P2Mクラブ
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サービス業におけるイノベーション

(株)竹中工務店 林 健太郎 [プロフィール] :3月号

2月10日に10名が参加してこのテーマで1時間ほど私が話をし、休憩をはさんでその後50分ほど意見交換となった。P2Mクラブには、初参加の方もおられたが、P2Mの基礎知識は持っておられる方が多数を占めるため、プログラムマネジメントがめざす「What to do」と、サービス業における「イノベーション」の共通点に焦点を絞って話をした。
私にとって、このテーマを人前で語るのは初めてであった。(実は、同じテーマで2月12日に関西例会で講演する予定であった。)いつのときもそうだが、自分以外の人に理解していただくためには、考えをできるだけシンプルにわかりやすくする必要があり、今回の準備も自分にとってとても有益な機会となった。
詳細な内容についてはこの2016年3月号オンラインジャーナルに関西例会レポートとして掲載される予定であるので、以下に概要を示す。

<説明概要>
製造業で品質管理に携わってきた技術者たち(サービスクオリティ研究会)が、サービス業への品質向上を研究した成果を、「サービスとは」という理論編と「サービス品質向上のマネジメント」という実践編の構成で話した。
自社(建設業)においても、請負工事として建築物を引き渡すことで完了していた時代から、PPP/PFIなどのように一定期間の運営まで役務に含むようなスキームが出てきており、建設プロジェクトの上流から下流までをいかにつくり込むかが問われてくる。
サービスの定義、サービスの構成要素、サービス品質の要素とその測定方法、について、様々な文献をあたったうえで、研究会メンバーが納得できる「仮説」として整理している。サービスとは、お客様との「共創」の関係になることから、その品質評価もお客様の事前期待とどこを重要と考えているかに大きく左右される。
一度は満足していただいていても、繰り返していくうちに期待値があがり、あるレベルを超えるときには「イノベーション」が必要になる。
それを日本古来の考え方である「守破離」サイクルにあてはめて、どうマネジメントするとよいかを実例を交えて紹介した。
そのマネジメント構造として、P2Mとも共通する「ミッション、ビジョン、バリュー、戦略の立案・実行(PDCA)」が重要であると考えていることを説明した。
また、サービスを提供するのは「人」であるため、実績をあげている組織が注力している人材育成と従業員満足の向上にも言及した。

そして、意見交換に入ると次のような意見が出た。
<意見交換>
「共創」と説明されたが、CSVの概念では「協創」という言葉を使う。その辺り、明確に意識されているか?→特に、意識して使ってはいない。→ポーターの英語原文をどういう日本語に訳すべきか、という議論はしてもあまり意味はないと思う。
顧客が個人か、企業や官庁か、によって説明の仕方が変わると思う。個人の場合は、「おもてなしサービス」という概念は理解しやすい。企業や官庁の場合は、どうか?特に建設やエンジニアリングの業界で行われる「技術サービス」というものについて、どう品質向上するのか?→そこを今後検討していきたいと考えている。
人材育成において、その人を評価するときに、どういう指標で評価したらいいか、悩んだことがある。その時は、その人が行う業務が「ていねい」か「親切」か、で違うと説明した。相手の立場に立つのが「親切」な業務である、ということ。

今回話した考え方も「正解」というものではなく、仮説である。しかし、自分が納得できる仮説で「実践」して、また「仮説」を修正していくことしかないと常々思っている。P2Mのコミュニティーでは、実践でリスクを背負って仮説・検証するのではない意見交換ができるのと、経験を形式知として共有できるのが、最大の魅力であると思う。
P2Mは「実践型職業人」を目指す30代の方々に学んでいただき、「守破離」サイクルを実感していただくことが重要だと思う。プログラムマネジメントの理解と実践がむずかしいという声を聞く。自分で考え、自分の仮説を持ち、それを実行して、繰り返し仮説を修正し続け、目標を達成するまで、明るく、へこたれず、チームで頑張れるようになることこそが、そういう声への答えだと思っている。

以上

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