例会部会
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『第201回例会』 報告

PMAJ 例会部会 須貝 均: 10月号

【データ】
開催日: 2015年8月28日(金) 19:00~20:30
テーマ: PMが影響力を発揮するために
 ~ 裏側にいるキーマンの理解 ~
講師: 中谷 英雄 氏/(株) ピーエム・アラインメント 取締役ビジネスコンサルティング部長

【第201回例会 報告】
~はじめに~
 本日は、権限を使わず「人に影響力を与える」ことの重要性について、
 PMとして、現場にいるキーマンを如何に理解し、味方に付ける原則があるのか?
 をテーマに中谷英雄氏より講演頂きました。
~講演概要~
1.何故ステークホルダーか
 組織環境の変化により、市場は破壊的イノベーションによって姿が変貌しつつあり
リーダに求められる行動の変化が求められている。
 20世紀 : ビジネス交渉の現場でゲーム理論が運用されていた
 21世紀 : 自分と相手の間に共通点を見つけ、共感によって人を動かす必要がある

 ステークホルダーマネジメントの重要性は以下のとおりである。
これからは全ての企業が、多くのことをより少ない資源でやり遂げなければいけない
企業は、より柔軟に、より短い期間で製品やサービスを開発し、市場の期待に応える必要がある
権限を使わず多くの人を動かす、つまり影響力を発揮するステークホルダーマネジメント方法が必要となる
⇒権限が及ばない組織内外の人々へ影響力を発揮する方法 を理解する事が重要である。

2.影響力を与える科学的裏付け
 PMが影響力を発揮する科学的な裏付けとして「影響力の武器:ロバート・B・チャルディーニ著」が参考となる。
著書の中では、人間の意思決定に影響力を与える要素を、以下のたった 6 つに分類する事が出来ると述べている。
返報性 : あらゆる社会で通用するルール
施しをうけた相手にお返しする義務を感じる心理
サービスの中核であり本質とも言える原理
希少性 : 手に入りにくいほど、欲しくなる心理
権威 : 正当な権威者の指示や命令に人々が従う傾向にあるという心理
一貫性 : 人々の心理で公約したことに対し、一貫性を保とうとする傾向のこと
同調性 : 特定の状況下で、いかに振る舞うかを決定する際に、同じ状況にいる他の人の行動を参考にするという心理
好意 : 好きな人の要求に応じようとする心理

次に影響力の原則は、全ての人が有効に活用しているわけではなく、影響力を行使する人達は、以下の 3 種類に分類することが出来る。
不器用タイプ
原理を利用する絶好のチャンスに恵まれながら取りこぼす
影響力の原理を理解していない / 正しい使い方を知らない
密輸入タイプ
影響力の原理がもともと存在していないところに、これを持ち込もうとする人達
原理と相手の関心を悪用するアプローチであり、短期的に成功しても信頼関係を失う
刑事タイプ : 6 つの原理という武器を携えてあらゆる状況に乗り込んでいく

上記で説明した影響力は、「国民性」の影響を大きく受ける傾向にあり、以下の様に「重きをおく原理が大きく異なる」 事も理解すべきである。
返報性に重きを置く : 最近、この相手は自分に何をしてくれたか?
アメリカ、カナダ、イギリス 等
権威に重きを置く : この相手は自分の部署の誰とつながりがあるか?
香港、シンガポール、日本 等
好意に重きを置く : この相手は、自分の友人とつながりがあるか?
イタリア、スペイン、ギリシャ、中南米 等
一貫性に重きを置く : この組織のルールや規則に従えば、イエスと言うべきか?
ドイツ、北欧諸国 等

3.影響力の法則
 PMが影響力を効果的に発揮するには「影響力の法則」 (デビット・L・ブラッドフォード/ロバート・K・グリーンリーフ著) が参考となる。
著書の中では「影響力」を発揮するために、交渉相手が認識する価値カレンシーを理解し、返報性 (レセプロシティ) に基づく人間関係の構築が重要であると述べている。
 交渉相手が認識する価値のあるものを「カレンシー (通貨) 」と呼び、影響力を発揮出来る人は、相手が何に価値を感じるかを知っており、効果的に提供出来るのである。
カレンシー (通貨) の種類としては、以下の種類があり、多様な選択肢を使い分ける事が効果的である。
気持ちの高揚や意欲を喚起するカレンシー
仕事そのものに役立つカレンシー
立場に関するカレンシー
人間関係に関するカレンシー
個人的なカレンシー

相手の価値を理解できたら、レシプロシティ (返報性) に基づく人間関係の構築を目指し、相手の立場から見た、これまでやりとりされたカレンシーのバランスをふまえ働きかけを行う事が有効といえます。

最後に変革プロジェクトをリードするポイントとして以下 7 つにまとめる事が出来ます。
ビジョンの重要性
建設的な緊張感を持つ
中核となる人物を見つける
なじみの少ない重要な関係者に影響を及ぼすとき
あなたは何を提供できるのか
相手との関係を見極め、信頼関係を深める
価値の交換戦略を練ろう

~まとめ~
 今回の第201回例会は、7月実施の第200回記念講演例会と来週開催予定のPMシンポジウムという 2 大イベントの中間にもかかわらず多数の参加者に聴講頂きました。
これは、「ステークホルダーとの関係に悩んでいる」プロジェクトマネジャーがいかに多くプロマネの主要テーマであることを改めて考えさせられました。
 今回の講演ではワークショップ形式を一部取り入れ各事例の教訓を自分達の職場でどの様に活かすのか といった具体的な説明もあり、日本人プロマネとしてコミュニケーション能力を更に向上させるための心構えとなる興味深い言葉がいくつも見つかりました。
中谷様 本日は興味深いご講演いただき大変ありがとうございました。

~参考書籍~
 今回の講演の中で紹介した書籍は以下の通りです。
影響力の武器
なぜ、人はうごかされるのか  (ロバート・B・チャルディーニ著)
影響力の法則
現代組織を生き抜くバイブル  (デビット・L・ブラッドフォード/ロバート・K・グリーンリーフ著)
続・影響力の法則
ステークホルダーを動かす法則  (デビット・L・ブラッドフォード/ロバート・K・グリーンリーフ著)

~最後に~
 我々と共に部会運営メンバーとなる KP (キーパーソン) を募集しています。参加ご希望の方は、日本プロジェクトマネジメント協会までご連絡下さい。

以上

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