赤めだか
(立川談春著、㈱扶桑社、2015年12月10日発行、306ページ、第2刷、650円+税)
デニマルさん : 3月号
今回紹介の本は、2008年に出版された単行本の文庫版化されたものだが、第24回講談社エッセイ賞を受賞している。この著者は、現在最もチケットの入手しづらい落語家である。著者の師匠は、落語界の異端児とか鬼才ともいわれた立川談志である。この師匠は古典落語に通じ、理論と感性で落語に取り組む一方、旧態依然とした落語協会を脱して落語立川流を一人で立上げた人でもある。その師匠が亡くなる27年前に、新弟子として入門したのが著者である。その荒唐無稽・破天荒な師匠の下での落語修業を綴ったのがこの本である。このストーリィが2015年末にドラマ化されテレビで放映されて話題となった。それ以前から漫画「昭和元禄落語心中」(雲田はるこ著)が書かれ、そのアニメ化がテレビ放映(TBS)されている。更に、数年前から“しぶらく”と称する「渋谷らくご」が、特に若い女性に人気を呼び、連日満員盛況であるという。新たな落語ブームの再来であろうか。この本は、今最も話題性も高く内容に富んだ本である。
落語の世界を知る ( その1 ) ――「入門」(弟子入り)――
著者は、高校時代に立川談志の高座を聞いて「落語より談志に魅力を感じて」入門を強く決意した。親の反対を押し切って高校を中退しての入門である。落語家になるには、師匠の下に弟子入りして一緒に生活をしながら修業する。著者の場合は、ある事情で住込みの新聞配達をしながら「通い」の修業である。その修業中のエピソードが種々書かれてある。中でも、師匠の稽古を「断った話」があるが、厳しい師弟関係では言語道断の事件である。
落語の世界を知る ( その2 ) ――「昇進」(二つ目)――
入門が許されると「前座見習い」として師匠の身の回りの雑用をする。その中に高座裏方の作業や舞台の諸準備もある。これらの修業を経て、やっとお客様の前でチョット落語が出来るのが「前座」である。高座で本格的に落語が出来るのは、「二つ目」からである。立川流の「二つ目」昇進には、落語50席と寄席のお囃子と踊り等の試験があり、これに合格して一人前である。著者の「二つ目」昇進は入門して4年後の1988年で、22歳直前だった。
落語の世界を知る ( その3 ) ――「一人前」(真打)――
落語家で師匠と呼ばれ、弟子を持つことが許されるのは「真打」に昇進してからである。著者が真打になったのは1997年で、二つ目昇進から9年後。その真打の昇進試験は、単に落語を披露するだけなく、その高座をどう企画するかが問題である。著者の「真打」試験を判定する師匠が納得いく高座(演目や前座を誰が務めるか等々)が絶対条件。試験会場は国立演芸場、そこで歴史に残るドラマが展開されたが、それは読んでのお楽しみである。
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