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「ヘッドコーチ (HC) というプロジェクトマネージャー」

(株)竹中工務店 国際支店 営業部 エンジニアリンググループ長 坂本 圭司 [プロフィール] :7月号

プロジェクトマネージャーは、プロジェクトの目標を明確にし、それを達成するための戦略・計画を立て、プロジェクトのチームメンバーの役割分担と権限委譲、育成を行うこととなっています。これは野球やサッカー等のチームの監督やコーチに似ているように思います。またプロジェクトマネージャーには、選手として戦うメンバーのチームリーダーのリーダーシップが不可欠なように思います。ここでは中学、高校のクラブ活動からはじまり、ただ好きなだけで50歳を過ぎた今でも時々やっているバスケットボールの話から、少しチーム作りということを考えてみたいと思います。
註)昔は上の図のようなハーフコート。下が現在。大きな半円の外からシュートを入れると3ポイント(通常は2ポイント) 今年、1950年以来65年目となる米国のプロバスケットボールリーグのNBA (National Basketball Association) のファイナルで、ゴールデンステイトウォリアーズがクリーブランドキャバリアーズを 4 勝 2 敗で破り、40年ぶり 4 回目の優勝を果たしました。その身体能力とキャリアから現在NBA最高の選手と評され、愛称キングと呼ばれるクリーブランドキャバリアーズのレブロンジェームズと、NBA最高の 3 ポイントシューターであるゴールデンステイトウォリアーズのステフィンカリーの新旧ヒーロー対決としても注目を集めました。クリーブランドキャバリアーズは、主力選手が相次いて怪我で離脱する中、レブロンの 2 年連続ファイナルMVPに輝いた経験とチームリーダーとしてのプライドと意地が、ファイナル初となる所詮と第 2 戦の 2 戦連続の延長戦となる稀に見る接戦となったシリーズの序盤を 2 勝 1 敗とリードし、シリーズの流れを掴んで見せました。しかしその流れを変えたのはウォリアーズのHCのスティーヴカー思い切った選手起用でした。速攻と速いパス回しから 3 ポイントシュートを中心にどこからでも得点できる早い展開でレギュラーシーズンを最高勝率で終えたウォリアーズは、控え選手であったフォワードのアンドレイグダータをセンターのプレイヤーに変えてスタメン出場させたのです。速攻のチームは、背の高いセンタープレイヤーのゴール下でのリバウンドを起点に、試合の流れを作っていきます。しかしレギュラーシーズンの早い展開に持ち込めずキャバリアーズの流れを変えるために敢えて、スピード優先のスモールラインアップの選手起用を決断したのです。スティーヴカーHCには確信があったと思います。得意とする早い試合展開にすれば、リズムが良くなり得点力で圧倒できると。更に主力選手が相次いて怪我で離脱し選手層が薄くなったキャバリアーズはレブロンがいかに奮闘しても、試合の後半にはばててしまうと、作戦の優位性を説き選手の自信を確信に変えていました。スティーヴカーHCのこの起用がシリーズの流れを変え、4 戦以降 3 連勝でチャンピオンとなりました。第 4 戦で早い展開に流れを変え、その後も攻守で勝利に貢献してみせたアンドレイグダータはMVPに輝きました。これには本当にすごいと思いました。スティーヴカーHCは、あのシカゴブルズのマイケルジョーダンのチームメイトとしてジョーダンが引退するまで活躍した選手でした。彼も優れた 3 ポイントシューターでしたが控え選手で、チームの方針を無視してジョーダンにぶん殴られたことが、それがその後の選手として、また現在のHCとしての自分があるという話は有名です。HCとチームリーダーを含めてチーム内の信頼関係が大切であることはもちろんですが、スポーツの勝負の世界では選手の“負けん気”や“やる気”に相乗効果をもたらすチーム作りが極めて重要と思います。チームや個々の選手に対して客観性を持って、しかしながら、同じ価値観を共有して戦略・戦術・起用・育成を行うことが必要となると思います。これはプロジェクトにおけるプロジェクトチームの場合にも共通するところがあると思います。プロジェクトマネージャーとしての振る舞いを考える、参考とすることができるように思います。
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