昆虫はすごい
(丸山宗利著、光文社、2014年08月30日発行、238ページ、第2刷、780円+税)
デニマルさん: 4月号
今回紹介する本は、2014年のある時期話題になったことがある。昆虫を学術的には「節足動物門汎甲殻類六脚亜門昆虫網」という。分かり易くいえば、硬い外骨格をもった節足動物(カニやだんご虫など)で、主に陸上で生息している虫類である。俗に昆虫と呼ばれるものは、世界中に80万種以上いて、未だ発見されていないものを含めると100万種ともいわれている。この本で「蜘蛛、ムカデ、ヤスデ、ダニ、サソリ以外は昆虫」と分かり易く(?)定義している。この本で注目すべき点は、人間と同じ様に地球環境に順応しながら生き延びていて、昆虫から学ぶべき事が多々あると書いている。著者は、蟻を専門的に研究している博士・先生であるが、昆虫の実態を写真やイラストを多く使って簡単明瞭に書いている。昆虫に関心のある方は、昆虫専門館が全国に10箇所位あるが、特に名和昆虫博物館(岐阜県岐阜市)が有名で一度足を運ばれることお勧めしたい。更に、「東京昆虫館」がパソコンでも見られ、本とは違った昆虫が見られる。
昆虫の知らざる暮らし方 ――エサと巣と相手を求めて――
昆虫も生物なので、生きる為に餌を求めて活動する。その昆虫が餌である植物の蜜や葉や実を求めて行動するが、それで植物の送粉(受粉)を助けている。昆虫と植物との自然共生の場は、地上であり空中や地中であり、動・植物等と多様化している。これは昆虫が卵から蛹、成虫に成長する過程で変態することに関係している。この昆虫の変態過程も重要な暮らしの特徴で、それが子孫繁栄の生殖行動とも関係しているから面白いと書いている。
昆虫世界にもある社会生活 ――農業、狩猟、戦争もする――
生きとし生ける者、個として生きることは出来ない。昆虫も共同生活の中で生きている事が紹介されている。植物の葉を切って巣に持ち帰り糞で菌子を植えたり、キノコを栽培したりする蟻もいて、独自の農業も営んでいる。また昆虫が動物を襲って餌とする場合は、集団行動で敵と戦っている。虫の死骸に群がって餌としている光景はよく見かける。更に、昆虫同士でも縄張り争いがあり、生死を掛けた争いもあり人間社会と同じと書いている。
昆虫と人間との深い関わり ――害虫もいれば益虫もいる――
一般的に虫を含む昆虫には、感染症を媒介する蚊やダニ、ハエ、ゴキブリ等々の悪いイメージがある。確かに、昨年話題となった「デング熱」は、ヒトスジシマ蚊が媒介して広まった。他に人の命をも奪う「スズメバチ」や稲作被害の「ウンカ」や「バッタ」等の害虫もいる。然し、同じ蜂でも養蜂に使われる「ミツバチ」、絹の生産に欠かせない「カイコ」、他に「テントウムシ」等々は益虫として知られ、我々人間と深く永い関わりを保っている。
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