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「日本再生“アベノミクス”を成功させるために何が必要か」 (27)
高齢化社会の地域コミュニティを考えよう (3)

東京P2M研究会 渡辺 貢成: 6月号

Z. 4月号から登場しましたZです。自己紹介が遅れましたが、このオンラインジャーナルP2M研究会コーナーの2016年度のコーディネーターに選ばれました。4月、5月号は緊急なテーマとして地方自治のコミュニティ問題をとりあげました。緊急を理由に自己紹介を後回しにしました。
オンラインジャーナルのコーディネーターAさんは2012年9月号から登場しました。
オンラインジャーナルはそれまで、P2M普及のために、ガイドブックに書かれた重要なことの解説や書かれていない役に立つ内容の解説をしてきました。これだけでは内容が単純となり、内容は良くても面白みがなくなりました。そこでオンラインジャーナル上にP2M研究会は教室を開設し、博学なAさんにコーディネーターをお願いし、実践的経験豊かな生徒を募集し、質問、その解説という質疑応答形式の授業を進めてきました。
この授業を始めてわかったことがあります。一人で解説すると、答えが一つになってしまいます。実際は一つの課題にも答えはたくさんあります。立場の相違で異なった回答が正解になる場合もあります。ところが高度成長期時代の日本の会社のビジョンは同業他社(横並び)でした。同じ意見が常識として喜ばれたのです。これまでの日本の常識は「モノづくり日本:技術世界一」、「なぜなぜ、5回の改善で世界一の商品提供」という感じです。
ところが世界が目まぐるしく変わり始めました。世の中は何か新しい武器が登場すると、上下関係が極端に変化し、新しく取り組んだところが、王者になっていきます。これがグローバリゼーション以降に明確になりました。

さて、世界は変化が速いのですが、日本国の官僚は明治以来の伝統に大きな誇りを持っています。即ち、『官は過ちを冒さない』という方針でした。それは明治以降綿々と継続してきた不文律でした。この不文律による被害者は「水俣病患者」でした。厚生省は水俣病を企業の責任とすることを拒否し続けました。官が主張するとマスコミが本分を忘れて、官に追従します。表面的には正義の味方風に装っていますが、決して官を追い詰めることはしませんでした。
米国と国際金融資本によるグローバリゼーションが成功すると、日本の常識と世界の常識が乖離してきました。

オンラインジャーナルはP2Mやその周辺のビジネスに関する解説を手掛けている関係上、これが正しいというモノが見えなくなってきました。そこで博学のAさんにコーディネーターになっていただき、素人だが何らかの専門をもっている人材を集めてもらい、今話題になっている問題を解説してもらうことにしました。 Aさんの役割は今話題の問題の解説をBさんを選んだり、Cさんに割り振ります。Bさんの意見を聞いたとき腑に落ちおないと、Eさんが質問をするとか、自分の意見をのべます。このように何が正しいか、生徒の中から意見を出してもらいました。この方式をとりますとBさんはBさんの立場から発言があります。Cさんは別の立場で発言します。意見は反対なのですが、聞いている側からすると、立場の相違で正解は変わることが読み取れます。Aさんは自己主張をすることではなく、Bさん、Cさんの意見を聞いて各位に判断を委ねます。この多様性を理解することが、P2Mの最大の特徴です。そこでこの方式を2016年3月号まで、Aさんにお願いしました。

ここで解説の方法を例えばの話で説明します。
財務省は財政問題の危機を救うために消費増税は必要不可欠であると主張しています。この論議に賛成する方が日本には多く、安倍政権の前の野田政権が消費増税を取り入れ、自民党も巻き込んで消費増税することを国会で承認されました。
ところが財務省の進めるデフレ政策と異なる脱デフレ政策をとるのがアベノミクス”ですが、自民党が賛成したためにアベノミクス戦略の中に消費増税が取り入れられました。
(1) 財務省案
財務省、マスコミの説です。『既に1000兆円をこす国債を発行している。国民の資産を食べつくしている。税収なしに国債を発行し続ければ日本は破綻する』。

