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「ダイバーシティ時代のプロジェクトマネジメント」
~経歴をストーリーで語る力~

井上 多恵子 [プロフィール] :5月号

 質問です。あなたは、あなたの経歴を、まとめていますか?もし、まとめていないのであれば、一度整理されることをぜひお勧めします!
 なぜならば、人の記憶はいい加減だから。ちゃんと記録していないと、すぐ忘れてしまうから。例えば、職務経歴書の経歴の欄には、いつからいつまでどういう部署にいて、どういう仕事をどういう肩書きでしていたのかを書くのですが、まめに記録していないと、この作業は大変です。日本経済新聞に掲載されている「私の履歴書」を読むたびに感心するのは、「細部にいたるまでよく書かれているということ。」それができるのは、よほどまめに記録を取っていたか、記憶力が優れているか、それとも「私の履歴書」を書くにあたり、関係者が必死に調べたからでしょう。
 これまでやってきたことを振り返ることは、「これから先」を考えるヒントにもなります。どういう仕事を通じてどういう人に接し、どういうスキルや力を磨いてきたのか。このオンラインジャーナルを読んでいただいている皆さんは、複数のプロジェクトにどう関わってきたのか、という視点で見ることも一案です。メンバーという立場からリーダーやPMOとして関わる形に変わってきているかもしれません。部署内で完結するプロジェクトから複数の部署にまたがるものへ、あるいは社外の方々や海外の方々も関係するプロジェクトに関わる形に変わってきているかもしれません。規模も小さいものから、大きく、インパクトが大きいものへ、あるいは、一つの商品に関するものから、プロセスに関するものに変わっているかもしれません。その過程で、プロジェクトマネジメントに関するさまざまなスキルを身につけてきたことでしょう。
 まとめるのは、チャンスを逃さないためでもあります。今は、日本でも、転職をする人が増えています。起業をする人も、そしてある特定の仕事を請け負って仕事をする人もいます。そうすると、社内で異動している時よりも、「自分がやってきたこと、できること」を人に明確に伝えることが求められるようになります。自分のキャリアに関心をもってくれる人がいた場合、さっと見せることができる書類を持っていると効果的です。必要が生じてから作成しようとしていると、タイミングを逃しかねません。

 経歴の効果的なまとめ方
 経歴をまとめる際に効果的な点を 2 点ご紹介します。1 点目。経歴をストーリーで語れるようにすることです。目指したいこと、やりたいことがあって、それを実現するために、これまでの経歴が築かれていることが理想ですが、これは難しいです。私もそうだったように、はっきりした目標がないまま、その時その時でベストだと思うことを積み重ねてきた人も多いと思います。でも、スティーブ・ジョブスが言ったように、関連性がないと思っていたことも、実は振り返ってみると、つながっていたりすることがあります。物事の間に関連性を見出し、うまくつなげることができれば。今までの歩みを、ストーリー性をもって、今につなげることができるようになります。
 そのために、自分なりに材料を出したら、あなたのことを応援してくれる人に、アドバイスをもらってください。これが、2 点目です。これは強くお勧めします。なぜなら、自分だけだと、見方が限られてしまうので、関連性を見出し、うまくつなげることが難しい場合があるからです。気づかないことも相当あります。例えば先日話を聞いた30代の女性エンジニアは、私と話す中で、エンジニア以外の領域に将来キャリアを広げる可能性に気づきました。私からの質問を受けたり、「それってすごいね!」というコメントを受けたりすることで、彼女が大したことがないと思っていた実績やスキルに価値があることに気付くことができました。その結果、彼女の自己効力感も上がり、彼女の力を正当にアピールするためのヒントも得ることができたと思います。
 ですから、同僚でも知人でもいいので、あなたのことを応援してくれる人たちと集まり、お互いの経歴について語り合い、アドバイスし合う機会をぜひ持ってみてください。アドバイスが難しいようであれば、単純に話を聞いて疑問に思った点を質問したり、素直な感想を述べたりするだけでも構いません。そもそも本人が自分の経歴を整理して語る過程で気づくこともありますし、質問を受けることで、あいまいだった点が明確になることもあります。少し恥ずかしいかもしれませんが、やる価値は絶対あります。これまで、多くの方の職務経歴書作成のコンサルをしたり、キャリアに対しお互いにフィードバックしあうワークを実施してきたりした経験から、断言します!

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