関西例会部会
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第126回関西例会 レポート

PMAJ関西 KP 西 毅: 4月号

【データ】
開催日時: 2016年3月11日(金) 19:00~20:30
場所: 大阪市立 総合生涯学習センター 5F 第3研修室
テーマ: 「地域インフラの維持管理と防災・減災」
講師: 松村 一保 氏/GIS大縮尺空間データ官民共有化推進協議会
参加者数: 18名(スタッフ3名含む)
講演概要:  
Google Maps、Bing Mapsなど地図を利用したWebアプリケーションが身近なものになってきているが、官民が連携した業務での地図の利用は普及していない。
講師が参画している GIS大縮尺空間データ官民共有化推進協議会の活動内容と大阪府内の行政、公益企業が利用している道路工事調整会議システム、小学生の防災教育のために利用している地域防災MAP作成支援システム、更に、大阪府の防災訓練で利用している災害情報共有システムなどについて紹介をする。
*GIS:Geospatial Information System(地理情報システム)
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●はじめに
 講師がメンバーとして活動する「GIS大縮尺空間データ官民共有化推進協議会」(以後協議会)は、官民が個別に管理している地理情報を協議会が提供する大空間情報プラットホームシステムに統合することで、社会インフラの整備、メンテナスにかかるコストの低減や地域の防災・減災MAP作り支援、災害時の情報共有化システムなどの活用を促進している。
 今例会では、本取組の社会的意義、活用事例、システム構成、今後の課題まで多岐にわたり興味深い内容を講演いただいた。

●社会インフラ整備が直面する構造的課題
 日本が直面する社会インフラには4つの直面する課題が存在する。
  ・加速度的老朽化
  ・地震、気象災害による国土脆弱化
  ・人口減少による地方疲弊化
  ・国際競争激化
 これらの問題に対してインフラ整備を担う自治体は、予算、人材が不足する中、ハード対策に依存しすぎることなく、ITCと民間活力を導入したソフト対策に注力すべきである。

(1) ITC活用による電子自治体へのパラダイムシフト
 自治体は、「オープンソース」「オープンデータ」「クラウド化」を中心とした電子化により行政業務のプロセスを見直し、自治体間での連携は、共同のアプリケーションをもちい、情報技術を使った政策の立案・実行を目指すべきである。

(2) 官民新スキームの構築
 行政は、市民、企業と業務を連携し、学に研究用フィールド提供することで実践(業務、防災訓練等)システムを開発する官民間での新スキームを構築する必要があり、そのためには、自治体が持つデータは公開、活用促進に努めるべきである。

(3) 協議会のアプローチ
 阪神大震災により地理空間情報の重要性が認識されたが、いまだに道路情報として道路自信の管理、上下水道、電気、ガス、通信の埋設情報は、各自治体、公共企業が個別に管理し、各インフラの整備、メンテナンス時には、機関間の調整に多大なコストをかけている。
 協議会は対策のアプローチとして、空間基盤データをデジタルマップ時代にふさわしい整備、更新の手法を提供し、基盤データを扱うコンテンツを流通することで、見る、伝えるだけの情報から、コミュニケーションするためのツールとして提供することを主目的においている。
 協議会は、大阪府、府下市町村、大学、ガス・電気・通信インフラ企業が参画し、アドバイザーに国土政策局、国土地理院に迎えることにより利用者が安心して使用できる信頼を築いている。

(4) 活用事例
 官民共有による事例として、「道路規制情報共有」「道路占用調整会議」「埋設物調査」が紹介された公開資料を参照してほしい。ここでは防災、減災に対する活用事例を紹介する。

1.防災MAP作成支援
 小学生に地域MAPを配布し、夏休みを活用して、地域の危険個所、災害時の避難場所とそこまでの避難ルートを地図に書き込み、PTA,地域ボランティアが小学生の記入したデータを入力し、共有防災MAPを作成した。小学生は、避難場所として敷地面積の大きさから大学施設を選択したが、防災用に開放しているのではなく、避難場所としては、不適切であるなど認識のギャップが判明した。
 別事例として、河川の多い地域で大雨や河川反乱時の浸水シミュレーションとMAPを重ね安全な避難場所、避難ルートを確かめた防災訓練が紹介された。

2.DXF出力機能
 大阪府を中心とした近畿の一部の道路情報が、DXFフォーマットによる精緻な印刷ができる機能があり、大阪市内、泉南地区を中心に多く活用されている。

(5) 協議会に対しての評価と今後
 協議会は、本システムの普及として、教育機関の協力を受けて、活用実践講座などにより人材育成・教育を促進している。
 このような活動が認められ、G空間ExpoのGeoアクティビティフェスタによる表彰や、国土地理院地図パートナーネットワーク会議に地理空間情報の活用推進パートナーとして参加している。

1.交流活動
 協議会は、関西Gフォーラムでの発表や、小学生測量体験学習の指導、土木展への出品地域防災訓練へのシステム影響など幅広く交流活動を行っている。
2.海外交流
 中国、韓国は、協議会の取り組みに関心を持っており、発表会、意見交換会、セミナーなど活発な交流が行われている。

(6) 今後
 「道路」情報に特化し、さらなる産学官連携の強化、効率化をめざし日常業務だけでなく、災害発生の非常時のコミュニケーション用ツールとして活用できるよう「防災関連のシステム」開発を実施する。
 また、安定稼働の資金源として、埋設物調査システムを有料展開していくこと、大阪府から全国自治体のへ展開を模索していく。

●おわりに
 講師からは、他府県でも同様の活動をされている方はおられるが、組織だって動けているのは、協議会ぐらいと伺った。ただし、協議会もまだまだ人・物・金は不足しておりシステム管理しているサーバーも災害対策が十分ではない施設にあるとのこと。
 興味ある方はぜひ、講師へ連絡を取っていただきたい。

●講演の様子
講演の様子

以上

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