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「ダイバーシティ時代のプロジェクトマネジメント」
~結果を出す力~

井上 多恵子 [プロフィール] :7月号

 「すごい! 岡村さんは、なんであんなに次から次へと、講座が開催できるのだろう。」岡村さんは、方眼ノートトレーナーの仲間だ。彼は会社勤めをしながら、会社から了解を得て、業務効率化のコンサルタントをしている。一緒に講座を受けたのが、今年の2月。彼は、方眼ノートで次々と結果を出している。
 一方の私はといえば、思うような結果が出せていない。私なりに、色々やってきたつもりだ。facebookで知人に方眼ノートのことを紹介し、興味がありそうな人に個別に声もかけた。職場の同僚にも共有をしてみた。方眼ノートを使って、説得力のあるプレゼンを英語で作るということも試してみた。「これいいね、」と興味を持ってくれる人は何人かいたが、時間とお金をコミットし、講座を受けてくれる人はなかなか出てきていない。
 結果を出すことに対する岡村さんと私の違いは、どこからきているのだろう。まず、圧倒的な情報発信量の違い、という点がある。彼は日々、ブログで発信している。また、朝活も開催していて、業務効率を改善したいと言うビジネスパーソンとの接点を持っている。そこに集まる人達は、業務効率化のために時間とお金を既に投資している人達なので、方眼ノートも受講しやすい。3つ目として、小さなPDCAを何度も回して、その過程で、しっかり振り返りを行い、振り返った内容を仲間に共有し、フィードバックをもらって、次の行動のレベルを上げているという点が挙げられる。
 私もPDCAはやってはいる。だが、岡村さんとの大きな違いは、振り返りの質と、その時のマインドセットなのだろう。私の場合、トライをしてみて反応がイマイチだと、がっかりして、次の行動を取らなくなってしまう。しかも、振り返りの時に、ゼロイチの発想になりがちだ。うまくいかなかったから他の時もうまくいかないに違いない、と勝手に思い込んでしまう。そして、しばらく何もやらない期間が続いた後、他の人に刺激を受けてようやくまた行動するというパターンが多い。何故こうなのか。客観的に振り返るのは容易ではないからだ。行動を細く分析し、やり方をどう変えれば次の時はうまくいくかもしれないと考えるためには、うまくいかなかった事実と向き合わなければいけない。
 結局は、自分が傷つきたくないから、なんだと思う。会社の仕事だったら、やり遂げなければいけない。しかし、方眼ノートだと、大変な思いをしてまでやらなくてもいいという甘えが出てくる。
 会社で仕事が与えられるという環境は、恵まれている、研修で言えば、自分が集客をしなくても、目の前に、新入社員や階層別の人たちが登場する。その人達に、ベストな研修を提供さえすればいい。社内講師の場合は、次の回があるということが決まっているので、そこに向けて、PDCA を回しやすい。一方方眼ノートの場合は、PDCA を回しても、講座に人が来てくれるという結果につながらないかもしれない。特に基盤ができていない今は、そのリスクが高い。その時でもめげずに次の手を打つために、何をしなければいけないのか。
 「なぜ方眼ノートを教えたいのか」という問いに対する答えを自分の中で確固たるものにすることが、大事なのだろう。目先のことに一喜一憂しないために、より大きな目標を意識すること。方眼ノートの指導者の高橋さんからずっと言われていることがある。「あなたが方眼ノートを教えたい理由を100個書いてください」以前その宿題が出た時は、正直、拷問だと思った。「3つぐらいでいいんじゃないの???そんなに書けないよ!」苦し紛れに書いた理由は、高橋さんに響かなかったようだ。
 最近、なんとなく、なぜ100個の理由を書くのかがわかってきたような気がする。新しいことをやろうとする時、そこには様々なハードルが待ち受けている。そのハードルを苦しいけれども、ひとつひとつ超え前進していくためには、高い志みたいなものが必要だからなのだろう。高橋さんに言わせると、それは、「ケアしたい相手の存在」だ。自分中心の理由ではなく、例えば、英語のプレゼンがうまくできずに悩んで辛い思いをしている人達に、英語でプレゼンをする方法を届けることによって、気持ちを楽にしてあげ、その人達が、自分のキャリアを一歩前に進めるようにしてあげたい、そう思えば、頑張れそうな気がする。
 この考えは、プロジェクトリーダーとして、プロジェクトマネージメントをするときにも適応できる。なぜこのプロジェクトをやるのか、このプロジェクトをやることによって誰のどんな悩みが解決できるのか、誰に、どんなより良い生活が届けられるのか、それをチームメンバーの共感を得られる形で語ることができれば、チームメンバーを動機づけることができ、ハードルを乗り越え結果を出すことができるのだと思う。

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