が多々あり取り上げてみた。筆者が、ここで紹介する本の情報源は色々ある。Webでは、アマゾンや楽天のブックランキングやメルマガがある。その他新聞広告や書籍紹介もあるが、一番好きなのは書店巡りである。特に、ジュンク堂や紀伊国屋書店は、話題の本や必要な本が探し易い配列になっている。それと本好き仲間との定期的な交流が色々と役立っている。今回の本は、その交流会で友人から勧められて読んだものである。この本は、有史以来から人類が創り出した数々の発明や創造物を六つ選び出し、それを物語風に分かり易く書いている。それらが誕生した歴史的背景やそれに関わった人々の苦労等から、人類の進化が読み取れる本である。F・ベーコンが「ノヴム・オルガヌム」で、世界を変革した物は「印刷術・火薬・羅針盤」と書いているが、その対比で読むのも面白いかも知れない。

一つ目の革命は「ガラス」    ――ツタンカーメンのコガネムシ?――
現在のガラス製造は、ケイ砂とガラス破片とソーダ灰等を1600度に熱して熔解させ、冷却させている。しかし、このガラスというかガラス玉は、3500年以前にエジプトにあったと言われている。そのガラス玉が、鏡からメガネとなったのが1400年頃、更に顕微鏡や望遠鏡となり、カメラのレンズに進化している。そのガラスが、光ファイバーケーブルとなり、現在のWEBに繋がっている。その原点にツタンカーメンの装飾品があるという物語である。

二つ目の革命は「時間」     ――ガリレオが見た揺れる祭壇ランプ?――
時間は、太陽と地球の天体運動の中にある。それを時間という概念で標準化を決めたのがイギリスで、時に1840年代と書かれてある。そしてグリニッジ標準時が国際標準となったのが、1884年である。問題は、その時間を測定する機器である時計が正確でなければならない。その時計が振り子型として登場したのが14世紀頃らしい。その後クォーツ(水晶振動子)の発見で革命的な時計が誕生した。それが現在の原子時計に繋がっていくのである。

三つ目の革命は「人工光」    ――自然光から人工光(ロウソク)の進化?――
人類が太陽や月や雷等の自然光から、火を制御することで他生物にない進歩を遂げている。しかし、火から人工光に到る過程は、まさに暗黒時代でロウソクからランプに代わり、電気(電球)が出現するまで2000年近い歳月を経ている。エジソンが電気ランプを発明したのは、1879年である。この人工光のエネルギー源が、電気や化石燃料に進化している。将来「人工の太陽」の可能性があるレーザー光の熱源利用研究にも、物語は広がっている。

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