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「エンタテイメント論」(95)

川勝 良昭 Yoshiaki Kawakatsu [プロフィール] :2月号

エンタテイメント論


第2部 エンタテイメント論の本質

6 創造
●発想阻害排除法 ②
 優れた発想は、発想を阻害する「破壊行為」、「誤解」、「無理解」などを排除する事で生まれる。

 特に破壊行為は、個人、会社、官庁などの活動に甚大な被害を及ぼす。どんな組織にも他人の夢を破壊する人物が実存する。私利私欲や責任回避など己の損得で判断し、行動する人物である。従って誰がその様な人物かを識別できなければ、その破壊行為を阻止し、排除できない。排除できないならば、如何なる「優れた発想 (思考) 」も、その「実現のための発汗 (行動) 」もすべて無駄になる。

●破壊工作と破壊行動を如何に防ぐか?
 犯罪学の分野を除き、世の中に実存する政治学、社会学、経営学、創造工学、発想法など、殆どの種類の学問や方法論は、「善意、善徳、善行」の人物を暗黙の前提 (Implicit Assumption) として構築されている。
 
 しかし現実の世界では「悪意、悪徳、悪行」の人物が必ず実存する。この様な人物は、己の私利私欲と責任回避などのためには個人、会社、官庁などの活動を巧妙に極秘裏に計画的に妨害し、破壊する。しかもその事に何ら良心の呵責を感じない。破壊された人物は悪夢を経験し、苦悩する。


 この現実に対して既存の学問や方法論は、全く無防備で「優れた発想」は無視され、その「発汗の行動」は闇から闇に葬られる。しかもその様な「悪意、悪徳、悪行」の人物は、性格異常者ではなく、高い学歴を持ち、高い職位にいる。

 しかも妨害や破壊の工作や行動がバレることはあまりない。おまけに陰のリーダーは、組織的、非公式に強固な陰のグループを形成し、すべてを操る。更に「犯罪構成要件」に合致する行動 (犯罪行為) となる様なヘマはやらない。

 この陰のリーダーは、優秀で仕事が出来る。上司への対応は抜群で、部下の面倒もよく見る。その結果、多くの人から尊敬され、若い頃から将来を嘱望され、年と共に出世街道を着実に登る。しかし一皮を剥けば、悪意、悪徳、悪行の本性を持つ危険人物である。

●抗・悪夢工学
 この様な人物が正々堂々と組織内を闊歩し、真面目な人物が利用され、時に泣きをみる。この様な現実を放置できない。何としても排除せねばならない。

 この様な人物はどんな性格をしているのか? 如何にその人物を識別するか? 識別できたら如何にその人物の破壊工作を排除するか? この様な「悪意、悪徳、悪行」の人物を「明確な前提 (Explicit Assumption) 」として真正面からそれらの問いに答えるのが「悪夢工学」である。

 これは、悪夢を創り出す工学ではなく、破壊されて悪夢を経験する事を防ぐための工学である。正しくは「抗・悪夢工学」である。しかし世間の耳目を集め、夢破壊者と戦う事を宣言するため敢えて「抗」を除いた。

 筆者は、夢を実現するため「夢工学」を構築し、その活用を提唱する一方、悪夢を防ぐために悪夢工学も構築し、その活用を提唱している。その内容は、紙面の制約で説明できない。もし興味のある読者は、以下の「夢と悪夢の経営戦略」を参照する事を薦める。

「夢と悪夢の経営戦略」著者;川勝良昭 出版:亜細亜大学購買部(直販)2010年 「夢と悪夢の経営戦略」
著者 : 川勝良昭
出版 : 亜細亜大学購買部 (直販)
2010年

●発想に関して「誤解」したり、理解しないと「優れた発想」を生み出せない。
 多くの人に「発想」について尋ねると以下の答えが返ってくる。しかしいずれも誤解である。正しく理解すべきである。
優れた発想は、天才の専売特許である。
優れた発想は、特別な能力のみが生み出し、独創的アイデアを創り出すことだ。
優れた発想をする能力は、知能指数と正比例する。
優れた発想をする能力は、自分には一切無い。

