今月のひとこと
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PMに関係ない

オンライン編集長 深谷 靖純 [プロフィール] :10月号

 「天高く馬肥ゆる秋」。先月のこの欄で暑い暑いとこぼしていたら、9月は肌寒さを伴った雨期でした。TVアナウンサーが「記録的な」という言葉を繰り返す豪雨が日本各地を襲い、大きな被害をもたらしました。日本は世界の中でも自然災害の発生確率が高い危険な国であり、他の国以上に災害対策が進んでいるとのことですが、さらなるレベルアップが必要になってきているのかもしれません。

 9月の3日、4日とPMAJ最大のイベントであるPMシンポジウムが開催されました。2日間で60組の講演・セミナー・ワークショップが開催され、延 2200人強のPM関係者が集いました。講演の概要は、12月初頃発行予定のPMAJジャーナルで特集を組んで紹介する予定です。
 受講された方は、様々な分野の講演やセミナー・ワークショップの中から何らかの「気付き」を得られたのではないかと思います。当日、記入いただいたアンケートを見ても、「異分野の講演に刺激を受けた」「今後の仕事で参考になる」といった感想が目立ちます。そういった感激のコメント群の中に、プレゼンの進め方や資料に関する不満 (注文) が混じっています。来年のPMシンポジウムに向けて、10月の末か11月初めには実行委員会が立ち上がりますので、こうした注文への対応を検討していくことになります。
 そんな中に、どう対応したものか困惑する不満コメントが 2つ (2種類)あります。
 一つは「自社の宣伝」が入っており耳障りだというコメントです。PMツールの有効性を紹介するような講演では、そのような感想が予測されることから、製品宣伝を控えるようにお願いしています。注文コメントが無くなるところまではいきませんが、極端な「宣伝」は見られなくなっています。困惑するのは、事業戦略や経営戦略、企業ビジョン等との関連でプロジェクト目標を解説するような講演に対するコメントです。決して企業宣伝ではなく、講演では、プロジェクトの目標設定や達成指標が戦略目標に合っていることを説明するために企業姿勢等を紹介しているのです。企業ビジョン等の紹介を掲載したホームページは多数見られますが、それをプロジェクトにどう展開しているかの説明を聞く機会は多くはありません。せっかくの機会に耳を塞いで臨むのは、いかにももったいないですね。
 もう一つは「PMとは関係ない」講演だったというコメントです。事業戦略だとかプロジェクト目標設定に関する講演に対する感想欄にこのコメントが書かれていることが多いのです。「プロジェクトには始めと終わりがある」との定義からすると、プロジェクトの前段階でありプロジェクトの外側です。プロジェクトの外側 (プロジェクトが始まる前、終わった後) はPMに関係ない世界だということなのでしょうか。事業戦略はPMに無縁だということでしょうか。シンポジウム参加者の7割はPMP® の資格保持者であり、5割の方がプロジェクトマネジャーまたは管理職です。どなたが書いた感想かは特定できませんが、マネジメントに携わっている方の感想だとすれば心配です。感想を書かれた方が所属する会社では、何のためのプロジェクトかを意識せずに、ただ指示された目標を達成するためだけにPMを行っているのでしょうか。受託開発型のプロジェクトであっても、委託者が何を目的としてプロジェクトを開始したかを理解せずにPMを行っているとは考え難いのです。

 PMAJが注力しているP2M (Program & Project Management for Enterprise Innovation) においては、事業戦略とプログラム・プロジェクトマネジメントとの関係を重要視しています。今後、オンラインジャーナル上に戦略に関する記事の掲載を企画したいと思います。

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