協会理事コーナー
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「PMAJ」への思い

村瀬 達哉 [プロフィール] :12月号

 そのめぐりあわせは偶然であった。私自身の専門が経営工学という背景はあったものの、その後、建設会社、援助機関の勤務では、特段その専門性を生かすエンジニアとしての人生を歩んでは来なかった。2008年10月に異動した部署に勤務しながら、日本工業大学専門職大学院 (技術経営) に翌年 4 月から入学し、転機が訪れた。
 そこでPMAJでご活躍されている清水基夫先生、武富為嗣先生にお会いし、技術経営、特にP2M関連の発想法を学ぶとともに、勤務先が途上国政府と行っている業務をプロジェクトベースで見るのではなく、全体を俯瞰し、きちんとアウトカムを確認すべく、P2Mに準拠した「プログラムの概念」を導入していた時期と重なったことから、その普及が勤務先での私の業務に追加された。P2M学会での発表、組織内で職員向け研修等を通じ、段々とP2M並びにPMAJに近い仕事が増え、PMAJの資格認定関連業務に関与し、今は理事の一人として活動をさせていただいている。
 私は「あるべき姿」という言葉が非常に好きです。日々の日常はいろいろな雑事に追われ、目先の作業に没頭することが多くなるこの世の中で、色々な「あるべき姿」を「妄想 (想像) 」し、「いい加減 (良い加減) 」、「適当 (不適当でなない) 」、「わがまま」にストーリーを考え、実践 (プロジェクトの遂行) していくこと、それを関係者とともに作り上げていくことが、「価値の創造」であると思っています。
 特に、途上国関連の仕事をしていると、経済的な指標 (豊かかどうか) は割と簡単に整理できますが、社会的な指標 (幸せかどうか) は多くの国を巡れば巡るほどわからなくなってくる。そんな世界を相手にそれぞれの国の「あるべき姿」がどこにあるのか、探し求める生活を送っています。
 今年 4 月から、仙台市に勤務地が変わり、「日本の地方 (担当エリアの東北) × 政府開発援助=??」という数式の「あるべき姿」を考えています。
 PMAJ関係者の方たちは IT、エンジニアリング関連の方たちが多いかと思いますが、途上国を見ていると、この情報革命により、「知識」、「情報」等の価値が減じられ、特定の工業製品のうち、ベンツ、ルイビトンのようにグローバルに認知され、流通するものと、ローカルで自己完結するものとして地元のうまいお蕎麦屋さん、上手な美容室等、個人に帰結するブランドの二極化現象が進んでいると感じています。
 そんな中、ここ東北の「あるべき姿」を業務のなかで発信しています。今までの東北は、農業、漁業を主体に都市部に作物を提供する場所と思われるかもしれませんが、この日本食ブーム、もしかしたら、アメリカ、台湾、シンガポール、途上国等々とつながった方が日本の首都圏とつながるよりいいかもしれません。ここ東北はカロリーベースで食糧需給率 100% を超えており、いざとなれば自分で食べられる社会ですから。
 20世紀日本の発展モデルからの脱却、パラダイムシフトを起こす可能性は多分、日本の地方が「いいところ」になることかと思っています。そんな中、PMAJ関係者が広く日本、世界 (途上国を含む) に出ていき、「あるべき姿」を発信することを願っています。

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