おやすみ、ロジャー 魔法のぐっすり絵本
(カール=ヨハン・エリーン著、三橋美穂監訳、(株)飛鳥新社、2015年12月29日発行、29ページ、第4刷、1,296円+税)
デニマルさん : 4月号
今回紹介する本は、副題にもある通り絵本である。現在マスコミで取り上げられた話題を追うと、子供が心理的に眠くなるように考えられたストーリィと文章上のフレーズに種々の工夫が成されている。この著者はスウェーデンの行動科学者で、大学でコミュニケーション学の講師を務めている。その経験を生かして本書を書かれたとある。当初この本は自主出版されたのだが、英訳されてから口コミで話題となった。絵本作家でない人の絵本、眠り効果の高さ等からアマゾン史上で初めてのランキング入りとなり、アメリカやフランスや日本に広まっている。現在まで40か国での翻訳が決まっているという。それと日本での翻訳者は快眠セラピストで、過去に寝具メーカーの研究開発部長も経験された睡眠のスペシャリストである。絵本の専門家とは少し違う分野の方々が手掛けた本で話題となっている。この本を読む親御さんや、読み聞かせ対象のお子さんにとって魔法となるのであろうか。絵本の在り方や親子の読み聞かせの本をどう選ぶか、この話題も含め参考にしたい。
魔法のぐっすり絵本 ( その1 ) ――本書には読み方手引きがある――
この本の冒頭に読み方手引きと書かれた脇に「注意!車を運転している人のそばで絶対に音読しないこと」とある。それ程この本の眠りの魔法性を訴えたかったのか、それとも編集者の際どいジョークなのか。読む前に身構えてしまった。それ以降に書かれた内容は、ごく普通のものである。絵本だから「ゆっくり、静かに」読んで、多少の抑揚を入れ、相手の名前を呼ぶ等の細かな工夫も成され、ストーリィから語句から深い眠りを予感させる。
魔法のぐっすり絵本 ( その2 ) ――心理学的効果で実証済み――
お子さんにとっての眠りは、脳を成長させるために必要な要素で、良質な睡眠が身体の成長にも不可欠である。これを学問的に研究開発された方法の一つに「自律訓練法」がある。この本には、そのメソッドが含まれていると監訳者は書いている。睡眠に必要な要素(暗くなったら眠る。疲れたら眠る。お風呂等に入って、深部体温が下がると眠る。リラックスしている)をこの本から読み取り、お子さんだけなく親御さんもいい眠りが期待できる。
魔法のぐっすり絵本 ( その3 ) ――読むだけでお子さんが眠る――
先の学問的手法を取り入れたこの本には、幾つもの心理的テクニックが入っているという。その一つに「いますぐ」が繰り返されている。これで現在の「眠ることに集中する」暗示効果を高めている。更に、眠りに引き込まれる気持ち良さを「ゆーらゆら、ゆーらゆら」「くたくたで、くたくたで」と語句を繰り返すことで、実際に手足が重く、温かくなるイメージを感じ自然に眠りに入る。語られる言葉からユックリ眠りに誘われる絵本である。
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