関西P2M研究部会
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関西P2M研究部会から“2015”

海藏 三郎 [プロフィール] :12月号

1. 分科会活動について
 関西P2M研究部会の活動は、ここ2~3年ほど低迷していましたが、土肥研究部会長の真摯な尽力により、今年は 5 つのテーマが候補としてあがり、現在 3 つの分科会が活動中です。私は、『ビッグデータとP2M』 分科会と 『地方創生に向けたP2M活用』 分科会に参加しています。分科会リーダーは、2 つとも、(株) SCREENホールディングスの朝田晋次様です。
 本稿では、この 2 つの分科会の発足の背景やP2Mとの関連、今後の方向性について簡単に紹介していきます。

2. 2 つの分科会活動発足の背景
 『ビッグデータとP2M』 分科会 (以下、「ビッグデータ分科会」と略す) 発足の動機は、昨年 9 月号の当オンラインジャーナルに朝田様が 『PMとビッグデータ』 というテーマで投稿した記事です。編集委員として事前に、この記事に触れた私は、即、朝田様に提案しました。 『今後の成長戦略や経済発展には、ビッグデータは欠かせない、重要な基盤ツールの一角をなすものです。P2M改訂3版にもビッグデータの記載がありますし、PM人材としてもビッグデータの知識は必須です。是非、分科会を立ち上げましょう』。詳細な経緯は割愛しますが、朝田様も快諾されて、「ビッグデータ分科会」が発足しました。
 『地方創生に向けたP2M活用』 分科会 (以下、「地方創生分科会」と略す) については、1 年ほど前に朝田様から問題提起されました。「昨今、省庁自治体が実施する各種公的事業の資料には、プログラムマネージャーとかプロジェクトマネージャー、コーディネーター、プロデューサーとの用語が多用されている。呼び方は違うが、P2Mの“プログラムマネジャー”の役割そのものである。PMAJとして、このような公的事業にインパクトを発揮しているのだろうか」というような、投げかけでした。私の応答は「PMAJが動いている情報は寡聞にして知らない。PMAJの影響力はないのではないか」でした。その後、いろいろ議論を重ね、「地方創生に必要な人材はP2Mが求めている人材」にフィットすることをPMAJ本部に提言する行動を起そうという結論になりました。そのためには、関西を中心とした省庁自治体等の動き・トレンドを分析し、埋もれた関西のP2M人材の発掘を活かせる公募支援事業への参加を目標に「地方創生分科会」を発足させることにしました。

3. 2 つの分科会の意義とP2Mへのインパクト
 昨今、“ビッグデータ”という用語は、一時に比べるとマスコミ等への登場回数は、減ってきているのではと感じています。この現象は、ビッグデータという用語が陳腐化したわけではなく、政治・経済・社会動向の分析手法ツールとして、必然的なツール手法として定着してきた証だと思っています。モノのインターネットと呼ばれる、IoT (Internet of Things) やドイツの進めている第 4 次産業革命 (インダストリー4.0) 等々の動きも広義には“ビッグデータ”のトレンドの延長であると筆者は思っています。当然、PMにもビッグデータ手法を活用する時代が近々、到来するでしょう。
 一方、“地方創生”というキーワードは、昨今、あらゆる誌面上に登場し“流行語”になっています。地方創生を実現するベースとなる事業のキーワードは「観光」「健康・介護」「医療・医薬品」「環境エネルギー」「教育」「農林業」「ものづくり・サービス」「防災」等々です。そして達成目標は「雇用機会の創生」と「人材の流動化」「安心・安全の街づくり」等のキーワードが並びます。
 “ビッグデータ”の活用は、「地方創生プロジェクト」を円滑に遂行し成功させるための重要な手法の一つです。故に 2 つの分科会は相互関連するテーマであると筆者は思っています。
 また、『産官学金労言』 (産業、官公庁、学校、金融機関、労働団体、マスコミ) 等のキーワードは地方創生実現のためには、多くのステークホルダーが関わっていることを意味します。
 このような観点から鑑みますと、地方創生を実現すためには、P2Mで示唆する“実践力”のある人材、「プログラムマネジャー」「プロジェクトマネジャー」が必要なのです。

4. 関西研究部会の今後の方向
 PMAJ関西の主たる活動は、定期的に開催される「関西例会」セミナーとP2M研究部会であります。前者が主としてPMAJ会員を対象にしているのに対して、後者の研究部会活動は、ワークショップセミナー (通称、WSセミナー) や、ご紹介したような分科会活動が中心で、非会員にも広く門戸を開放しています。この活動に初参加され、興味を持たれた方の中には、PMAJ会員として登録されていますので、PMAJ本体にも貢献している活動でもあります。
 さて、現在のPMAJは東京に拠点がありますので、東京を中心とした活動になるのは必然的です。事実、毎年恒例のセミナーやシンポジウム等は、ローカル地域と比べて抜群の集客力があります。P2Mに関する造詣の深い識者も多く、定期刊行のジャーナル誌にも、多くの高度な論文が掲載されています。P2Mに関連する多くの優秀な人材を囲い、しかも上述したような「プログラムマネジャー」人材の要請到来という機会に恵まれながら、地方から見ると、PMAJ本体の影響力の乏しさに寂しさを感ずるのは私だけでしょうか。
 東京一極ではなく地方も、大企業ではなく中小企業を中心に活性化、自立化を図ることは、地方創生だけでなく、PMAJのローカル拠点に共通する課題であると考えます。
 今回のオンラインジャーナルはキーワードだけで具体性が欠けますので、説明不足の感じは否めないと思いますが、地方創生分科会の最終報告書に、もう少し本論を追加補正できる提言ができればと思います。

以上

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