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「日本再生“アベノミクス”を成功させるために何が必要か」 (12)
脳内改革が求められている (12)

東京P2M研究会 渡辺 貢成: 3月号

A. 先月は財政破綻問題があったが、Zさんから『マイナス問題を解決するのも大切だが、日本が益々成長する話をしないと結局問題解決にはならない。新しい効果的なアイデアを出したい』という提案があった。Zさん話をしてくれるかな。
Z. わかりました。財政再建も重要ですが、日本国のエリートはこの25年間、戦略を持たずに仕事をしてきました。
この事実を理解してくれないと話は進みません。そこで皆さんに確認します。25年前は日本と韓国とでは明確な経済的な差がありました。今は逆な意味で明確な差があります。この違いは何だったのでしょうか。
B. サムスンには明確なグローバル戦略がありました。
日本の家電が負けたのはサムスンの戦略に負けたと思います。
スマホでも韓国は戦略を持って対応しました。携帯電話の利用し方は日本が進んでいました。
サムスンの戦略は3つの戦略の組み合わせです。① 顧客関係性構築を第一にし、新興国の潜在ニーズを獲得する。② 研究に金を掛けずに、日本製品のリバースエンジニアリングという2番手商法を採用して、タイミングよく使い勝手の良いものを提供する。松下幸之助の2番手商法の実行者でした。この点ではアップルもかないません。
③ 更に韓国の文化をアジア諸国に普及するという文化輸出を成功させ、韓国の文化の素晴らしさを意図的に提供しました。
現在は技術的にも日本を凌駕するものが増えています。
Z. Bさんありがとうございます。日本が実行するべき良い提案を頂きました。2番手商法の元祖は日本です。日本の家電は先進国向け製品開発では強さを発揮しました。しかし、新興国向けの競争に負けました。日本の製造業はグローバリゼーションの正しい理解をしていたでしょうか。国民国家の規制をなくすというグローバリゼーションのすごい挑戦を理解したうえで競争相手に勝つための戦略を出したでしょうか。国家が製造業を支援する戦略を考えたでしょうか。皆無です。その理由は簡単です。『日本のエリートは米国に弱く、米国という超先進国の生き方を取り入れて自己の実力と認識し、その認識を基に日本人の良さも悪さも含めて否定し、日本人の行動に批判的でした。そして日本人が考えたことを即否定し、アメリカ追従を戦略と考えてきました』。そのため一時アメリカ追従という一ツ橋「アメリカ出羽の守」経営手法が日本に蔓延しました。サムスンは日本の持つ技術、現場力を学び、その力を新興国にぶつけましたが、正しい答えは日本技術+αの戦略を駆使して勝利しました。今、元気な日本企業はサラリーマンエリート社長ではなく、日本人の可能性を信じてきたオーナー社長に率いられた会社です。くろねこヤマトのビジネスモデルを認めなかったのは役所です。役所は新しいことをしたホリエモンや新しい投資信託の開拓者も破滅させました。私が申し上げたいのは第一に日本人の実力を信じる政策です。しかし、日本人にない弱点があります。それは地政学です。韓国は大陸と陸続きの関係にあり、地政学の尊さをよく知っています。日本人は島国で地政学に疎いというグローバリゼーションには決定的な弱点をもっています。
A. 今までの経営戦略の中で日本は地政学を考えて事もなかった。では、地政学をどのように活用するつもりかね。
Z. まず、日本の官僚は難しい試験(東大入学、国家公務員試験)をパスした日本のエリートです。このままタックス・イーターを続けることはないという条件で大胆な提案をします。日本人は優秀ですが、一面で職人的な優秀さです。いいものをつくれば売れると単純に考えて成功しました。一度成功すると信念が生まれ、別のアイデアが生まれないのです。日本が20年間アイデアを出せかったのは、明らかに戦略がなかったからです。それはMBA的な戦略ではなく、地政学的戦略です。これが大胆な戦略です。日本の二つ目の欠陥は戦後国家戦略を出せなかったことです。戦前は内務省という国家戦略をつくる部署があり、現在は内務省が日本の官僚制度から削除されました。そこで残されたのが各省の(省益という)戦略で、国家として統一性のないもが今も継続されています。日本は国家戦略を出さねばなりません。地政学的戦略を産官学一体となってつくりあげることです。地政学とは昔でいえば戦いに勝つための包括的な戦略を考えることです。大国は自分の意志で戦えばいいのですが、小国はどこかと同盟を結んで強国に対抗することを考えます。
 ここで具体的な提案をします。私が考える地政学はグローバリゼーション下の経済戦争での勝利です。今、アジアでの製造業を考えると中国は今や巨大な大量生産型製造業国です。また、韓国は整然した戦略を実施し、製造業で今や技術的にも日本を凌駕するものを持っています。したがって量産品を日本で造っても勝てないでしょう。ここで日本は発想を変える必要があります。日本は世界中で最先端製品から日用品に至るまで何でも作れるだけでなく、性能・品質も世界一であり、サービス分野でもおもてなしの精神に私たちは自信を持つことができます。そこで地政学的戦略を示します。何を造るかという発想を捨てます。地政学研究所を設立し、世界中の国々(先進国、新興国、発展途上国)から選んだ国と密着し、その国が今何を欲しいかと問題で共同研究することをします。『売れるものをつくる』という発想ではなく、その国や庶民にどのようなものが、どのようなことができれば『価値が高いか』というコトに取り組みます。日本人はニーズがわかれば何でもつくれる能力を持っています。ニーズづくり研究所です。それの提案の主役は当該国の有能な人材です。日本の担当者はアイデアを出せるような日本発の製品やサービスの見本群を示し、相手が気に入ったテーマを双方で熟成させ、最期は相手国に考えさせ結論を出させることです。日本は人手不足もありますから彼らの意見をまとめて、企画・設計する役割をします。製造は少量生産か大量生産かで造る場所を選定すればいいと思います。
 そして当該国が経済成長に向けて発展できるお手伝いすることが、日本国の使命となります。では日本のメリトは何でしょうか。多くの国との関係性構築によって得たノウハウを駆使し、さらに多くの国に貢献することで、日本の経済的基盤が万全のモノとなります。
 しかし、この提案には更に隠された内容があります。現在のグローバリゼーションの勝者は米国ではなく國際金融資本になると思います。國際金融資本はいま、莫大な利益をあげていますが、国民を守る費用を支払う必要がありません。他方国民国家は国民に豊かさ、健康を与え、敵からの防衛に責任をもってあたり、莫大な費用が費やされ、莫大なハンデを持っています。したがって國際金融資本が一人勝ちすることになるでしょう。しかし、国際金融資本は、世界中の人々の幸福に貢献できないと思います。そして「大金持ち」対「貧乏人テロ」と宗教間闘争が絡み合い、戦争が絶え間なく続くという悪循環がのこります。

日本は多信教で宗教的対立がありません。災害発生の多い国ですが、それ以上に自然の恵みの多い国です。
日本は自然を司る神(神道)を崇めます。国民すべてに対する共同の神です。
個人の生死、悩みを司る仏教があります。個人の悩みに対する宗教です
儒教の教えという規律が国民の中に残されています。
グローバリゼーション下で最も精神的に安定している国といえます。
アベノミクスが地政学的戦略を駆使できれば日本の将来明るいものといえます。
A. 地政学という戦略手法を国民全体で取り入れるのは、素晴らしいね。しかしまだ絵に描いた餅かもしれない。
Z. 来月は更に具体的な提案をさせてもらいます。

以上

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