PMプロの知恵コーナー
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「エンタテイメント論」(87)

川勝 良昭 Yoshiaki Kawakatsu [プロフィール] :6月号

エンタテイメント論


第2部 エンタテイメント論の本質

6 創造
●発想促進法 ⑨
 優れた発想は、発想内容を即時「メモ」する事に依って生まれる。メモする目的を以下で説明したい。そしてメモ大いに利用して欲しい。大いに役に立つからだ。

●メモの目的 (1) ~忘れるから?
 アイデアを思い付いたら直ぐにその場でメモに取ることは、アイデアを考えると同じ様に極めて重要である。

 アイデア・マン、アイデア・ウーマンと言われる人は、その殆どが「メモ魔」である。天才と言われた人も「メモ魔」が多い。何故ならアイデアは一瞬浮かび、一瞬消えるからだ。

Don't forget!

 勿論、物事には例外がある。大作曲家のベートーベンは、作曲に適するメロディーが浮かぶと、直ぐに五線譜の書かれたメモ手帳に書いた。しかしモーツアルトは一切メモしなかったと言われている。

 しかしこの例外の話を筆者は信じない。何故ならモーツアルトは、書きなぐった楽譜を沢山残している。この事から当然、メモ的な楽譜を書いていたに相違ないからだ。天才の彼であってもメモしておいた楽譜を見て、その曲を思いついた時の感情の流れを思い起こし、その瞬間から作曲を始めることもしたはずである。

 実は、筆者も昔から多くの曲を作ってきた。沢山のメモを残している。何十年も前に書き残したメモを引っ張りだしてピアノで弾くとその時の記憶が呼び起こされる。企業などから依頼されて作曲した時、新たな曲想が浮かばず困った事が度々あった。そんな時、昔、メモに残した断片のメロディーがヒントになって依頼者の気にいる曲を作ることが出来た事がしばしばあった。

 昔は、TVで有名な「島田紳助」、今は、「綾小路きみまろ」は、他の人の漫才内容や面白いと思ったものは即座に記録し、笑いを分析し、自分のアイデアを加え、司会や漫談のネタに使ったと聞いた。彼らは人の見ていない陰で地味に、根気よく、アイデアを蓄積し、練っていたのだ。この努力があったからこそTV界でリーダー的存在になれたのである。

 なお筆者も、起きている時は勿論、寝る時も枕元にメモ帳と筆記用具を用意している。思い付いたアイデアを紙に字、絵、記号などで書き留めるためである。

●メモの目的 (2) ~忘れるため?
 「メモ」することは、「記憶」するためだけではない。「忘れる」ために「メモ」をするのである。メモをすることで記憶を持続させる負担から逃れるためである。言い換えれば、頭の中の情報処理領域を増やすためである。コンピューターと同じ考えである。

 メモがあるので、それを読めば一瞬に記憶が蘇る。そして様々メモを机の上に並べて、新しいアイデアを発想するのである。

「自分の考えや感情をメモにするって
結構大変。でも楽しい。
また覚えておくのが大変だからメモをします」

★ 感情を言葉に置き換える作業は、
脳の中の意識分野と無意識分野の
交流を生み、発想を促進すると脳科学は言う。

●メモの目的 (3) ~組み合わせるため?
 最近、誰しも普通にポータブルPCやスマートフォンなど電子機器を使って社内や社外で仕事をしている。筆者も最新のものを買って使っている。

 若い人達は、いろいろな情報をそれに記録し、メモ代わりに使っている。多くの情報を纏めて、幾らでも記録できる上、全く嵩張らない。その結果、メモ用紙を使わない。一見、合理的でスマートに見える。

 しかし創造活動の観点からは問題がある。PCやスマートフォンなどのデジタル文字情報は、生きた香り、生きた躍動、生きた動きが抹消され、無機質化する。もっとも文字情報でなく、写真情報なら効果はある。しかし写真を沢山撮れても、それらをプリントアウトしないと「ある事」ができない。プリントアウトすると手間とコストが掛かる。

 「ある事」とは、メモや写真などを手元に並べて、作為的又は無作為的に組み合わせる事、その時、浮かんだヒントを新たにメモする事、眼前のあるメモに赤字で書き込む事などを云う。この作業でさまざまなアイデアが生まれる。多くのメモの組み合わせで優れた発想が生まれる。

 この組み合わせは、手書きメモなら即座に出来るし、費用も掛からない。PCやスマートフォンに記録した情報は、自由に切り出しできるが、組み合わせするためには一旦プリントアウトが必要になる。PC記録は、時間軸と空間軸でも整理されるが、画面を飛び越して自由に処理できない。


 創造活動は、どちらかと言えば、アナログ情報の方が役に立つ。絵や写真はその代表である。 気になる場面に遭遇するとスマートフォンで直ぐに写真が撮影できる。しかし周囲の環境や撮影禁止などで撮影できない時も多い。

 しかし日頃から気になる場面や記憶に留めたい場面に遭遇すると、手元のメモに漫画的な絵を書くことで、その記憶を保持する習慣があれば、写真に代わるメモとして大いに活用できる。

●メモの目的 (4) ~連絡のため?
 >当然のことながら、不在の人物に要件を伝えるためのメモ、緊急連絡のためのメモ、第三者に悟られない様に伝える手渡すメモなど、職場や生活のあらゆる場面でメモが使われている。
 >メモを適時、適切に使える能力を高めておくことは、創造活動だけでなく、あらゆる作業で大きなメリットを享受できる。

URGENT MEMO

つづく

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