PMシンポ便りコーナー
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私にとっての「明るい未来を創るプロジェクトマネジメント」とは

田邉 克文: 10月号

今年もPMシンポジウム2015が開催されました。「明るい未来を創るプロジェクトマネジメント」のメインテーマの下、特色のある講師の方々へ各ボランティアから直接お声掛けさせて頂き、調整に調整を重ねた結果、このような大規模な催しをボランティア中心で開催することができました。今年のメインテーマも例年同様に、おそらく多くの方々にすんなり違和感なく受け入れられたのではないでしょうか?
今回初めて企画会議に参加して、テーマを決める過程を間近で見ることが出来ました。この最終案に決まるまでメンバー全員であれこれ案を出し、色々な組み合わせを行いながら案を絞っていきました。途中過去テーマとの比較も怠らず、今まででベストでかつ時代を反映したものを選ぶことを目指して、メンバー一丸となって議論が進められました。
「プロジェクトはやっぱり人なので、人の要素は外せない」など、各テーマ案の背景を熱く語る姿が特に印象に残っています。
最終的には 1 つに決めなければいけないため今回のテーマに決まっておりますが、メンバー一人ひとりの想いとしては各自が出した案に込められている想いを代表したテーマが今回のテーマであることをご理解ください。

今回のシンポジウムで講演をいくつか聞く機会があり、聞いた感想は、年とともにより複雑化し対応が難しくなっているプロジェクトを様々な工夫をして乗り越えられているのだとあらためて感じました。テーマの冒頭に、「明るい未来」とありますが、技術の進歩とグローバル化が急速に進むこの世の中で、「明るい未来」がどう築かれるべきだと思われますか?シンポでは講師の方々のご講演の一つ一つがそのヒントを与えてくれていたと思います。私個人も家庭を持ち子どもの将来、引いては日本の将来を案じています。私たちの世代がこれからの子どもたちにどう明るい未来を創り、引き継いでいけるかが重要な課題と認識しています。

それでは、「明るい未来を創るプロジェクトマネジメント」について、私の意見を書きます。プロジェクトマネジメントは、マネジメントの対象である「プロジェクト (成果物) 」と、プロジェクトを成功させるためのマネジメントである「プロジェクトマネジメント」の 2 つの側面があり、それらを 1 つずつ取り上げます。
まず、最初にプロジェクトです。
私は未来のプロジェクトを考える際に、過去の人類の功績から学ぶべきだと考えます。例えば建造物を 1 つのプロジェクト成果物だと考えると、古代エジプトのピラミッドをはじめとした数々の偉大な成果物を後世に残しています。それは、持続可能な明日の未来を意識したプロジェクトの成功例だと考えてもよいのではないでしょうか。
ある人からこのような質問をされたことがあります。「技術の進歩で世の中は便利になったが、そのおかげで私たちは仕事や生活が楽になっていますか?豊かになっていますか?」 私は、その時、はっと気づきました。技術の進歩、文明の発展は人類の明るい未来に不可欠で、かつ、そのことが後世へ豊かな未来を引き継ぐ手段だと信じていたことに大きな疑問を感じたからです。一例を挙げると今では当たり前のメールとインターネットです。確かに世界中どこでも時間の概念を意識せず、メッセージや情報を好きな時に好きなだけ手に入れることができるようになりました。しかし、その事が時間的な余裕や心身の豊かさに貢献しているかというと必ずしもそうではありません。技術の進歩が明るい未来をもたらすためには、持続可能な明日の未来を意識したプロジェクトが必須要件となるのではないでしょうか。
続いて、プロジェクトマネジメントです。
私がプロジェクトという言葉を知って関わってきたこの20数年の間でプロジェクトおよびプロジェクトマネジメントという言葉が日本社会にまるで潮が満ちるように浸透してきました。プロジェクトマネジメントという言葉の普及とほぼ同時にPMBOK® の知識体系が広がっていき、P2Mを代表とするPMBOK® をさらに発展させたといえる知識体系が生まれてきました。プロジェクトマネージャーがどのようなプロジェクトマネジメントを行うかによって、プロジェクトの性格が大きく変わります。明るい未来を創るプロジェクトマネジンメントは、どうあるべきでしょうか?
現代の複雑なプロジェクトに対して、複雑さに追随するような、さらに高度なコントロールを伴うプロジェクトマネジメントが求められているのでしょうか。むしろ、プロジェクトとその成果について、5年後、10年後更に先を見据えて、本当に価値のあるものかを見極めて、成功へ導くことが必要なのではないでしょうか。プロジェクトマネージャーは、どのような状況でも、確固たる意志をもって、その成果物およびその価値にこだわりを持ち、周囲のステークホルダーを巻き込んで、本来あるべき姿、持続可能な明日の未来へ引き継げる成果物を作り上げ、プロジェクトを成功させなければなりません。それが私の希望であり、少なくとも明るい未来を創るプロジェクトに必要なプロジェクトマネジメントであると考えます。

最後に話しは変わりますがシンポジウムのボランティアを続けている私のモチベーションについてお話します。
シンポのボランティアへ参加する理由には、大きく 2 つあります。
1 つは、シンポで出会う講師の方々の講演内容は知的好奇心を刺激するものばかりで、直接自分の仕事の業務と関係ないものであっても、考え方や、原理原則に立ち返った部分では、学ぶものが多分にあります。その中で特に興味を持ったものを掘り下げて、仕事へのヒントを得ています。
2 つ目は、多くのボランティアの方々との出会いにあります。七夕ではありませんが、年一回シンポのタイミングでしか会えない方から近況を聞かせて頂くことがとても楽しみです。また、学生ボランティアの方々からは色々な刺激を受け、彼らの若い未知数のエネルギーを間近で感じることは何事にもかえられません。今年は学生でも、その数年後には世界のプラントの建設現場や、宇宙開発の最前線でプロジェクトを肌で実践しているのです。そういう彼らが、また、シンポのボランティアとして参加して戻って来てくれるのはものすごくうれしいです。

この文章を読んで頂いた皆さんの中で、ご興味をお持ちの方は是非シンポのボランティアとして参加してみてください。参加することによって、ご自分のお仕事では得られない経験と、人との出会いが得られることは間違いありません。
ご参加いただける方々と来年のシンポのボランティアでお会いすることを楽しみにしています。

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