関西P2M研究部会
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「ビッグデータ」と「地方創生」二つの研究分科会について

関西P2M研究部会 朝田 晋次 [プロフィール] :6月号

 2016年5月21日研究部会で、2016年1月の当オンラインジャーナルで紹介いたしました、二つの研究分科会の報告を行いました。
 それぞれの概要を簡単に紹介します。
 ビッグデータとP2M研究分科会
 2014年10月から2015年4月にかけて行った勉強会に引き続き2015年8月から当分科会で、文献調査や事例調査を中心に議論を行ってきましたが、ビッグデータは先駆的・実証的な段階を越え、既に社会実装されて広く社会・産業で活用されていることがあらためて認識できました。
 「ビッグデータ」という言葉が広く知られるようになったのは、2011年5月にMcKinsey Global Instituteから発表されたレポート「Big data: The next frontier for innovation, competition, and productivity」(以下、マッキンゼーレポート)からだと考えられます。当分科会では、先ず原典ともいえるこのマッキンゼーレポートとビッグデータがもたらすパラダイム変革とリスクを本格的に述べたベストセラーである「ビッグデータの正体(2013)」をメンバーで読み込んだ後、各自が文献や事例を報告していきました。
 これらの文献と事例調査により、データサイエンティストと呼ばれる人々が活躍し、種々雑多で膨大に存在するデータの間に価値ある相関関係を導き出して、可視化したり予測したりして、新たなビジネスや社会サービスが創出されていることが分かりました。
 一方で、データ流通の仕組みやサイバーセキュリティなど、ビッグデータをさらに活用する上での新たな課題が提示され、技術だけでなく社会的・倫理的対応が求められるようになっています。
 現在は、ビッグデータとAIと相まって、産業、社会、文化にさらに大きなインパクトを与え、あらゆる分野にパラダイム変革をもたらすものという認識の下に、日本だけでなく、各国(ドイツ「インダストリー4.0」、米国「先進製造パートナーシップ(AMP2.0)」、中国「中国製造2025」など)、企業はその大きなインパクトを具体的に評価し、パラダイム変革後に勝ち抜く戦略立案を躍起になって進めています。
 当研究分科会はビッグデータがPMに与えるインパクトを評価しようとするものでしたが、分科会活動を通じて、現在は産業、社会あらゆる分野で、ビッグデータがもたらすパラダイム変革の真最中にあります。ここ数年以内にビッグデータがもたらすパラダイム変革の結果、PMにおいても従来の方法論、知識体系を見直す時期が訪れると考えられます。
 地方創生に向けたP2M 研究分科会
 分科会の活動目標を「プロマネが主導する地方創生事業の、立案・運営、実施の場面で、協会が存在感を発揮する組織・体制を提案する」こととし、①「地域インフラ維持管理と防災・減災に向けた取組研究」と②「地方創生事業運営主体とその体制、事業者とその体制調査」を実施して、その運営体制とPMAJの体制との差異を検討して、PMAJが取るべき体制の提案をまとめることを目指しました。  ①「地域インフラ維持管理と防災・減災に向けた取組研究」では、2016年3月11日の第127回関西例会における柗村一保 氏の講演を通じて、「大阪府GIS官民協議会」(GIS大縮尺空間データ官民共有化推進協議会)の永続的運営と他府県との連携・展開等を図る方策を議論しました。クラウドファンディング等の活用、全体マネジメントする人材の登用、国や自治体の政策誘導などについて議論しましたが、結論は出ておりません。今後は研究分科会とは別のステージで議論できないかと考えております。
 ②「地方創生事業運営主体とその体制、事業者とその体制調査」の調査を進める最中に、日本科学技術振興機構(JST)の研究開発プログラムを運営する人材を育成する「プログラムマネージャー(PM)人材育成・活躍推進プログラム」の講座に、PMAJ本部から講師派遣していることが分かりました。既に本部がこのような活動をされていることを知り、心強く思います。我々地方メンバーが同様の取り組みをする際にはご指導いただけることを期待しております。
 最後に
 ここまで二つの分科会活動を支えていただいた分科会メンバー、P2M関西各位にあらためて感謝申し上げます。
 「地方創生」のテーマについては分科会とは別のステージで何らかの取り組みを行えないかと考えております。皆様からアイデアをいただければありがたく存じます。
 「ビッグデータ」につきましては文献、事例研究の形でまとめをさせていただきました。この大きなうねりの中では既成概念に囚われずに柔軟に対応することとともに、過去の経験を活かすことも重要であることを感じております。

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