PMRクラブ
先号   次号

横河電機でのエンジニアリング効率化への取り組み

横河電機株式会社 枝窪 肇 [プロフィール] :4月号

1. はじめに
今回は2015年3月10日に開催された第13回PMRクラブで発表した内容をベースに、現在の横河電機の取り組みを紹介させていただきます。

2. 横河電機 (株) の紹介
横河電機は、創業者の横河民輔が1915年に前身である横河電気計器計測所を設立してから、今年でちょうど創業100年を迎えます。そして現在は世界55の国に88の拠点を構えています。扱う製品は工業用の計測器、レコーダー流量計や温度計、DSC、SIS、MESなど多岐に渡ります。
中でも横河電機の主力製品として位置づけられているのがCENTUM (センタム) というDCS (Distributed Control System) で、プラントのオートメーションを支える制御システムです。アジア圏を中心に全世界で25,559システム (2014年9月現在) が納入されています。

3. 新しいCENTUM
横河電機では今年4月にこのCENTUMの新製品を発売します。このCENTUMの開発においては、従来型エンジニアリングの4つの課題を克服することを目指しました。
( 1 ) プラント初期立上げ期間の短縮
従来のプロジェクトではプロジェクトの実行において、I/Oループチェック作業とソフト構築をシリーズに実施していましたが、これらをパラレルに実施することで工期を短縮しスタートアップ開始時期を早めることができます。


( 2 ) 現地でのI/O変更による工期遅れの抑制
N-IOというまったく新しいI/Oを導入することにより、I/Oモジュールを変更することなくソフトウェアで信号種別を変更できるようになったことで、I/O割付の変更による工数を大幅に削減できるようになりました。
( 3 ) 配線設置スペースの削減
N-IOは1つのモジュールでAI/AO/DI/DOを混在して割り付けることができるため、信号種類ごとの整理が必要なくマーシャリングが不要になります。これにより、マーシャリングキャビネット用のスペースや作業そのものが削減されます。
( 4 ) エンジニアリング品質向上とプロジェクト工期短縮の両立
専門のエンジニアにより開発・検査された、エンジニアリングノウハウを部品化したモジュールをしようすることで、エンジニアリング品質が向上するとともに、プロジェクト期間を短縮することができます (モジュールベースエンジニアリング)。


4. モジュールベースエンジニアリングにおける今後の課題
前述したとおり、モジュールベースエンジニアリングで使用する部品化されたモジュールは、専門のエンジニアにより開発されますが、CENTUMが制御するプラントには様々な業種やプロセスがあり、エンジニアは一般的には特定の業種やプロセスには強いが他の業種のことになるとよくわからない、ということがほとんどです。それゆえ、モジュール作成専門のエンジニアはそれらさまざまな業種知識を持ったスペシャリストであるか、または各業種の専門家を選び出し一つの組織としてまとめ上げるかのいずれかが必要になりますが、現時点では詳細は白紙の状態です。
また、国内エンジニアと海外エンジニアとでは既存ノウハウの利用方法に違いがあり、世界共通で使えるモジュールの構造設計や運用方法の徹底など、まだまだ課題は山積みです。
過去のナリッジを資源として活用することはP2Mにおいても大変難しい課題だと認識していますが、この課題を乗り切った先に真の品質向上への道が見えてくると信じ、モジュールライブラリを充実させていきます。

5. 最後に
DCSという一般の方にはあまりなじみのないお話しとなってしまい、PMRクラブにふさわしい内容だったかいささか心配ではありますが、何かの参考にしていただけたらと思います。

以上

ページトップに戻る