PMプロの知恵コーナー
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「エンタテイメント論」(84)

川勝 良昭 Yoshiaki Kawakatsu [プロフィール] :3月号

エンタテイメント論


第2部 エンタテイメント論の本質

6 創造
●発想促進法 ⑥
 優れた発想は、「一人思考」だけでなく、小人数の「グループ思考(交流、競争、共創)」に依っても生まれる。

●一人思考
 優れた発想は、直ぐには生まれない。何度も、何度も、考え、考えた末に突然生まれる。しかし何度も考えるための気力がなければ人は考えられない。考える気力だけでなく、実現したいという強い願望があると考える。また優れた発想が生まれそうな予感や過去に何度も考えた末に優れた発想を生み出した経験があると真剣に考える。とにかく考え抜けば、誰しも必ず優れた発想に行き着くのである。

出典:考える人、以下掲載の絵
Yahoo USA
出典:考える人、以下掲載の絵 Yahoo USA

 さて優れた発想は、一人で考えた方がより生まれ易いか? グループで考えた方がより生まれ易いか? これは興味深い課題である。「三人寄れば文珠の知恵」という諺が日本にある。そのためか多くの日本人は、グループ思考の方が知恵が出ると考え、皆で考える事の他好む。ならば「夢工学式発想法」は、どちらの思考を薦めるのか?
 
 その答えは、単純である。どちらも薦める。要は優れた発想が生まれさえすれば良い。最も効率の良い方法を選べばよい。多くの事例や筆者の経験から、個人思考とグループ思考を繰り返すことがベストである様だ。

●一人思考の長所と短所
 一人思考の良いことは、第三者の意見やアイデアで惑わされず、純粋に自らと向き合いじっくりと考えられることである。更に数多くのアイデアを思いついたら、自らの頭脳が寝ている内に生み出されたアイデアの価値を取捨選択し、不要なアイデアを切り捨てるというメリットがある。

 しかし良いことばかりだけではない。独りよがり、他者の意見を聞かず、唯我独尊、独断偏見に陥った発想をすることがある。この欠点を克服するためには自らが己の発想内容を評価することである。


 この自己評価や自問自答する方法は、口でブツブツ言っても良いが、良い発想が思い付かなくても、その発想の過程で得た発想内容のキーワードを紙に書き留めることである。それを読みながら発想を評価する。これが筆者式自己評価方法である。

 しかし現実問題としては、かなり難しい課題である。何故ならどうしても先入観、固定概念が支配し、自らの発想から抜け出せず、また新しい発想を妨げる。この一人思考の欠点を補うのがグループ思考である。既述の通り、一人思考→グループ思考→一人思考を繰り返すことである。

●グループ発想の長所と短所
 グループ発想の長所は、一人思考と異なり、グループ・メンバーの様々な個性がぶつかり、様々な面白い発想を生み出せるところにある。

 しかしメンバーの数が多くなると、各人の発言総量が劇的に増える一方、お互いに議論し、意見を交換する機会が劇的に減少する。その結果、発言や議論に加われないメンバーは沈黙する。その結果、声の大きい人物、発言に迫力のある人物などが討議を支配するなどの短所がある。


●4~5人のグループ発想
 グループ発想の短所を補う方法は、メンバーの数を制限し、1チーム4~5名とすることである。それ以上の数で集団討議すると、その効果が大幅に減衰する事が「グループ・ダイナミックス論」で証明されている。

 しかしグループ討議でその数を4~5名に限定しても問題はある。それは、メンバーの資質があまりに違い過ぎるとか、リーダー不在などで議論が噛み合わず、あらぬ方向に向かうなどの問題がある。


 異分野の人物を参加させることは効果が大きいが、ある程度の資質のレベル合わせも必要と思う。なお人数を4~5名に限度できず、多人数にならざるを得ない事情がある場合は、A、B、Cなどのグループに分割する。各グループは、4~5人とする。そして同じテーマで、各グループで発想を競わせる。効果は抜群である。


●グループ発想のための環境準備
 発想のための会議室の雰囲気や下地作りは極めて重要である。細かい議論のやり方をあまり気にせず、参加者が気楽に参加し、豊かに、真剣に、楽しく、手短に発想の会議を進めれば良い。そして発想会議が途中で盛り上がった頃、アルコールを提供し、リラックスした中で更なる議論のネタ探しに取り組む。その効果は倍加するだろう。


●グループ発想の記録
 筆者が昔から厳守していることは、発想し、発言した内容を絵や図で書き表す「黒板(ホワイトボード)」を準備することだ。これによって発想と討議が円滑且つ深化される。ボードに書いた内容を直ぐに記録できる「電子黒板」はより便利である。

 またグループ毎で発想内容を記録することを誰かに頼むと、その人物は発想の記録に気を取られ、発想討議に加われない。さればといって発想と記録の両方を器用にこなせる人物はあまりいない。グループでの発想内容は、一人思考に大いに参考になる。従って記録は欠かせない。この問題を如何に解決するか。


 極めて簡単で効果的な記録方法がある。それは、各人の記録ノートを全員から集め、コピーを撮って、全員に配布するである。字の下手な人、殆ど書かない人を問わず、コピーを撮る。これで十分記録の効果がある。是非、試してみたらどうか。この作業をやると、各人が字を乱暴に書かず、重要なことを記録する様になる。

つづく

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