関西P2M研究部会
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(その3) クレームを経営に活かす!
~クレーム対応仕組み構築のすすめ~

海藏 三郎 [プロフィール] :5月号

 過去 2 回に渡って論じてきた、掲題テーマも今回が最終回です。

4. クレーム対応の重要性と経営上の目的
  ( 1 ) クレーム対応の重要性と経営に与える影響
    クレームの撲滅 (削減) を考えるよりも、クレーム対応力を強化することが重要。
    クレーム対応力を強化することで、お客様の信頼と信用が向上する (雨降って地固まる)。
    逆に対応を誤ると (対応の失敗や対応力の弱さ、スピード等含む)、お客様からの信用を失い、取引停止に陥ることもある。迅速なレスポンスが最重要課題である。
    クレーム対応の仕組みを構築することにより、企業のマネジメントレベルの向上が図られるとともに、企業のパフォーマンス向上に繋がっていく。
    クレーム対応の仕組み構築と全社員への浸透により、現場改善や品質向上に繋がっていく。
    クレームと真摯に対峙することにより、お客様第一の理念や経営マインド向上に繋がっていく。
    クレーム対応は個人で対応するのではなく、組織として対応する文化風土が重要。
    クレームに真摯に対応することで、技術が進展し経営力がアップする。
  ( 2 ) クレーム対応力強化を阻害する要因
    経営幹部層のクレームに対する意識力の欠如、甘さ
⇒「あの会社は、また何かケチをつけてきた!」「しばらく、ほっとこう。そのうちほとぼりも冷めるやろ」「代替品を送っとこう」「こちらの弱みを見せずに、相手の弱点を追求しよう!」等々。
    「クレーム即品質不良」と思いこむ文化風土
⇒クレームの原因は品質不良だけではない。相手先 (お客様の現場) の使用ミスや使用条件の設定ミス、契約時の仕様確認モレ、搬送時に不具合発生等々ある (詳細は上述の当業界のクレームの特徴参照)。
    人材・ノウハウ不足
⇒クレームの重要性は認識しているが、その為の仕組 (ルール・規定) を構築できる人材・ノウハウが欠如している。
    財務的・経営的余裕がない
⇒クレーム処理の仕組構築をする人的・資金的余裕がない。
    チャレンジ精神に欠ける企業風土
⇒余計なことはしたくない、面倒くさいことはしたくない、効果 (メリット) が不明な仕組構築に余分な時間・労力はかけたくない。
    学習機能がない。同じクレームが幾度となく発生する
⇒クレームを個人の処理に頼り、それで終わっている。対応経過や教訓等を文書化し蓄積するルールが確立していない。
    部署間連携ができていない
⇒クレームは組織力で対応するという文化風土が欠如。
  ( 3 ) クレーム対応力仕組強化の必要性
    信用力の強化 : 適確で迅速なクレーム処理の実施し、継続的な見直し改善や、次期製品・サービスにフィードバックする仕組を構築することにより、取引先及び銀行等からの信用力が向上し、売上向上や資金等の財務改善に繋がっていく。
    クレームの再発防止 : 同一クレームの再発防止だけでなく、類似クレームの伝染阻止やクレームによる風評拡大 (インターネット、携帯等の普及) を防止出来る。
    資産ノウハウの蓄積 : クレームを適切に処置する仕組を構築することによって、クレーム処理ノウハウが蓄積され、知的資産として有効活用できるようになる。
    人材の育成強化 (マネジメント力の強化) : クレーム処理の仕組構築を実践することによって、人材の育成が図られるとともに、それを適切に継続的に運用することによって、経営マネジメント力の強化に繋がっていく。
  ( 4 ) クレーム対応力強化 (仕組構築) の留意点
    推進組織体制の明確化
      責任者を明確にする。
      クレーム窓口を明確にする。
      社内ルールを確立し、部署間の役割・連携を明確にする。
    教育訓練の徹底
      クレーム処理対応に関する教育訓練を徹底し、担当者ごとに対応が異なったり、不適切な対応を防ぐようにする。
      クレーム処理に関する知識や処理方法を、全社員に浸透させる。
      責任者はクレームの全体像を理解し、“クレームは宝の山”をスローガンに知的資産の蓄積及び活用を徹底できる人材として養成する。

5.最後に
 冒頭に述べたように、本稿は、海舟グループ (※ 末尾注記) で現在取組推進中である「クレーム対応力強化の仕組み構築」の序論部分を紹介させていただいた。序論に続く“本文”は下記のような項目で構成されている。
 【目次】
金属製品製造業におけるクレームの概要
  1. 金属製品製造業におけるクレーム処理
  2. 金属製品製造業『その他金属製品製造業』のクレーム例
クレーム処理の体制づくり
  1. クレーム対応組織づくりの必要性
  2. クレーム対応組織づくり
  3. クレーム対応関連書類の整備
クレーム処理の実務
  1. クレーム処理ツリー
  2. クレーム発生時の留意点
  3. クレーム処理書類
  4. クレーム解決時の留意点
クレーム削減に向けての取り組み
  1. クレーム削減体制・組織面
  2. クレーム削減のための社員教育
  3. クレーム削減目標と削減対応
  4. クレーム情報のシステム化
  5. 不良品管理
クレームを経営に生かす
  1. クレームによる損害
  2. クレームの削減による企業信用の確保と向上
  3. クレーム情報の活用
自己診断表と書類サンプル
  1. 自己診断表
  2. 書類サンプル

 最後に、中小製造業がクレーム対応力の仕組み構築を通じて、経営力の強化や人材の活性化等に結びつけられることを祈念して、本稿を綴じたい。

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