嫌われる勇気 ――自己啓発の源流「アドラー」の教え――
(岸見一郎、古賀史健著、ダイヤモンド社、2014年11月4日発行、294ページ、第19刷、
1,500円+税)
デニマルさん: 3月号
紹介する本は、2014年のアマゾンでのベストセラーNo.1である。ベストセラーの本には、ハードカバーの小説から文庫本、新書、漫画、雑誌等の色々なジャンルがあるが、それらを総合してのNo.1である。因みに、2位は「漫画で分かる7つの習慣」(宝島社)で、他に「永遠の0」(百田尚樹著)や「妖快ウオッチ元祖本」(小学館)等々がある。ご参考までに、ここで昨年とりあげた「資本主義の終焉と歴史の危機」(水野和夫著)と「里山資本主義」(藻谷浩介著)が50位以内にランクされていた。さて、本題に戻ろう。この本は、副題にもある通り自己啓発の本で、「“アドラー”の教え」を分かり易く書いている。A ・アドラー(オーストリア出身の精神科医であり心理学者)は、J・フロイトやC・ユングと並んで、現代の心理学理論の体系化と心理療法を確立した一人である。特に、フロイトとは共同研究者であったが、1911年に分かれて個人心理学(アドラ―心理学)を創設している。
嫌われる勇気とは (その1) ――自分と他人を比較しない――
アドラーは、『人生には3つの課題がある。1つ目は「仕事の課題」、2つ目は「交友の課題」、3つ目は「愛の課題」である』とし、1つ目から後にいく順に課題解決が難しくなるといっている。アドラーは、その考え方の根本に「人間の悩みは、すべて対人関係の悩みである」と位置付けている。例えば、劣等感は周囲との比較で生まれる。故に自分と他人を比較せずに、自分の考えや行動に自信と責任を持って“嫌われる勇気”を出す必要があるという。
嫌われる勇気とは (その2) ――自分の価値観を持つこと――
先の「自分の考えや行動」の意思を相手に伝えることと、自分の「価値観を相手に押し付け無理強いすること」とは全く違うと一線を画している。自分の価値観を主張すると同時に相手の価値観も認めた上で、「交友の課題」に対処する。ここでのポイントは、自分の考えや行動で相手の価値観を変える努力をしないことである。これは人間関係のトラブルの元となる。自分の考え方や行動が変わる過程で、周囲の人が変わるキッカケになるという。
嫌われる勇気とは (その3) ――幸せになる勇気の原点――
著者は、「アドラー心理学では、嫌われる勇気を持って自分らしく生きるための方法」を紹介したと書いている。自分が「人としてこうありたい」という強い想いで行動するには、自分自身の意思決定力が求められ、人に意思表示する勇気が必要である。アドラー心理学は、自分の人生は自分だけのものなので、他人の目を気にせず自分にとって「幸せになる勇気の原点」となる。アドラー心理学に関心のある方は、この本のご一読をお勧めしたい。
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