今月のひとこと
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プロジェクトの情報管理

オンライン編集長 三浦 進 [プロフィール] :2月号

 2015年も既に1ヶ月が過ぎました。まだ、寒い日が続きます。皆様のご健康をお祈りいたします。2月は、ジャーナル52号(4月上旬発行予定)の取り纏めに入るところですが、PMに関する講座講師等もあり忙しくなりそうです。皆様に有益なジャーナルをお送りできるか、ここは編集委員と頑張りです。

 今月は、プロジェクトの情報管理に関しての考察と教訓を述べたいと思います。一般的にも当て嵌ることかと思います。P2Mでは第4部 第5章「情報マネジメントと情報インフラストラクチャー」に該当するところですが、プロジェクトの遂行に関して実践的にふれてみました。

 エンジニアリング産業では、マーケットが国際的であること、昨今のメガコンペティションから設計のアウトソーシング・受注形態におけるコンソーシアム/JV化が多く、デザイン・エンジニアリング分野におけるCAEの高度化、プロジェクト管理(工事管理を含む)のIT化等は当たり前となっている。(ICT系のプロジェクト遂行においても同様と考えられる。)このような情報システムを基盤にした環境では、作業の進め方や情報伝達手段が当然変わってくる。プロジェクトマネジメントにおいても業務プロシージャーの見直し、作業支援ツールの整備・高度化、業務組織の改革、情報化に伴う新しい職務・職能の整備強化、更にこのための人材育成・個人のITリタラシーの向上等の必要性が増大している。
 契約発効から、設計(E: Engineering)、調達(P: Procurement)、建設(C: Construction)、運転・検収(C: Commissioning) 所謂、EPCC型プロジェクトの運営においては、プロジェクトの始めに、顧客、協業企業、ベンダー等との予想される関係性(契約形式・内容に強く左右される)から、当該プロジェクトに採用される最適なシステムの計画が必要である。
 設計ツールを除くプロジェクト管理のシステムを分類すると以下の通りである。
設計文書管理システム
機器情報管理システム
バルクBM (Bill of Material) 管理システム
REQ(Requisition)・引合管理システム
購買管理システム
ベンダープリント管理システム
納期・配船管理システム
検査管理システム
現地材料管理システム
 これらのシステムから情報を引出し、プロジェクトライフを通した、プロジェクトスケジュール管理システム、プロジェクト予算・BM管理システム、工数管理システム等が統合される。
 以上は概要であるが、これらを如何に効果的に使いこなすか、また、プロジェクトコントロールのためにどの様に情報を引出し見えるようにしていくのか、その環境作りと活用は簡単ではない。
 どの企業でも同じであろうが、プロジェクト管理に限ってみても基幹システムとそうでないもがある。ここで基幹システムとは経営管理システムを含む事業管理システムで、どのプロジェクトでも必ず使われるものを意味する。例えば、プロジェクト予算システム、工数管理システム等が代表的な例で、個々人のタイムシートの実績はプロジェクト毎に工数管理システムに取り込まれ、工数の作業別予算・実績管理、工数単価で計算されプロジェクトの予算管理にも入る。プロジェクトマネジャー若しくはそれを補佐するプロジェクトチーム員が毎日見られる、また、ここに予定(ETC)を入力しなければならないとされているものである。その他、この基幹システムに準じて必ず使われるシステムがある、設計文書管理システム、引合・購買管理システム、ベンダープリント管理システム、納期・配船管理システム、検査管理システム、現地材料管理システム等が挙げられる。引合い・購買管理システムからは実績情報がプロジェクト予算システムに送られる。
 これらシステムの中で、設計文書管理システム、ベンダープリント管理システム、引合・管理システムの中での時間情報(図書の発行・入手・承認等、見積入手日、技術評価完了日、発注日、契約納期、最新納期、現地受入必要日)などは、社内外の情報を入力する必要がある。この1次情報の入力が不足・不正確であると正しい情報を掴むことが出来ない。管理システムが有っても別途作成のエクセルシートでプロジェクトマネジャーと購買担当者が頭を突き合わせての作戦会議など、1次情報入力の足を引っ張り、情報の共有化と活用に障害をもたらす要因となる。
 とかく見過ごしがちであるが、情報管理システムを扱う場合は、特にプロジェクトの立ち上げ段階で、情報入力のために十分なリソースを確保することが大切である。これが出来ないとプロジェクト計画は遅れて行く。プロジェクトマネジャーのITリタラシーにもよるが前向きなプロジェクトマネジャーは、設計文書管理や購買情報システムの持つ機能から状況を分析し客先承認返却遅れの督促、スケジュール遅れのクレームに使っている。話は飛ぶが、現地での検査、資材管理ではITシステム無しではまともな工程管理も出来ない。資材・部品が何処におかれているかバーコードで入出庫管理を行うなどは通常の管理となっている。
 もう一つ、異なった視点でプロジェクトの情報システムの活用を考えると、PMO (Project Management Office) などでプロジェクト状況の把握を行う場合である。プロジェクトマネジャーが直接見ているものを見ればよいが、一般的に加工されたデータ(進捗Sカーブ、リスクレジスター、etc.)も必要となる。これらをポータルなどに上げてプロジェクト状況が一覧できるなど理想的である。システムとして可能であるが、基幹・準基幹システムからのデータで構築できるのか? そもそも誰のためのシステムで誰が見るのか、その基本を確りと押さえないと使われないものを作ることになる。加工データは毎月誰が何時までに作り、誰がシステムにUpするか、その仕組みは簡単か、ルールも決める必要がある。しかし、これらの情報の多くがプロジェクト自身は認知しておりPMOに提出するだけとなれば、プロジェクトにとっては仕事が増えるだけとなる。如何に理解させMUSTとさせるか、通常業務の流れの中で情報がシステムに流れることが可能か等々難しい課題がある。良くできたシステムでも長続きしないこととなる。
 IT化が進んで、益々プロジェクト状況は把握しやすくなるであろうが、先に記述した1次情報を確実に入力する(される)仕組み、その為のリソース確保が重要であり、加工された情報においてはその必要性が何処にあるのか確りと捉え、使い易い“見える化”を進める必要がある。

以上

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