グローバルフォーラム
先号   次号

「グローバルPMへの窓」(第90回)
フィリピンに学ぶ

グローバルPMアナリスト  田中 弘 [プロフィール] :4月号

 今年は1月がセネガル大学院出講でセネガル及びいくつかの西・中央アフリカの国の学生と、2月は石川県の北陸先端科学技術大学院大学集中講義でタイ、ネパール、中国、日本の学生と楽しく授業をやってきたが、3月の第3週と4週は、一般財団法人海外産業人材育成協会 (HIDA : 経済産業省傘下) から日本プロジェクトマネジメント協会が受託を受けたフィリピン管理者向けP2M研修で、HIDA指名によりCourse Directorを務めた。
 HIDA研修は3年ぶりであるが、フィリピン管理者向けは今回で3回目であった。Course Director にも務め方がいろいろあるようであるが、私の場合は10日間60時間のすべてのプログラムを仕切り、ゲストによる事例以外は自分ですべての教材を作り、うち39時間は自分で教えた。研修会場は北千住のHIDA東京研修センターで、研修生の宿舎を兼ねている。ただでさえ、電車での外出が大嫌いな私には往復4時間の通勤は問題外で、HIDAさんに頼みこんで、研修センターに寝泊まりしていた。
 研修会館には、毎日のように海外から各研修コースの研修生が入居してきて、とても賑やかなところである。ロビーでの交流、カフェテリアでの三食の食事、あるいはランドリールームのひと時には発展途上国の息吹が聞こえてくる。
 フィリピンでは日本のP2M伝説が定着しており、総額50万円を超えるコースであるが、HIDAフィリピン同窓会の告示と前二回の受講者からの口コミで今回も22名の中堅企業経営者が参加してくれた。とくに二世経営者が多い。2週間のプログラムは極めて順調に進み、日比友好精神の盛り上がりや「場」の形成、知識習得、スキル習得とも上々であった。英語はフィリピンの公用語であり、アメリカとの交流が深いのでマネジメントの基礎理論は管理職者であれば一巡しており、また、もともと結びつきが強い日比関係が、ここ3年ほどのフィリピンの急成長のお蔭でかつてない盛り上がりを見せており、日本流マネジメントがまた盛んになっている。となると、講師は一体何を教えるのか、教わるのはこちら側ではないか、という気がしないでもない。
 しかし、参加の全員から一度もフィリピンに行ったことがない私にフィリピンに来るようにお誘いがあり、また修了式にご来駕いただき素晴らしいご挨拶を戴いたManuel Lopez 駐日大使閣下からも熱心にお勧めいただいたので、年内に調査を兼ねてこれまでの教え子達に会いに行きたいと思っている。
 本研修では第1週目でプロジェクトマネジメントの、第2週目にはプログラムマネジメントのグループ自主選択テーマのワークショップを行うが、今回の4グループの成果は、他の国でやっている私の学生や社会人のワークショップ成果と比べると完全に格上であり、見事であった。自分の身の周りのテーマではなく、フィリピンの成長ビジネスの仕組み作りや国の懸案課題へのP2M的課題解決仕組み提案があいついだ。その間には当然彼らの努力ありだ。夜私がロビーで翌日の講義の準備をしていると8時頃から4つのグループが三々五々集まってきて深夜までテーマの検討作業をしていた。
 レベルの高い研修生に対しては全力投球で、球種を7つぐらい使って戦う必要がある。野球の投手の完投は3時間(大学の二コマ)であるが、投手に例えると2週間で13の完投を行い、あと5試合は内野守備をやっていた、という感じだ。しかし相手の反応が良いとあまり疲れない。また、私の研修労力配分のノウハウで1週間の集中講義をやる場合には、水曜日に疲れのピークをもってきて、これを越えると木曜、金曜と講義をしながら疲労を減らし金曜日に講義が終わり、一晩寝ると翌日から次の教育プロジェクトの準備に取り掛かることができる。




フィリピンの友人達との濃密な思い出を胸にしまい、3月31日には中国蘇州に行き次の陣が始まる  ♥♥♥


ページトップに戻る