今月のひとこと
先号   次号

 クッキングPM 

オンライン編集長 深谷 靖純 [プロフィール] :3月号

 早咲きの桜が満開です。緋寒桜とか寒緋桜とかといわれる種類ではないでしょうか。ソメイヨシノの開花も今年は早くなるのかと思って、開花予想を調べると平年並みか遅くなるということでした。何でも、暖冬のせいで桜の芽がすっかり眠りこけてしまって、なかなか目覚めないのだそうです。桜も春眠暁を覚えずということですか。

 うれしい出来事があると、祝杯を挙げたくなる。
 祝杯となると、肴は新鮮な魚がいい。ということで、魚屋を覗く。天然の真鯛なんかが飾ってあるが、一人で飲るには贅沢すぎる。大勢で祝う機会があれば考えよう。今日の祝いは一人でひっそりといきたい・・・。
 祝杯イベントプログラムを楽しくマネジメントしてみよう。まずはミッションプロファイリングならぬクッキングプロファイリングである。「一人でひっそりと祝杯」には、酒も肴も高価なものは似合わない。廉価でうまいものに限る。手間をかけ過ぎてはいけないが、少々の手間はかけたい。となると、出来合いのものを器に盛るだけではなく、包丁をちょっと使ったりしたい。プロの技からは程遠いので、複雑なことはしない。ただ、切るだけで体裁よくなるというのがいい。酒屋と魚屋を覗きながら、祝杯のメニューを絞り込んでいく。最初は曖昧だった祝杯のイメージが次第に固まっていく。
 スズキの半身を発見。旬には早いが4、5匹入れたそうだ。安かったので直ぐに売れてしまい、刺身用にと半身だけを買っていった人の残りだそうだ。うろこも骨も始末済なので、何もせずに焼くだけでいい。もちろん、刺身もいい。もう一品、サイズ不揃いのアジがザルに盛られている。イワシが好物なのだが、新鮮なアジが出た日には、いいイワシは出ない。商店街の小さな魚屋では、競合する商品を同時に出したりしないのである。「ひっそり祝杯」の肴はこの二品で決まり。
 次は、酒。ワインもいいが、やはり日本酒の出番である。新酒が出始める時期だが、肴に合わせて、しっかりとした味の純米酒を選ぶ。祝杯プログラムのうち、酒プロジェクトは調達だけで完了。帰宅すると、スズキプロジェクトとアジプロジェクトの開始である。
 定常業務のうち、炊飯は買い物に出かける前にタイマーセット済み。味噌汁用に出汁取りと野菜を切る。ぴったり二人前。ついでに、ネギと生姜を刻む。生姜はすりおろしと千切りも作る。これは定常業務とスズキ・アジプロジェクトのタスクを兼ねている。生魚の調理を行う時は、まな板が汚れるので野菜等の下拵えを先に済ませる。作り置きのヒジキの煮つけ、ポテトサラダがあるので、食事の直前に厚揚げ豆腐を焼けばいい。
 コブを2枚用意し、1枚は酢に浸しておく。
 まずはスズキ。水洗いしてキッチンペーパーで水気を取り、皮を剥がす。身の端を切って、味噌汁用に取り置く。残りの身には塩を振って、置いておく。小鍋に湯を沸かす間に、皮を細く刻む。等分に切るのは難しいが、太くなっても千切れても気にしない。湯が沸いたら、皮を放り込む。再度沸いたら、ザルに取り水で冷やす。蛇口から直接水をかけると、飛んで行ってしまうので、丁寧に扱う。キッチンペーパーで水気を取って、小鉢2つに等分に分け、すりおろした生姜をかける。ラップをかけて冷蔵庫に。
 続いてアジ。小アジ・豆アジサイズが多く、三徳包丁ではやや面倒だが、全てゼイゴを取って三枚におろす。大きめの2尾分の片身4枚を除いて、キッチンペーパーを敷いた皿の上に並べて塩を振り、ラップをかけて冷蔵庫に入れる。4枚の片身は小骨を取って、皮を剥ぎ、5ミリ程度の幅に切る。小ぶりの角皿2枚に等分に分け、刻んだネギ生姜を山盛りにかける。これもラップをかけて冷蔵庫に。
 塩を振っておいたスズキの水気を取り、酢に浸しておいたコブで包んでラップで巻いて冷蔵庫に入れる。これは明日の祝杯用の肴になる。明日もいいことがあるようにと祈る。
 塩を振ったアジは、半日はそのままにしておかねばならないので、祝杯イベントの後に手を加える。やはり、水気を取ってタッパーに入れ、コブと千切り生姜と併せて酢漬けにして冷蔵庫に戻す。明日でもいいが、味が良くなる1週間後の祝杯用の肴とする。
 いよいよ祝杯イベントプログラムはサービスモデルに移る。炊飯タイマーに合わせて、味噌汁と厚揚げ豆腐を用意し、作り置き食材を小皿に装い、日本酒をぬる燗にする。冷蔵庫から角皿と小鉢を取り出し、包丁、まな板、小鍋は、合間に洗っておく。
 スズキの皮の湯引きとアジのたたきは、酒を嗜まない奥様にも好評。
 一人、チビリと乾杯。

ページトップに戻る