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「日本再生“アベノミクス”を成功させるために何が必要か」 (28)
高齢化社会の地域コミュニティを考えよう (4)

東京P2M研究会 渡辺 貢成: 7月号

Z. 先月号は日本国の仕事の進め方について、コメントしました。私はエンジニアリング会社のPM(プロジェクトマネジメント)の専門家です。エンジニアリングとPMとは欧米社会で大型プロジェクトを実施する際に活用している手法です。その立場で日本的ムラ社会の仕事の仕方にコメントをしたわけです。理由は「日本的ムラ社会の仕事の進め方は、自らが苦心して達成した技術を基に製品化した商品に満足し、公開することに誇りを感じてきた。そのことは評価するが、それはミドルである技術者のする役割です。その価値を世界の人々のニーズに合わせ日本製品を製作することで、世界に普及するというマーケティング的努力を企業挙げて実行してきませんでした。これまでの韓国企業は金のかかる製品開発を日本に委ね、世界の消費者の潜在ニーズを取り入れて、その国の消費者の買える値ごろ感のある製品を販売しました。日本ムラ社会の経営者がマーケティングセンスとグローバル感覚の欠如で決定的な敗北に大きく貢献しています。言葉を替えると単なるマーケティング不足、マネジメント不足というより、リベラル・アーツ(原義は人を自由にする学門)の感覚不足という決定的な役割を演じてきました。急速に変化するグローバル社会の本筋を見る目を持っていないことに最大の欠陥があります。“アベノミクス”の今日の時点でも「製造業・技術・根性」を変えていません。Iさんこの点に関して今月は面白い話をしてもらえませんか。
I. 私は日本PM協会のP2M研究会活動を行ってきました。
現在の私のP2M研究のテーマは『P2Mというグローバリゼーション時代にふさわしいプログラムマネジメントを、多くの人々に使ってもらうために、協会は何をすべきか、P2M学会との協調関係の中で、何をするべきかという研究をしています。

 プログラムマネジメントは複雑なプロジェクトの企画をするスキーム・モデルから出発します。これはプログラムのビジョンを示し、戦略を考え、企画・構想をまとめるもので、プログラムオーナーが実施する業務です。

 次がシステム・モデルです。スキーム・モデルで定めた「使命・目的・目標」をベースにしてプロジェクトの実施計画をたてます。プラントでいえば設備の設計、製作・建設・検収運転までが含まれます。プロジェクトオーナーは通常専門の業者に依頼します。受注した業者はシステムモデルの実施に、米国PMI®が開発したPMBOK®を使って要領よく仕事をコントロールしています。
 プロジェクト完成後は運用に入ります。これ以降はプラントオーナーが自ら運用いたします。これをサービスモデルと呼んでいます。
 日本のPMはエンジニアリング会社によって普及してきましたが、主に石油ビジネスで、実施されました。石油精製プラントは一般の製造業とことなります。例えば化学プラントですと、決められた原料を使い、決められた手法で、決められた製品を製造しますが、石油精製は世界中から産出される種々の原油(成分が全部違う)を使って、規格で決められた製品を生産する仕事です。顧客は異なった原油を購入し、その年の暑さ寒さを勘案しながらプラントの運転をします。そのため上流のスキームモデルが最も大切です。オーナーの意向と設計者の技術を勘案して上流設計を共同で行うことで、ビジネスを成功させてきました。しかしこの上流を取り扱える技術者は少数です。エンジニアリング会社の技術者の多くはシステム・モデル実施者です。PMBOK®の資格者PMP®が世界的に多い理由がここにあります。

 しかし、近年は新しい仕事の度合いが増えており、変化のスピードが速いため、スキーム・モデルのための技術者の要請が増えています。日本PM協会はP2Mを実行できる人材育成を行う機関ですから、スキームモデルの実施経験者の育成に力を入れてきましたが、実践事例を経験する機会が少ないため、研究会で事例を集めることを心掛けています。

Ⅰ. XX町の「安心して住み続けられる地域再生事業」の調査・検討
さて、本題に戻りますが『XX町の「安心して住み続けられる地域再生事業」の検討』はまさに事例研究の大きなテーマです。スキームモデル・システムモデル・サービスモデルが含まれるテーマですが、協会とするとスキーム・モデルのためのテーマとして、絶好の機会です。そこでXX町の再生事業に取り組みましたが、細かい問題はさておき重要な課題は何かというテーマに取り組み、5テーマを選びました。
1) 町の継続性を考えたとき、若い世代を呼び込むための検討(町の魅力は何か)
2) 高齢者が健康で長生きできるが、彼らの効果的なボランティア活動の在り方
(評価システムの研究)
3) 予算増加に見合う稼げる事業の創出
4) 人生末期に幸せを感じさせる生き方を支える新しいコミュニティの在り方
(幸せの評価基準の検討)
5) グローバル社会の人々に評価してもらえる政策の実現(世界が羨む未来像)

Ⅱ. 筆者は上記5項目をテーマとして抱えて、調査に入りました。そして次のことがわかりました。
XX町は“アベノミクス”の特別区に挑戦し、成功し、計画策定のための予算を確保しました。そのため公開されたプログラム計画は筆者が想定した内容をはるかに超えた高いものでした。今月は簡単にP2Mでいう構想計画を説明紹介します。
第5次総合計画中期基本計画
人口ビジョン
総合戦略
計画期間と4つの目標
重点的方針
分野別方針
とがあり、それぞれの方針がWBSの構築になっており、全ての施策が整理、実行できる形になっていたことでした。下図は中期基本計画の概要です。しかし、内容から見て、この種の企画専門家の手によると思われる内容でした。

中期基本計画の概要

来月は、その内容を説明し、価値を見つけます。

以上

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