日本人の行動⇒「もう日本は資産がなくなっている。このままでは日本は破産する。
増税に協力しよう」と野田総理が賛成し、国民も賛成しました。
“アベノミクス”第一回戦は財務省が勝利し、増税を実施しました。
これが、現在の多くの日本人のメンタリティーです。
(2) これに対する反対論があります。“アベノミクス”推進者の浜田イエール大学名誉教授です。「デフレ脱出を求めるならば、消費増税は折角実行した景気対策をぶち壊す役割をするから、現時点の増税はやめるべきだ」となります。
ところが、財務省案は採用され、結果はデフレ政策となってしまいました。
そこで、昨年の増税は延期しましたが、今年は延期しにくい状況もあるので、安倍総理は今回、米国の経済学者ホール・クルーグマンに語らせています。
これは米国の権威の意見を国民に聞かせ、これからの自分の政策をサポートしてもらうためです。この場合も延期という決断のようです。

この場合はいくつかの課題が残されます。
延期か中止かという問題です。課題の先送りです。
中止であれば、財政再建はどうするのという問題が残ります。
ここが財務省の攻め筋だからです。
しかし、財務省案を、このままこれを認めたら日本は駄目になること必然です。
(3) 財務省案を変える方策を提案しなければなりません。
賢者は歴史に学ぶ、愚者は経験に学ぶ:
正しい提案:歴史に学ぶならばデフレを乗り切るために国債を発行し、景気政策を
  実施します。
景気対策で潤う業者がでてきます。国債発行で儲かった企業の所得税で国債返済にあてます。儲けた人から税金をとるならば、景気は衰えません。そして儲けた企業からの税金だけでなく、景気が回復することで、国中の景気がよくなり、景気の良さで、多くの人の収入が増え、国の税金が増えるという形で、国債の返済が進み、財政再建は可能になります。
歪んだ政策1:これに対し財務省案は、景気対策のお恵みを受けない下々から更に
  税金を取り上げる方針です。収入の増えない下々は税金分以上に金を使わなくなります。これが問題点1.
歪んだ政策2:財務省は国債発行に対し、民間銀行が購入した国債を中央銀行
  (日銀)は買い上げてはならないという不文律(法律ではない)を決め、20年間実行してきました。
その結果国債を使えるのは国だと定めた効果をもたらしました。国は景気対策として関係各省庁が景気対策予算を国会に計上し、全てを計画的に使いました。(社会主義的発想)。突然景気対策費が予算化されて関係各省庁は予算化に苦労しました。農水省は予算をたくさん頂戴し、無理無理農道をたくさん造り、漁業はローカルの港湾に金を使いました。これでバブル崩壊で倒産寸前のゼネコン大手10社が生き延びました。ゼネコンは正規の予算で生き延びるために自己の取り分を増やし、多くの中小企業への支払いを減らしました。景気対策で多くの中小企業が倒産しました。(この結果東日本大災害の復興予算が中堅ゼネコンの消滅で工事が進まず、予算消化ができないのが現業です)
(各省庁も同様な成り行きで、国債消費がGDP拡大につながりませんでした。
この間韓国はIMFの命令で、1業種1財閥に決められ、世界的に競争力を増しました。
日本はゼネコン10社、家電10数社、メモリー製造10社が国債を使いながら生き残りに協力し、ゼネコン10社を除いて他業界は没落しました)
歪んだ政策3:国債発行で国主催の研究開発予算が増えました。会計監査は予算の
  使い方の不正を監査するのが役目だそうで、研究開発の成果に対する監査はどこも行っていないことがわかりました。その結果数百億の研究費から成果の出る研究が少ないことがわかりました。(米国の大学は成果を出した教室に予算を増やし、すそ野を広げ来ましたが、日本は予算をとることの上手なところに予算が集中し、成果がでない仕組みが構築され、それが正当化され今日まで続きました。
歪んだ政策4:財務省の賢い政策はまだあります。国債で景気対策をします。
  景気対策で国指定の業者が潤います。そこで民間が景気対策に向けて設備投資を企画します。この時期にタイミングよく、消費税を増加します。この時点で国民は財布の紐を絞めます。そこで民間企業は設備投資を取りやめます。ここで景気対策は取りやめとなり、不景気に逆行し始めます。その結果現在大企業に設備投資用の積立金が300兆円たまっています。そして不景気になるために、また国債発行の口実ができ、国債が使われます。20年間この繰り返しで、1000兆円金をつかって、観光事業に必要な国際ハブ空港ができず。所要空港型首都圏までの新幹線敷設もなく、ハブ港湾もなく、利用者優先の政治はなく、国の施設を管理する機関が増え、20年間でこれら官に関連する機構に200兆円の金が流れています。
  なぜ、このようなことを書いたかと言いますと、以上の深い内容の現実は国民には理解できません。マスコミも簡単に真実はかきません。
正しさとは人が文章を書いて1つの案件をコメントするときに、正の見方、不の見方がある中で自分の立場から見たコメント選びます。でも別の人なら別の角度でコメントできます。それはあくまでもその個人の関係する領域で正しいか、おかしいかという話になります。オンラインジャーナルはその欠陥を正すためにコーディネーターを置き、それぞれの専門領域の人からの発言をしてもらうと読者の理解度が高まると考えました。
最初はAさんに約4年間コーディネーターを務めて頂きました。Aさんはプロジェクトマネジメント(PM)の専門家です。通常の技術者とは異なり、PMはすべての業界分野に関係するため、幅広い知識、経験の持ち主でした。Aさんの視点の信条は「PM関係者は結果に責任を持つという」ものです。

