理事長コーナー
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Web3.0とP2M戦略的プログラムマネジメント

PMAJ理事長 光藤 昭男 [プロフィール] :9月号

 「Web」抜きには生活できない日常になって来ている。正確には、World Wide Web と云い、wwwと略す。パソコンやスマホを通して、自分の欲しい情報を寸時に見つけることが出来る。百科事典、辞書、地図などのコンテンツ情報も、新聞情報やテレビの放映動画もほとんど入手することが出来る。検索ソフトを利用すれば、その情報がどこからどのように獲得されているかを利用者は意識する必要はない。「雲をつかむ」とは日本語で、「物事が漠然としていて、とらえどころがないさま」 (“コトバンク”より) を云うが、情報はまさに雲の中にあり、利用者は「とらえどころがない」状態でも利用する事が出来る。検索ソフトなど多くのアプリ・ソフトも雲のWebから提供される。「雲」はCloudであり、Webは「蜘蛛の巣」だ。雲の中にめぐらされた蜘蛛の巣の恩恵にあずかっている。現在では、仕事でも趣味でも必需の道具になっている。

 CloudもWebも検索ソフトも、Internet 上で利用できるが、その Internet が一般に利用出来るようになってから、まだ30年と経っていない。始まってまもなくはダイアルアップ接続で不便だったが、その後パソコンのOSがネットワーク対応となり、ブロードバンドが提供され通信料金も急激に低減し、無線利用も進み、携帯端末による接続も可能になった。すさまじい技術革新が起きている。これらを実現させた企業群の中でも Apple、Google、Microsoftは、現在の企業価値では世界の1位から3位までを占めるに至り、伝統的な巨大企業のExxon-Mobile、GM、GEよりもランクは高い (@ 2014時点)。その力の源泉は、いわずもがなそこで働くヒトの「頭脳」だ。IT技術も欠かせないが、根本は、先見性のある構想力であり、果敢に挑戦する情熱であり、成功させる行動力である。

 一方、今起きているシリコンバレーを中心としたイノベーションの爆発は、異質な人材から生まれるユニークな商品を、一時代前のスピードとは比較にならない早さで市場に出す事に起因している。AppleもGoogleも多様な人材を集め「世の中に存在しないモノ」を、スピード感をもって創る。イノベーションは、個人の発想から生まれるため、協調性よりも自分の考えを主張する自主独立性の高い個人が尊重される。異質で多様な人材をまとめるために、リーダーシップのあるリーダーの存在も重要だ。高成長する米国IT企業に共通する行動様式だ。

 識者によれば、Webは進化途上であり、Web1.0、Web2.0を経て現在、Web3.0の入り口だそうだ。Web1.0は、Websiteの閲覧や電子メールの受発信の世界で、利用者の端末の閲覧アプリやメールアプリからWebを利用する。Web1.0時代の電子メールは、自分も相手もパソコン端末のメールソフトを利用しての交信で、Webは通過するだけの道具だ。一方行コミュニケーションの世界だ。

 Web2.0は、Web自体がプラットフォームとなって情報を中継し、利用者参加型の双方向コミュニケーションを実現するウェブ形態をとる世界だ。AmazonなどのショッピングサイトやYouTubeの動画掲載サイトから、FacebookなどのSNS (Social Networking Service) に代表されるコミュニティ形成型が挙げられている。利用者がWebからアプリをダウンロードするか、Web内の特定のアドレスにリンクしてアプリを利用する。Web2.0の特徴は、Webとの双方向コミュニケーションにある。

 Web3.0はまだ定義が定まっていないが、Cloud Computing の発展系だと云われている。利用者は、パソコンやスマホの端末とブラウザソフト (例えば、MS Internet ExplorerやGoogle Chrome) さえ用意すれば、Cloud内に存在するアプリもデータ管理もコミュニケーションツール、すべて利活用可能となった。更に、人工知能AIを利用して利用者の思考力や労力の負担を軽減することも可能となりつつある。いずれも双方向コミュニケーションの発展系だ。

 Web1.0では、ネットワークに「機能」が提供された。基本は、1 対多数の関係だ。Web2.0では、利用者同士が気持ちを伝え通い合える、いわば「感情・気持ちの交流」が可能となった。これは、1 対 1 の関係だ。これからは、企業でも行政でも、透明性、説明責任や社会貢献が今以上に要求されて来ると考えられることから、Web3.0は「社会性の追求」が追加されるのではないかと推測できる。多数対多数の協働の関係だ。

 このように進化して来ているWebの現状と近未来予測からは、私にはP2M戦略的プログラムマネジメントが類推される。プロジェクトマネジメントは、与件を着実に実現する方法論で基本はトップダウンの一方向コミュニケーションだ。P2Mを他のPM標準から特徴付けている戦略型プログラムマネジメントは、組織の階層を超えた双方向コミュニケーションにより最適化を狙う方法論だ。更に、プログラムの社会性がより高くなれば、その社会的責任、透明性、説明責任、倫理観、そして、ガバナンスも重要視されて来る。この項目のすべてが、P2M改訂3版の価値評価の指標項目に含まれる。数年先に予定されるP2M改訂4版の出版時には、この社会的要請は更に重要視されると思われる。Cloud-Webの進化の方向は、それを想起させてくれる。

以 上

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