今月のひとこと
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プロジェクトの調達管理

オンライン編集長 三浦 進 [プロフィール] :3月号

 早くも私が編集長を務めて1年が経とうとしています。このオンラインジャーナルの「今月のひと言」を何とか1年間執筆してきました。内容はプロジェクト経験からの紹介が主で、少しでも皆様のお役に立つものをと思っておりますが、どうであったか不安が残ります。4月上旬発行予定のジャーナル52号は、特集に「PMAJガイド (仮称)」として北から南まで各部会の紹介記事を企画しました。原稿は揃い他の特集記事と共にこれから編集に入るところです。

 今月は、プロジェクトの調達管理に関して述べたいと思います。私の経験からですからエンジ・建設系になりますが、調達マネジメントはプロジェクト知識体系の中でもなかなか難しいところと言われています。実務でも種々の制約条件もあり難しい領域と思います。ICT系の場合でも当然調達 (契約) が有るのかと思いますが、プロジェクト遂行の中でもその影響度は少し異なるのではと推察します。当然のことですが、エンジ・建設系では、調達が上手く行くかがプロジェクトの工程・成果に大きく影響します。以下に述べるのは、プロジェクト全体の契約形態とか、そのプロセスではなく、スタートしたプロジェクトに於ける、資機材の調達に係わることです。

 プラント建設に於ける資機材の調達は、全体予算の半分を締め、この調達の成果が直接にプロジェクト収支に大きく影響します。また、プラントの設計では3D CADが使われていますが一品一品の機材寸法が必要で、土建設計用には荷重データも必要になります。これらをプロジェクト・マスタースケジュールの必要な時期に入手できるようにマネジメントしなければなりません。この調達に於ける設計情報、並びに、工事現場への納期は、殆どがクリティカルパス上にあり、調達業務をスタートしてから納入までが重要な作業となります。

 一般的に、BPO (Before Place an Order:発注前) とAPO (After Place an Order:発注後納入まで) の管理に2つに分けられます。
BPO管理は一般的に、
調達計画 : いつ何を調達するかを決定する。
引き合い計画 : 調達品の要求事項を文書化し、発注候補先を特定する。
引き合い     : 適切な見積り、入札、オファー、またはプロポーザルを得る。
発注先選定 : 納入候補者の中から選定する。
発注
となりますが、先のオンラインジャーナルでも触れたように、クリティカルパス上の長納期品 (LLI : Long Lead Item) の調達にまず取り掛かります。これらには高圧反応器とか主要大型圧縮機があげられ発注から1年以上かかります。一般的にこれらはプロジェクト受注作業の中で客先とも協議しスタートになったら出来るだけ早く発注できるように仕組んでいきます。
 引き合い計画から発注先選定までのプロセスで、一番問題となるのが通常客先との契約の中に含まれている、ベンダーリストの制約です。客先は購入先を制限する為に契約の中に購入先を指定しています。これ以外のベンダーから引き合いを取ろうとすると承認の取得が必要になります。しかし、多くの場合は指定ベンダーの数は多く記載されています。少なく選択しても最後は全てに引き合いを取ることになります。この辺の交渉が肝要になります。前もって指定ベンダー先に照会状を送り、引き合いに参加するか否かを確認し、客先にそれを示し引合先を少なくすることを行うこともあります。指定ベンダーの数が多いと、引き合い、発注先選定に時間がかかるからです。引き合いの技術的評価比較表を客先に提出し承認を得る、また、客先からの技術的な疑問にも回答して行かなければなりません。ここで遅れを取ると発注が遅れプロジェクトスケジュールが計画通りに進まなくなります。引き合いの技術比較評価表も複数のベンダーから見積もりを取っておりそれらが揃うまで提出できません。客先の承認期間は10日以内とか契約定められていますが通常は遅れて来ます。この時期のスケジュール遅れの原因は確りと文書に残して、後の客先との交渉に使えるように進める必要があります。プロジェクトのスタートから数ヶ月間はとても厳しい時が続きます。毎日夕方になるとプロマネとプロキュアメントマネジャー、設計の担当が首を揃えて状況確認と対策会議を行い、ここが正念場となります。
 昔の経験で、2社から1社を選定する時に失敗したことがあります。調達予算の問題です。予算は厳しいものでよっぽどの理由がない限り2社の高い方から購入するという理屈は成り立ちません。何とか価格差を詰めて、担当のチーフエンジニアに技術的な見解を提出させましたが、両者共採用可能と。しかし、実績も多く私も採用経験のある1社は僅かの差でしたがどうしても価格が下がらない。プロジェクト予算が厳しいこともあり価格の安い機器を購入することになりました。この時に感じていた悪い予感は当たるもので、現場で据付し試運転の時にトラブルを起こし相当に苦労することになりました。無理してでも自分の経験あるベンダーを購入出来るように動くべきであったと反省しています。

 APO 管理は、大きく工程管理と品質管理、輸送になります。
 発注したメーカからKickoff Meetingを行い、技術的な確認、マネジメント上の要領確認を行います。まず設計情報(図面)提出の督促と監視です。場合によってはエンジニアをメーカに派遣し打合せし図面を持って帰らせることも行います。
 工程管理では、毎月写真入りの進捗レポートをベンダーから提出させますが、機材のクリティカリティー、ベンダーのグレード、工場の稼働状況など、過去の実績も含めて、事務所からの督促・監視、訪問ベース(インターバルを決め)などを取り決めます。問題の発生が予想されるベンダーには、工程管理員・検査員を常駐させることも行います。
 検査員の常駐にもなかなか難しい問題があり、工場と同国人であったことが要因ではありませんが、経験、コンピテンシーの問題もあり、工場での問題をなかなか的確に発見できない場合もあります。気になるのでベテランの日本人検査員を1日派遣したら夕方に「図面通りに製作されていない問題あり」と電話が入り、その問題を解決する為に翌日その工場の本社に飛んで工場長と対応策を確認し、部分再製作をさせたことがあります。
 工場での詳細設計が終わり、製作に入る前には通常PIM (Pre Inspection Meeting)を主要機器に対して開催します。これからの検査での要点、工程を確認し、工場視察を行うものです。この時は出来るだけ客先のプロマネにも同行して頂き、工場に対して品質保証と納期厳守を客先の前でコミットさせるようにします。客先も工場の状況を見てより理解を深めることが出来ます。
 PIM以降もプロマネとして何度か工場を訪問し、品質・納期確保に努めますが、実際は納期が遅れそうであるとか、色々なことがあの工場この工場と発生し機材が納入されるまでは、問題解決プロジェクトのようになります。プロジェクトはチームワーク、客先も含めて“オン・ザ・セイムボート”の精神で、何とか皆で知恵と力を合わせてプロジェクトの成功に向けて行きます。

 まだ、調達管理に関してお伝えしたいこともありますが、大きく捉えて以上であり、この辺で終わりにしたいと思います。今回は一般的な解説でしたが、機会がありましたら個々の事象で参考となるマネジメント要素を紹介したいと思います。

以上

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