さて、ゆがんだ政策という財務省の問題点の指摘だけでは、オンラインジャーナルの役割は果たせません。日本の官庁と米国の政策についてコメントをしておきます。
高度成長期の日本の官庁は世界に恐れられていました。米国は大蔵省をたたくことに苦心していました。バブル後の大蔵省案は世界的に画期的なものでした。国債で大企業とその従業員、その下請け企業および従業員の救済です。日本で通用する情のある政策でした。しかし、ドライな米国では、国が民間の不手際を救済するのはタブーな事柄でした。ではリーマンショック後の米国は何をしたでしょうか。米国の政策は「日本ではバブル崩壊後の企業救済に国債を使った事例を採用し、米国経済を復旧する政策を採用しました。
米国のFRBはこの政策を徹底的に活用し、景気回復までの深い景気対策をとって回復に成功させたことです。
では日本の政策との違いは何だったのでしょうか。日本は景気対策に国債発行しました。しかし国債は民間に使わせませんでした。そのため企業救済ができました。景気が上向き始めたとき、大蔵省は過去のバブル期に金融緩和した苦い経験がトラウマになっていました。すぐさま消費税の実施に踏み切りました。思惑通り景気は萎みました。そこで国債を発行して景気対策を実施しました。20年間を眺めてみますと、大蔵省の不景気対策は恒常的に国債発行を促す政策でした。大蔵省は国民の金を毎年の予算として恒常化することに成功しました。この方式は既得権益者にとって恵みの神でしたが、国民にとってどうだったのでしょうか。
しかし、私たちが学ぶことは、「FRBは世界に向けて責任をとるという姿勢があった」ことです。

米国には戦略研究所があります。日本には各省庁が勝手に予算を提出し、一体化した戦略がありません。優秀な人材を集めて、おれはお前たちより優秀だという態度で国民に接しても、大切なのは個人の優秀性ではなく、組織の優秀性です。
日本ではこのような大切なことが実行されていないことに対し、国民はもっと素直に抗議するべきです。しかし、オンラインジャーナルは抗議をする組織ではありません。解決策を提案する組織です。

この4月から私(Z)が2番目のコーディネーターに選ばれました。その理由はこの複雑な社会、スピードのある社会の変化に対応するには、少し深い部分まで掘り下げたコメントを提供する必要があると思っています。財務省の言い分を「財務再建のため、国民は税金を払う義務がある」という論理は何かおかしいと感じ、更に掘り下げてみる必要があります。同様に日本だけの立場ならAでもいいが、グローバル的立場ではZでないと勝てないねというような課題が山積しています。これらをコーディネートせよというのがオンラインジャーナル編集長の狙いです。

今月号は2か月遅れの自己紹介でした。
XX町への提案はゆっくりした流れの中で進展しています。自己紹介を長々行ったため、今月はこの問題を取りやめました。

以上

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