今月のひとこと
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 理想のボランティア 

オンライン編集長 深谷 靖純 [プロフィール] :9月号

 9月1日は防災の日です。そして、今年のPMシンポジウム2016はこの防災の日に開催します。今年で19回目を迎えますが、幸いなことに台風や地震といった災害に見舞われることはありませんでした。PMシンポジウム用の緊急対応マニュアルを策定し、開催の都度見直しを加えていますが、毎回、出番がありません。今後も、緊急対応マニュアルのメンテナンスは継続することになると思いますが、無駄になってくれることを祈ります。

 そのPMシンポジウムですが、昨年の総参加者数は2日間で2300人にのぼり、PM関連のイベントとしては世界的にも最大規模となりました。さらに今年は昨年を大きく上回る見通しです。また、この大規模なイベントがボランティアスタッフ主体のPMシンポジウム実行委員会によって企画・運営されているということに驚く方が大勢います。
 PMシンポジウム実行委員会活動は、P2Mの特徴の一つである3Sモデルの実践(研修・訓練)の場と捉えることができます。前年の10月頃から隔週で開かれる企画会議はスキームモデル、4月頃からはシステムモデルにあたる運営会議に移ってPMシンポジウムの形を作り上げます。そして大会当日はサービスモデル、必ず振り返り会を実施するので次の年のPMシンポジウムのスキームモデルに、その結果をフィードバックしています。ボランティアスタッフの大半は、仕事を通してなど何らかの形でPMに関わりを持っています。PMシンポジウム実行委員会活動がPMスキル向上に繋がる実践研修の場であるということが、高いモチベーションをもたらしているだろうことは容易に想像できます。
 PMシンポジウム実行委員会は1年近くに亘る活動ですが、サービスモデルにだけ参加するというボランティアスタッフがいます。大会当日のスタッフ数約100名の半数近くを占め、仲間内では開催当日だけの参加なので「当日ボランティア」と呼んでいます。何年も続けて参加する「経験豊富な当日ボランティア」という方もいます。かつて実行委員として活躍して方が仕事の都合等で年に1回しか参加できなくなったとか、一度やってみたら居心地が良かったので毎年参加することにしたという方などです。こういうベテランではなく、初めてボランティアに参加するという方が3分の1ぐらいいます。机や椅子を運ぶ作業でしたら、初参加でもできますが、受付や参加者誘導、講演の進行といったことになると、時間をかけて打ち合わせておかないと難しいはずです。実態は、極めて短時間の打ち合わせで比較的スムーズに仕事をこなしています。不思議なことです。PMシンポジウムのボランティアスタッフに参加する人は皆、優れた技量の持主なのでしょうか。
 PMに関わる仕事に就いている方なので、ある程度の危機対応力が高いとはいえますが、それだけで毎回スムーズな運営ができるとするのは難があります。毎回、人が入れ替わるのですから、年度によって運営レベルの上下があるはずです。個々人の素養に関係なく、一定以上の運営水準を維持するような仕掛けが組み込まれているとしか考えられません。その秘密を解く鍵は3Sモデルにあるのではないかと、密かに思っています。19回も続けているにも拘らず、毎回フィードバックされる課題件数は100件を超えています。様々な失敗をして、再発しないための工夫を考え、毎回新しい工夫にチャレンジしています。その蓄積が、初めて参加する多数の「当日ボランティア」受け入れを可能にしているのではないのでしょうか。
以上

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