関西例会部会
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第124回関西例会 レポート

PMAJ関西 KP 土肥 正利 [プロフィール] : 12月号

開催日時: 2015年11月13日(金) 19:00~20:30
場所: 新ダイビル 4F 会議室
テーマ: 「中小企業経営者を支援するイノベーションの実践」
~中小企業は「人」によって発展し「人」によって潰れる~
講師: 秦 光義 P & P Laboratory 代表
参加者数: 22名 (スタッフ 3 名含む)
講演概要:  
 介護・福祉、中小企業を「夢工学」で支援する経営コンサルタントのご経験から、高齢者数がピークに達する2025年、「10年先を見据えて今何をすべきか」の視点で「足助町の事例」、「高齢者向け会員制ビジネス事業拡大の事例」を踏まえ、イノベーションの機会、ビジネスイノベーションの取組みについてご講演頂いた。以下に講演概要を記載いたします。

「夢工学」の紹介
 冒頭、夢のない人に「夢」を如何に持たせ、夢の実現と成功を歩ませるか、また夢がある人には「夢」を如何に実現させ、成功させるかを説くものが「夢工学」である。イノベーションは「夢」から始まるとのご説明があった。「夢工学」は経営コンサルタント川勝良明氏が開発された方法論である。

1. イノベーションが求められている社会現象
 日本の市場変化 (物が売れなくなり、市場が縮小)、高齢化率の増加 (2014年 25.1% が 2025年には 39.9%、孤独死、社会保障費用の増加)、生産人口の減少 (人手不足、労働生産性向上) の問題への対応には、ソーシャルイノベーション、ビジネスイノベーションが必要である。

2. ソーシャルイノベーションの事例
 産学官連携 「名古屋 COI 足助プロジェクト」の事例。足助町は高齢化率が2014年現在 35% に達している。高齢化と過疎化が進展する多くの中山間地域では、都会で提供されているような地域密着型サービスを受け、「エイジング・イン・プレイス」を選択することは難しい。足助町での事例をベースにイノベーションの取組 (足助モデル) として2025年に向けた地域包括ケアシステムの構築を目指している。
「エイジング・イン・プレイス」を可能にする、持続可能なコミュニティの構築 : 地域のニーズにあった共助型の移動支援により交通格差を解消
地域に暮らす高齢者の QOL の向上 : 見守りサービスやお出かけ促進策と合わせて実施。
本事例では豊田市、足助病院、JA あいち豊田、名古屋大学など産学官連携による、地域包括ケアシステム、介護と連携した地域医療、ICTの利用、モビリティ社会の確立を進めている。
市場分類から見たイノベーション領域には、①非市場 (老人福祉)、②準市場 (社会保障)、③市場 (完全市場)がある。足助プロジェクトは②の要支援 1~2、一定の経済力のある高齢者を対象とした。

 次に健康でかなりの経済力がある高齢者を対象とする③の会員制事業「ふぁみりあ」の事業拡大プロジェクトに関するイノベーションの事例をご説明頂いた。
 当事業は、『 1 人の人生と長く寄り添う心の「拠り所」をつくる。』 をコンセプトとしている。それには、元気な高齢者お 1 人お 1 人へのサポート (例えば、旅行に行きたい場合に単なる引率サポートを期待するのではなく、高齢者自らが旅行を企画、立案したいなど) はオーダメイド型サービスとなる故、如何に生産性の向上を実現するかがポイントとなる。実現に向け20名程度を 1 つのグループ単位として、サービスの仕組みを構築するといったイノベーションの取り組みをご紹介頂いた。

3. イノベーションの機会
 イノベーションは先の事例の少子高齢化や地方創生、地域活性化など以外にも社内の問題にも発想を変えて全員での取り組みに適用できる。イノベーションには 2 つのイノベーションがある。大きなイノベーションと、小さなイノベーションである。前者は破壊的イノベーションつまり、成功したビジネスモデルの有効性を破壊するような革新、技術革新やビジネスモデルの変革や組み合わせなどであり、後者は持続的イノベーションつまり、既存市場により良い製品を導入し、成功した市場地位を築く等である。イノベーションを可能にする 3 つの要因として、①ポジティブ思考、②アナロジー (類似性)、③学習と観察について触れられた後、イノベーションの要件として、比較優位、適合性、分かりやすさ、使用可能性、可視性が重要であることをご説明頂いた。

4. イノベーションの枠組み
 P2Mのプログラムマネジメントの範囲は「実現への構想」 (スキームモデル)、「設計・実施」 (システムモデル)、「運営・改善改革」 (サービスモデル) と言った左脳的思考の領域と捉えられる。本来、イノベーションは「夢 (発想・アイデア) 」から始まる故、成功した姿を思い描き、発想・アイデアを生み出す右脳的思考をも含む、「夢工学」式発想方法がイノベーションの枠組みとして必要である。
 イノベーションの発生過程は「研究」「知識」「設計」「製造」「販売」のような直線的な流れではなく、それぞれが連鎖的に関連し、フィードバックなどが起こりつつ発生する連鎖モデルでありアジャイル的である。

5. ビジネスイノベーションの取組み
 イノベーションを阻害している要因は「他因自果、固定概念」であり、それらを「自因自果、人を大事にする」と言うように変えていくことが成長企業へと繋がる。問題解決の為の環境 : 「人づくり」「組織作り」と、問題解決のためのアプローチとして、「組織と活動の状態分析」、「組織意欲度の分析」、事業盛衰と組織意欲のレベルの推移についてご説明のあと、組織意欲の状態分析マップのご紹介を頂いた。

<講演の様子> <講師を囲んだ懇親会>
<講演の様子> <講師を囲んだ懇親会>

以上

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