協会理事コーナー
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「PMAJをP2Mする !?」

株式会社竹中土木 坂井 剛太郎 [プロフィール] :4月号

1.  はじめに
 昨年12月のオンラインジャーナルでは、「PMRクラブ」のメンバーとして、P2Mとの関わり及び協会への期待をテーマに寄稿したのだが、図らずも短期間のインターバルで再び原稿執筆の機会を得ることになった。今回の寄稿では、理事としてのミッションの視点で、P2Mの発展・展開について論じてみることとする。
2.  社会動向と機会創出
 東日本大震災から4年が過ぎ、予算の未消化や入札の不調続きなど、未だ軌道に乗る様子の無い復興事業だが、そこにはプロジェクトマネージャーの欠乏という根本的な課題が潜在していると考えられる。また、国内官公庁プロジェクトにおいても、PFI、PPP、コンセッション等々、新しい方式の名のもとでの民間資源活用とうたいながら、資金はもちろんだが、本音のところでは民間からのマネジメント機能の導入が目的であることは否めないと考える。
 現在、日本政府の無償支援や円借款などの海外支援プロジェクトに関わっており、新規進出候補国の現況調査のために現地を訪れることがあるが、発展途上国では現地政府内にマネジメントできる人的資源が欠乏している様子が顕著である。これまでの箱物供与の支援ではなく、無償支援での人的資源育成テーマのプログラムが採用されたり、円借款においても国内と同じくBOTやPPPという方式の名のもとにマネジメント一括のプロジェクトが採用されたりしており、その割合も増加傾向にあるといえる。
3.  P2MとPMAJの可能性と障害
 上記のような複雑性・多様性を持つ市場環境変化への対応ということを考えると、P2Mにとっては追い風であるが、手放しで喜べる状況ではない。独立されてご活躍の諸先輩はともかく、多くの企業内PMは自分の専門分野内でのマネジメントスキルであり、異分野や未知分野での応用型プロジェクトへの取組み経験があるPM人材は限られているからである。
 また、企業内では組織という後方支援が期待でき、良くも悪くも機能と責任が分散されることになるのであるが、上記のようなプロジェクトにおいては、チームメンバー人材の招集や責任・報酬のバランスのとれた就労環境基盤の構築などはPMの力量に委ねられることが多く、企業内のそれとは大きく異なるものであり、企業内に多くストックされているPM個人が活躍する世界を広げる上では、大きな障壁となるであろう。
4.  PMAJをP2Mする !?
 PM人材を渇望する社会環境と障害となりうる内部制約条件をもとに、PMAJのミッションをP2Mプロセスで考察してみると、PMAJに求められる機能が見えてくる。
 一つ目は、平場で勝負のできるPM能力の開発である。それがPMR、PMAという資格であるのかもしれないが、資格とは別に遂行力育成を目的としたトレーニング講座やシミュレーション (ワークショップ) の開設などが必要と考える。
 二つ目は、PM業務遂行のための環境の整備と共に、官公庁共通の業務仕様書 (Job Description) や標準契約約款の作成、責任限度の設定 (プロフェッショナル保険の導入)、報酬基準の構築、など、会員や関係者のPM遂行における基盤構築であり、実施事例のデータベース化という事後プロセスについても考察していく必要があると考える。
 そして三つ目は、人材ストック市場の形成、或いはそのメインプレーヤーとしての人材バンク機能の確立である。欧米型の専業マネージャーとは異なり、日本のマネージャーはたたき上げであることが多いため、PMはマネージャーであると同時に特定分野のエキスパートでもある。その両面をデータベース化することで、PMチームメンバーのストックを構築することができるのではないだろうか。その機能への双方向アクセスが会員特典となれば、協会会員数の拡大にもつながるかもしれない。
5.  おわりに
 現在、PMAJは一部外国の国策ベースでの取組み支援や、大学等でのP2M導入へと積極的な施策展開を行っている。今後、国内外での地位を固めていく上での多角的な施策推進の一案として、上記構想を具現化するとすれば、まず会員ベースでの実態調査や市場統計の分析に始まり、ファイブフォースモデル等による業界構造解析、SWOT分析やバランスト・スコアカード等の視点によるアーキテクチャプロセスが必要になると考える。そのプロセスそのものもプログラムマネジメントであり、P2Mレベルの研鑽を図る上でも、協会・会員が一体となって取り組む有効なテーマなのかもしれない。

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