グローバルフォーラム
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「グローバルPMへの窓」(第89回)
“Teaching is learning” 石川県にて

グローバルPMアナリスト  田中 弘 [プロフィール] :3月号

 2月中旬に石川県にある大学院に集中講義をしに行った。夕方食事をするために鶴来町(白山市)に出て街を歩いている際に、まず萬歳楽、つぎに菊姫の蔵元を見つけた。いずれも「加賀の菊酒」と呼ばれ、 霊峰白山より流れる恵みの清水を醸して生まれた美酒であり、全国的に名高い。90年代の初め頃、勤務先の本部長の上司には、温泉・蝶の採取・日本酒(地酒)の3つの趣味があり、酒席の度に次から次へと全国の美酒を教わった。そして、日本で一番の地酒はなんですか、と尋ねたら、石川の「菊姫」である、と。
 しかし、当時、菊姫は関東では超貴重品であり、銘酒店でも置いてないことが多く、あっても吟醸酒が一升1万数千円した。菊姫も最近少しは出回るようになったが、地元の鶴来町では、和食店で5つくらいの菊姫銘柄がリーズナブルな値段で楽しめる。
 酒の話が続くが、昔も今も、飛行機の長距離移動が生活の一部になっており、昔は長距離のフライト即ワインの鑑賞会であり、フライトに積んであるすべてのワインを飲んでいた。そこで一番好きになったのがブルゴーニュ・ワインだ。私の一代前のグローバルPMフォーラム会長で90年代最後のIPMA会長 Gilles Caupin氏は、プロジェクトマネジメントはワインの如しである、と語ったが実に名言ではないか。やってみないと(試してみないと)わからない。
 いまは、フライトでのワインへの執着はなくなったが、書き物を終えて一眠りして起きて、ラーメンにシャンパン(あるいはスパークリングワイン)で朝食をとることが、到着地での仕事に突っ込むための自分なりの儀式になっている。
 これまた癖になっていたのが、駅のベンチで「CANチューハイ」を飲みながらPCをたたいて文書を作ることであった。この際、CANチュウハイは当時220円、今は225円で駅の売店でほぼ独占的に売っている宝酒造の元祖銘柄で、他の100円台の缶酎ハイ銘柄であってはならない。これは今でも大好きで、飲み屋の酎ハイを飲むとまずい、と思う。
 さて、石川の大学院では、本来日本語での集中講義であったが、履修学生の圧倒的多数はタイの学生で日本語はほとんど分からないので、急遽日本語と英語で交互に教えるということになった。最近日本の大学も海外の大学とダブル・デグリー(二重学位)提携を結ぶ例が増えているが、日本側では名目的になっているケースが多いという。こちらの大学院では、本格的なダブル・デグリー課程運用を始めており、今回のタイの博士課程生は、タイと日本の双方の大学に指導教授(アドバイザー)を有し、また双方で科目を履修するので、6か月単位で大学間を移動するとのこと。一挙に二つの学位を取得できる反面、学生も教員も大変であろう。
 私は教員として海外に出向く先はフランス、セネガル、ウクライナ及びロシアであり、修士課程で教えるのは11年以降行っていないので教える学生の出身国はかなり減っている。こちらの大学院で、中国からパキスタンまで居ながらにしてアジア大陸沿岸諸国、つまり世界の成長エンジン、の大学院生達と濃密に触れ合える一週間は極めて貴重である。これもまさにTeaching is learning である。
 3月は久しぶりにフィリピンの企業経営者層向けの公的な2週間研修を予定している。天然資源が限られるなかで、イノベーションを駆して成長するフィリピンは国の発展モデルとして極めて貴重であり、研修を楽しみにしている。  ♥♥♥


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