図書紹介
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すべての疲労は脳が原因
(梶本修身著、集英社新書、2016年5月29日発行、190ページ、第4刷、700円+税)

デニマルさん : 7月号

今年6月、日販は2016年度上半期(2015年11月~2016年5月)のベストセラー(総合)の発表をした。それによると1位は「天才」(石原慎太郎著)、2位は「おやすみ、ロジャー魔法のぐっすり絵本」(カール=ヨハン・エリーン著)、3位が「羊と鋼の森」(宮下奈都著)であった。更に、5位に「火花」(又吉直樹著)、6位に「嫌われる勇気」(岸見一郎、古賀史健著)、7位「置かれた場所で咲きなさい」(渡辺和子著)が入っていた。これらの本は、この話題の本のコーナーで紹介したものである。中には2016年上半期以前に紹介したものも含まれているが、話題の先取りとして紹介したのかも知れない。今回紹介の本はユニークなテーマで、健康に関心ある方にとっては重要なことが書かれてある。普段、余り手にしない本だが、健康と疲労の関係について最新の研究結果について纏めてある。著者はクリニック院長であり、医学博士でもあり、抗疲労食薬開発プロジェクトの統括責任者として活躍している。専門的な分野を、事例を交えて分かり易く書かれた参考になる本である。

どうして疲労するのか?         ――疲労のメカニズムと脳疲労――
一般的な疲労は運動や仕事でエネルギーが枯渇したから「疲れる」のではない。長時間エネルギーを使っても筋肉や肝機能は殆んど影響されないことが研究で分かっているという。運動をすると、呼吸数や心拍数や体温が上昇し、身体が環境適応するために自律神経が働き、「脳の中枢」が酸化ストレス状態となる。これが疲労感で、筋肉疲労ではなく「脳疲労」なのだ。この疲労感は、身体を正常維持するためのアラームで、機能しないと病気になる。

疲れと慢性疲労はどう違う?       ――疲労は正常で慢性疲労は病気――
著者は、疲労感と疲労は別なものと書いている。徹夜で仕事をしてお客や上司から評価されると疲労感は和らぎ、スポーツでも結果が良ければ「疲れが飛ぶ」といわれている。これらは疲労感を疲労として感じない状態で、これを長く続ける「過労死」の危険が伴うという。疲労感は身体を休ませるアラームで、正常な機能なのだ。だから疲労感を長期に亘り我慢し続けると慢性疲労症候群という病気になり、入院加療が必要だと著者は警告する。

疲労回復はどうするのか?        ――休養、食事、栄養ドリンク等――
先の疲労感は個人差があり、体温計の様に測定する方法は研究途上である。だから疲れを感じたら、身体を休めるかキチンと睡眠をとって正常に戻す必要がある。一般的な疲労回復法には、休養以外にも食事や散歩やお風呂やショッピング等々の気分転換もある。中でも家族や友人仲間との団欒が効果的と言われている。特に、疲労は「脳の中枢」の酸化ストレスが原因なので、栄養ドリンクより体のリラクセーションの方が有効な回復法である。

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