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「エンタテイメント論」(92)

川勝 良昭 Yoshiaki Kawakatsu [プロフィール] :11月号

エンタテイメント論


第2部 エンタテイメント論の本質

6 創造
●再度、強調したい「F 機能と R 機能」の同時・同質の発揮
 先月号で、上記の事を特撮映画監督「リチャード・エドランド」と映画監督「黒澤 明」のそれぞれが作った映画を実例として説明した。

 映画の世界では「F 機能 (感性思考)」が最も重要で、それを中心に作られるべきと思われがちである。しかしこの両監督は、「R 機能 (理性思考)」も同時、同質に徹底して追求した。賢明なる読者は、筆者がこの説明の裏で何を主張したかったか? 既に気付いていると思う。しかし敢えて説明する。

理性思考と感性思考の合体=優れた発想

         理性思考と感性思考の合体

 科学や工学の世界では映画の世界とは逆に「R 機能 (理性思考)」が徹底して発揮されていると思われがちである。しかし科学や工学でも「F 機能 (感性思考)」を求めるべきと主張する科学者や工学者が極めて多い。

 以上の様に F 機能と R 機能を同時・同質に発揮する事が固定概念や先入観を打破するのに極めて役立つ。紙面の関係で説明に余裕がないが、科学的価値や工学的価値を発見する時、感性思考が大きく関わった実例が数多くある事だけは、ここで強調したい。

 新しい商品、製品、技術、事業などを創り出すため日夜必死に努力しているが、眼前に立ちふさがる問題を解決できず、苦闘する経営者、管理者、社員に言いたい。それを打破するため理性思考を一度放棄し、感性思考を100%機能させ、想像、空想、夢の世界を描くことを勧める。「そんな無駄で意味の無いことをするな!」という「石頭」を是非叩き潰すことを勧める。叩き潰した瞬間、新しい地平線が見えてくる。嘘だと思って試してみてはどうか。一銭も、一円も掛からないのだから。

●「遊び」は、固定概念や先入観の排除に重要
 アインシュタインは、研究に疲れると遊びの「数学ゲーム」に興じたと言われている。また将棋の羽生名人は、将棋の戦略思考に行き詰まった時、幾つもの「詰め将棋」をやって楽しんだと本人が某雑誌のインタビューで語った。

 両人とも、疲れたり、行き詰まった時、「気分転換」で、その様な事をしたと誰しも思いがちだ。しかし筆者は、単なる気分転換ではなく、結構本気で「数学ゲーム」や「詰め将棋」をしたと考えている。何故なら単なる気分転換ぐらいでは、脳の疲れやデッドロックを超えられないと、筆者自身の経験からも言えそうだからだ。

出典:様々な遊び Busikids IE Inc
出典 : 様々な遊び
Busikids IE Inc

 両人とも、子供の頃を思い出す「数学ゲーム」や「詰め将棋」は、感性思考を刺激し、その結果、理性思考を研ぎ澄ませると考える。天才の科学者、天才的な棋士の頭の中は到底想像すらできないが、「理性思考+感性思考」の組み合わせる事で新たな発見や発明に繋げる事を始終やっていたのではないかと思う。

●筆者の「趣味 (本当は道楽)」
 筆者の遊びは、いろいろある。これが意外に様々な効用がある。特に発想に極めて役立っている。音楽は抽象度が高いので発想に有効なのかもしれない。

 筆者は、今から20数年前から現在まで、ジャズ・トリオを組み、ピアノを分担し、ジャズを演奏している。「趣味」と言うより「道楽」だ。結構楽しんでいる。しかも某ジャズ・ライブハウスに毎月出演している。所謂「箱出演」という「幸運」に恵まれている。箱出演とは、業界用語で、出演の都度、契約を締結する必要はなく、定めた日で定めた時間に毎回出演が可能で、お店が認める限り、いつまでも出演できる契約形態のことである。これが可能な事がプロの証にもなる)


 「趣味」は、一般的に出費が多く、楽しむのは本人が中心だ。しかし筆者の場合は、かなり異なる。筆者が出演する時、①演奏の合間にお客様から歌手やバンドマンの我々に「お酒を如何ですか?」との有難いお申し出を受ける。②演奏の度にお客様から笑顔と拍手と励ましの声が出る。③演奏後、出演料まで頂ける。④ジャズ演奏の合間に「ふっ!」とアイデアが浮かぶ。⑤そのアイデアを某お客様に話したら、なんと、それを実現してくれる会社まで紹介してくれる。こうなると「一石五鳥」だ。

 更に効用があった。筆者は、「夢工学」を構築後、数多くの「夢」を破壊する人物から「夢」を如何に守ればよいか?という難問に挑戦し、長い間、苦闘した。

 ジャズ演奏はアドリブが特徴であるが、演奏者間でインタープレーする事も特徴である。このインタープレーがヒントになって、この難問を一挙に解決し、「(抗) 悪夢工学」を構築した。ヒント~難問~解決~構築に至る思考過程の説明は、紙面の関係で別途の機会にしたい。とにかく筆者の道楽のジャズ演奏は「一石六鳥」だ。

●「遊び」の効用
 遊びは、面白く且つ疑似体験も出来るので誰しも熱中する。失敗が可能なため何度も試行錯誤できる。その効用は大きい。行き詰まった時に、「遊び」は、視野を広げ、他の世界に関心を向け、難問を解決する思いも依らないアイデアを導き出す。

 固定した、先入した概念を打ち破る感性は「遊び」から生まれる。この事は学問的には証明されていない。信じて貰う以外に方法は無い。しかし理屈はどうでもよいではないか。楽しく遊ぼう!


●固定概念と先入観の究極の打破方法は、己の「変身」
 自分自身が変わることは最も困難な事である。しかしこれが出来れば、固定概念や先入観など瞬時にどこかに飛散してしまう。

 変身は、様々な方法がある。またそのレベルも異なる。社員教育、軍隊教育などの「教育」は、一種の変身訓練でもある。その中で特に激しい変身のための訓練は、「地獄の訓練」、「グリーンベレーの特訓」などである。昔からの変身訓練には、「禅の修業」など宗教的訓練がその実例である。また世界中に様々な「変身訓練法」が実存し、今も使われている。

 以上の様な訓練の他に、自発的に変身せねばならない「変身」がある。それは「転職」である。全く異なる勤務環境で、全く異なる社風や習慣などの中で仕事をしていかなければならない。この種の変身も「固定概念」、「先入観」の打破に役立つ。転職については、次号で詳しく説明したい。

つづく

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