今月のひとこと
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 就 活 

オンライン編集長 深谷 靖純 [プロフィール] :4月号

 入社式(入庁式や入〇式)がある4月1日まで、都内の桜は散らずに待っていてくれました。これから開花という地方もありますが、何となくウキウキする春です。社会人になったばかりの若者たちには、出来るだけ長く初々しさを保ってもらいたいと思います。

 経団連所属企業の選考開始は6月からということで、現在は各地で会社説明会が行われています。「エントリーシート(履歴書)の書き方」「面接の受け方」講座が花盛り。いわゆる就活関連サイトを覘くと「合格率100%」とか「会社説明会で質問する〇項目」といった見出しが目につきます。かつて通ってきた道とはいえ、就活中の学生の皆さんには「大変ですね。頑張って下さい。」と声をかけたくなります。
 本欄の読者の中にも、お子さんが就活真最中という方がいらっしゃると思います。そうした方に、お尋ねします。
 お子さんが書いたエントリーシートを読んだことがありますか?
 もし、お子さんが就活戦線で苦労しているようなら、ぜひ、読んでみてください。大学の就活指導部署や就活アドバイザーの支援もあって、かなり確りしたものができているはずです。「我が息子・娘もたいしたものだ」と感心するかもしれません。そこで、「親の目」を「プロジェクトマネジャー(またはPMO)の目」に置き換えて、もう一度読み直してください。
 エントリーシートの書き手をプロジェクトメンバーに招き入れたいですか?
 お子さんが背伸びをして、自身の長所を大仰に記述していたとしても、親の目では意外と気づかないものです。しかし、PM経験のある方であれば、根拠が希薄であるとか、論理に飛躍や矛盾がある文書は、すぐに見抜いてしまいます。
 ここ数年は、知能や資格よりもコンピテンシー重視の傾向にあり、成功体験欄に何を書くかが重要です。ピント外れな記述となってないでしょうか。抽象的な言葉が並んで具体性に欠けるということはないですか。どのような課題に対し、どう捉え、どう行動をしてどのような成果を得たかが伝わらないと、コンピテンシーを評価できません。プロジェクトの現場では、事実・実態を把握し、分析・評価することが重視されていますが、企業の採用担当部署でも同じです。PM経験者には、お子さんの記述の問題点が透けるように見えるはずです。
 会社選択理由、あるいは会社で何をしたいかを記述する欄はどうでしょう。就活に臨んで明確な目的・目標が定まっていれば、稚拙な文章でもその思いは伝わります。取敢えず入社できればといいとか、有名な会社であればいいとかだと、会社に阿るような書き方になっている恐れがあります。社会に出て長く揉まれてきた親の世代ならば、殆どの方が見抜けます。PM経験者であれば、プロジェクトを立上げる前には不明確だった目的・目標が次第に具体化していくというプロセスを見聞きする機会があったのではないでしょうか。自ら経験されている方もいるかもしれません。就職にあたり、お子さんが明確な目的・目標を見出せていないとしても、心の中には何らかの想いがあるはずです。PM経験者であれば、それを引き出す手伝いができます。

 編集子は、数十人の就職希望者との面接経験があります。1次、2次の面接を通過してきた学生が相手で、編集子の次は最終面接となります。一人に1時間から2時間をかけて面談し、どのような人物であるかを描こうと努めるのですが、描き切れない場合は評価不能、最終面接に進むことはありません。
 能力や適性等は重要なことですが、採用したいと思わせるには、まず自身をより正確に評価してもらう必要があります。どんなに実力があっても、評価の土俵に上がらなければ採用されることもありません。お子さんが就活戦線で苦労している場合、その理由の大半は土俵に上がれていないからだと推定されます。PM経験を活かして、お子さんが土俵に上がる手伝をしてあげてはいかがでしょうか。
 お子さんのエントリーシートを読んでみてください。

以上

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