理事長コーナー
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コロッケとP2M

PMAJ理事長 光藤 昭男 [プロフィール] :8月号

 コロッケは、“豚カツ、カレーライスと共に大正の三大洋食の一つ”で、“大正時代に普及して、・・・非常にポピュラーな洋食となっている”。“起源はフランス料理のクロケット (croquette) にあるという。・・・女性誌『女鑑』 (明治28年) には、このクロケット (クリームコロッケに近い) はジャガイモを使った (日本の) コロッケと対比して、それぞれはもはや「別の料理」と書かれている”。また、“オランダにはクロケット (kroket) と呼ばれる料理が・・・ジャガイモで作られた・・・。さらに、ポルトガルでは・・・干し鱈とじゃがいもを使ったコロッケが国民食となっており、現在のコロッケに近い”とある。現在、一般的なコロッケの中身はジャガイモと挽肉だ。それは明治初期に西洋からもたらされたが、その後日本人による独自の工夫を経て大衆料理となり日本の食卓では欠かせない人気惣菜である。(引用Wikipediaより)

 「ものまね芸人コロッケ」は人気タレントだ。“コロッケ”を芸名としている。この“コロッケ”の言葉に内在する、似て非なる開き直りが芸名命名の由来であろう。偶然に彼の手記を読んだ。興味深い内容なので引用する。「ものまねとは感覚的な芸です。表情や声を似せるという事に方法論はありません。ものまねの師匠は私には存在しません」。さらに、「一般的な芸人の世界と違う所からキャリアが始まりましたし、芸能界という世界の見方も他の芸人さん達と違っているかもしれません。けれども、それが功を奏したのだと思います。大多数が歩んだ所にいないから、周囲の状況を観察する様になった。観察や洞察の連続が、私をものまね芸人として成長させてくれた」。

 「自己流、独学でものまねのテクニックを積んで、こうして続けてくる事が出来ました。 私が大切にしている三つの心構えがあります。一つは『気付くか気付かないか』二つ目が『やるかやらないか』三つ目が『できるかできないか』です」。誰もが知っているものまね対象者の姿・仕草の中に、はっと気づかないことを織り込む事で、お客は意外性を感じとり、笑いを誘う。観察や洞察の中から、気づき、その気づきを演技として評価されるレベルまで工夫して、それを実際に演じてみせる。

 「『気付くか気付かないか』、気付いて一年間、それに気を付けて過ごすのと、気を付けないで過ごす人とでは一年の差が出るという事です。・・・『やるかやらないか』は実践できるかどうかの問題で、気付いていても色々な事を理由に実行に移さない人は多くいます。そこで、やれるかという事です。ここでつまずいてしまう人が多いかもしれません。そして『できるかできないか』これは、自分が実行に移したものを、今後五年間、あるいは十年という期間、継続できるかという事です」。

 振返って、P2Mは”Program & Project Management for Enterprise Innovation”が正式名である。この名のとおり、企業 (組織体) にイノベーションを起こすための日本発のプログラム・プロジェクトマネジメントの方法論として2001年に発表された。P2Mのエッセンスとユニークさは、プログラムマネジメントにある。出発点は、眼前にある状況から見えない課題・問題への「気付き」だ。ありのままの姿から変えたいあるべき姿を描くのは、観察と洞察による。変えるための目的、目標、ミッションを確認することは必須だ。変える行動は価値創造に繋がる。「やること」 はそれを達成させる具体的な行動計画を立て、多くのシナリオから一つを選択する過程で複数のプロジェクトを創造する。その全体計画 (プログラム) の達成に向け行動する。「できる」まで実践し、当面の目標に達成しても、計画した成果がでるまで利活用と改善を続ける。これがP2Mプログラムマネジメントだ。

 コロッケの云う「今後五年間、あるいは十年という期間、継続できる」の真の意味は、前記の引用だけでは不明だ。かれは、更に次のように続けている。「人間という生き物は、日々の生活に追われていると色々な事に気付かなくなってしまいます。または、気付いても、忙しさにかまけて実行出来なくなってしまう弱い生き物なのです。行動に移せても、継続する事は本当に困難。でもそれが出来れば、最終的には周囲の信頼を獲得できるのです。・・・今日も明日もステージでふざけます。テレビ番組でも思い切りふざけて、皆さんに喜んで戴ける様邁進し続けます。・・・幸運が重なって、今の私がいます。考えれば考える程、自分が幸せな人間と思えてなりません」。

挿絵 (コロッケ)  コロッケ個人のこのひた向きな生き方を、P2Mに結び付けることは無理があり失礼かもしれないが、この「三つの心構え」は間違いなくP2Mに通じる。気付くことも、実施することも、継続することも、それぞれに困難を伴う。しかし、この三つを成し遂げてこそ、個人、企業、コミュニティ、社会に役に立ち、信頼を得、そしてよろこびに繋がる。


以 上

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