●優れた発想は、天才の専売特許ではない。
 優れた発想をする力は、天才の専売特許ではない。芸術、科学、工学、事業などの分野で素晴らしい業績を残した普通の人は沢山いる。しかしレオナルド・ダビンチやモーツアルトは天才であることは間違いない。
出典 左 : ダビンチ、
右 : モーツアルト
aidobonsai.com & music sheet
出典 左:ダビンチ、右:モーツアルト aidobonsai.com&music sheet

 レオナルド・ダビンチは、今から 400年前に、飛行機、潜水艦、銃、自転車、軸受ボールベアリングなどの基本的アイデアを考案し、絵や図面を残している。人間離れした宇宙から来た人物の様だ。

 モーツアルトは、彼の生きていた時代に、シュ―ベルトそっくり、バッハそっくり、ハイドンそっくりの作曲が出来た。また彼等の演奏をそっくり真似ることも出来た。そして彼の独創が加味され、素晴らしい音楽が生み出された。

 彼は作曲の内容をすべて頭の中で構築し、その結果を譜面に書き下すだけで曲が完成したと言われている。筆者は疑っているが、ハリウッド映画「アマデウス」の中では、その作曲シーンが描写されている。

●優れた発想は、特別な能力のみが生み出すものではないし、独創的アイデアを創り出すことだけではない。
 特別な能力がなくても、多くの優れた発想が日々生み出されて。また独創的アイデアだけでなく、普通のアイデアを出すことも重要である。そのアイデアが世の中で役立つか否かが最も重要なことである。

 確かに世界で唯一無二の独創的なモノを生み出すことは素晴らしいことである。またそれに向けて挑戦すべきである。しかし世界唯一の独創的アイデアではないが、色々なモノやコトガラを「組み合わせたアイデア」も、立派な発想である。また「組み合わせ」だけではなく、その逆に、あるモノを「分解、分割、分離したアイデア」も立派な発想である。

 しかし幾ら優れたアイデアを発想しても、世の中に役立つ様に実用化されず、実用化されても人々に活用されず、活用されても「価値 (★) 」が評価されなければ、そのアイデアは「存在意義」を失う (★ 黄金の三角ピラミッドの考え方)。

黄金三角ピラミッド

 この三角ピラミッドは、①科学と工学と事業は、上下の関係ではなく、常に対等であること、②それらの上位に芸術が存在することを意味する。日本の国は、いつも「科学・技術振興」に膨大な金を投下する。しかし殆ど実現せず、成功していない。

 しかし日本の国は、何故か新しい知と技を使って事業化する「事業振興」に「金」を投下しない (融資ではなく投資の意味)。その結果、日本の新事業起業率は世界最低である。更に日本は文化勲章、芸術賞を芸術家に贈る。しかし国のあらゆる行事では芸術家は末席に座らされている。欧米では最上席に座る。芸術軽視の思想が根底にある。芸術は、科学も、工学も、事業も支配する最高の位置に実存する「実態」である。

●優れた発想をする能力は、知能指数と正比例しない。
 アインシュタインも、エジソンも、知能指数は普通で、学校の成績はあまり良くなかったと言われている。発想能力と知能指数は正比例しないと考えるべきだ。

 何故なら、そもそも「知能指数」自体、信用できるものか? 発想能力指数というものは存在するのか? あったとして信用できるものか? 疑問ばかり浮き上がる。

 発想能力の有無は、優れた発想が生まれただけでは判断されるべきではない。それが「新しい知」を生み出したか? 「新しい技」を生み出したか? 「新しい価値」を生み出したか? そして「新しい美」を生み出したか? によって判断されるべきものである。

●優れた発想をする能力は、自分には一切無いとは誤り。
 自分への自信の無さ、学歴の無さ、失敗ばかりの経験などで自己嫌悪になっている人物は、自分に発想する能力があるなどと到底思わないだろう。

 某会社で興味深い「意識調査」が行われた。それは、創造的な社員とそうでない社員についてである。自分が「創造的である」と思う社員は創造的な成果を上げており、「創造的でないと思う社員」は創造的成果を上げていないということであった。

 発想能力は、自己嫌悪の人物にも、自己賞賛の人物にも、本来備わっているのである。しかし自分には発想能力が無いと思った瞬間、それが失われるのである。

誤解や無理解は、暗黒への一歩! 誤解や無理解は、
暗黒への一歩!

つづく

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