PMプロの知恵コーナー
先号   次号

「エンタテイメント論」(93)

川勝 良昭 Yoshiaki Kawakatsu [プロフィール] :12月号

エンタテイメント論


第2部 エンタテイメント論の本質

6 創造
● 1 + 1 = 2 の世界から 1 + 1 = ∞ の世界に変身
 先月号で固定概念や先入観を打破する最強の方法は「自己変身」であると述べた。

出典:ウルトラマン  楽天・ウルトラマン・ショップ 出典:ウルトラマン
楽天・ウルトラマン・ショップ

 スーパーマンの更に上をいく日本産スーパーマンは、「ウルトラマン」である。その「変身」は、危機に直面して出現する。正義の味方の我らのヒーロは、変身によってあらゆる悪を打ちのめす。子供達の憧れの的である。本稿の読者で子供の頃、ウルトラマンの活躍に喝采した人物は大勢いたと思う。現実の世界でも「変身」によって難しい問題を解決する事が出来るのである。子供の頃の「自由発想」を思い出して欲しい。自己変身こそ「夢工学式発想法」が主張する本質の 1 つである。

 ウルトラマンのTV番組を見る子供達や憧れの映画スターの恋愛映画や冒険映画を見る大人達は、共にエンタテイメント的疑似変身を体験したいのである。自分がウルトラマンになり、映画の主人公になる事は「快感」である。この快感は明日への活力になる。

 いつもいつも「1+1=2」の仕事の世界で生きている人は、仕事で大した成果を上げていない。周囲を見渡せば、直ぐに気付くであろう。この事実は研究者にも言える。「1+1=∞」の研究仮説を立てないで、いつもいつも「1+1=2」の研究をしている人物は、研究だけでなく、研究人生を棒に振る。信じられないだろうが、多くの研究者が異口同音に認めている事実である。まして経営や事業を成功させるためには、「1+1=2」の仕事の仕方では絶対にダメである。

 「1+1=∞」の「 F 機能」を追及する「映画の世界」で「1+1=2」の「 R 機能」を同時同質に追及したリチャード・エドランドと黒澤 明の映画成功のための基本的考え方を思い出して欲しい。エンタテイメント的飛躍が求められている世界ですら現実的且つ冷徹な理性的計算を同時同質に行っていたのである。

 言い換えれば、「1+1=2」の「 R 機能」を追及する「事業の世界」は、理屈通りに動かない消費者が実存する。「1+1=∞」の「 F 機能」を同時同質に追及することで、固定概念や先入観から脱却できる。そして従来存在しなかった事業で人々にアッピールする事業を産み出すことが出来るのである。

 この事業成功のための R 機能と F 機能の考え方を実践したビジネス・パーソンが成功の甘い蜜を手に入れる。本稿の「エンタテイメントの本質」の章で、夢工学式発想法、即ち「創造」を、これほど長期に重点的に取り扱った真意はここにある。

 繰り返して何度も主張する。エンタテイメントは日本では「歌舞音曲の類」と軽視、蔑視されている。しかしとんでもない間違いである。それは単なる「遊びの領域」に留まらない。より広い応用領域を持つ。それだけではない。人生を楽しくする効用まであるのだ。

●転職による変身
 この「変身」には、化粧、服装などを変えて気分一新、周囲の注目を浴びる所謂「物理的変身」とモノの考え方を変える所謂「精神的変身」まで幅広く存在する。更に時間、費用、労力などを掛けるものとして学校教育、社員教育、軍隊教育などによる所謂「人材育成変身」もある。

出典:職業 HP:JOBTAIN INC
出典 : 職業 HP : JOBTAIN INC

 優れた学生、優れた社員、優れた兵士を産み出す所謂「人材育成的変身」として、厳しい受験戦争での勝利の方程式を叩き込む「予備校の教育」、ダメ社員の精神構造を叩き直す「地獄の社員訓練」、悟りの精神を獲得させる禅の修行に象徴される「宗教的訓練」、世界一タフな兵士を鍛える「米国軍隊グリーンベレー特訓」などがある。

 この変身訓練には、他者が自分に働きかける所謂「他者訓練」と自分が自分に働きかける所謂「自己訓練」がある。前者に該当するのは、上記の各種の訓練であろう。また後者に該当するのは、自己鍛錬、自己研鑽、自己努力などであろう。最も高い変身訓練の効果を発揮するためには他者訓練と自己訓練を同時・同質に実施することである。当然の事ではあるが。

 さて「各種の変身」の中で最も厳しい困難を伴う変身は「転職」である。

 他者訓練や自己訓練が幾ら厳しいと言っても、所詮「訓練」である。「転職」は、訓練ではない。「実践」だから厳しいのである。受験勉強を含め、小、中、高校の転校や大学入学後の専攻学部変更、他大学への変更などは勿論、困難を伴う。しかし社会人になってからの「転職」と比べれば、困難などと言えるレベルのものではない。

 「転職」は、勤務内容、勤務体制、勤務環境、社風や習慣など、すべて新しい状況で仕事をしていかなければならない。特に従来の仕事と異なる分野への転職は、最大の困難を伴う。降りかかる慣れない仕事への重圧、責任の種類の違い、その重さの違い、初めて接する上司、同僚、部下との人間関係の構築など、転職経験者でないと到底理解できない困難さがある。いずれにしても「転職」という「変身」をすれば、固定概念や先入観など瞬時にどこかに飛散してしまう。

出典:職業 HP:JOBTAIN INC
出典 : 職業 HP : JOBTAIN INC

●筆者の転職
 筆者は、半世紀以上前に社会人になってから現在まで「産・官・学」の全く異なる分野での仕事を経験してきた。今年、75歳である。棺桶に半分足を入れたと思っている。

 筆者の略歴を参照して貰えば分かる。「産の分野」では全く正反対の異業種の会社に転職した。「官の分野」では歴史、背景、地域も全く異なる 2 つの自治体で正規の官僚として奉職した。「学の分野」では伝統、地域、学生も全く異なる多くの大学で教授職などを官僚職と兼務で勤めた。現在は某企業の専務取締役の仕事と兼務で経営コンサルタント、某特別市の諮問官、外国の某大学教授職などをしている。

 「産・官・学」の 3 分野に属さない「音楽」の分野では、現在、専業でなく、兼業プロとして活動している。中でも都内の某ジャズ・ライブハウスで、毎月「箱出演」で20数年間出演し、お店から出演料を頂いている。更に以前は少し稼いだが、最近は稼ぎにならない「作曲活動」を現在も継続している。

 多くの人から「あなたは何故そんないろいろな事が出来たのか? また今も何故出来るのか?」と度々尋ねられる。その度に答えに窮する。正直、キチンと自己分析できていないからだ。

 しかし一応答えられる事は、過去に病院で検査入院した以外、とにかく健康であった事、今も元気である事、人から頼まれた時、たとえ転職せねばならない場合でも、思い切って引き受けた事、自分がしたい又は出来る事は、相手に具体的に伝えたが、相手からその仕事を頼まれるまでは一切要求せず、いつまでも待った事などである。

 しかし筆者の転職で重要な役割を果たした人物が居た。その人物とは世に言う「ヘッドハンター (社長職や重役職のポストに合致する人物を日本及び世界から見付け出す人) 」である。某外資系ヘッドハンター会社の某ハンターのスカウトで筆者は、新日本製鐵 (株) から (株) セガに転職した。その時の同ハンターから教わった「Live Fish & Dead Fishの掟」がその転職とその後の転職を成功させた。


 この「掟」は、転職の成功の方程式の 1 つである。紙面の制約から来月号でその内容を紹介する。この「掟」を実践すると本人の転職を成功させるだけでなく、学生を就職させる事に躍起になっている大学の就職率を劇的に向上させる効果がある。

 そのため筆者は、多くの大学から「掟の講義」を依頼された。その他に就職コンサルタント会社でも幾つかの講演を行った。本稿の読者で転職を考えている人は、是非、この掟の内容を理解し、順守することを勧める。

つづく

ページトップに戻る