プログラム・プロジェクトマネジメントの普及について
読者の皆様、明けましておめでとうございます。
未年になりました。今年の未年は、やっと低迷期を抜け出し来年から始まる好調期への移行期で、良いことが次々におこる楽しい年なるようです。何事にも真摯に取り組むことが、好機を呼び込む基本になるとのことです。
PMAJジャーナルが、多くの方から新しいプログラム・プロジェクトマネジメントの実践、普及等への知恵を頂き、より有益な機関紙となりますよう、宜しくお願い申し上げます。 昨年12月上旬にPMシンポジウム2014特集を中心としたPMAJジャーナル51号を発行することができました。皆様のご協力のお陰です。現在、52号の作成をしており4月上旬の発行を目指しています。
今月は、年の初めでもあり、何時も経験的なプロジェクトマネジメント実践に係わるテーマで拙稿しておりますが、ここ約1年PMAJスタッフとして働き、改訂3版P2Mを含めて、歴史を振り返りながら、これからのプログラム・プロジェクトマネジメントの普及について私見を述べたいと思います。
PM モデルやその歴史は、文献等で多少異なるが、近年では1950年~ Object Oriented、1980年~ Process Oriented、21th CenturyのMission Orientedとしている。また、古くなるが、筆者がJPMF Journal 創刊号に寄稿した1996年PMI®96 Annual Seminars & Symposiumでの Dr. Harold Kerzner Ph.Dによる “The Growth and Maturity of Modern Project Management” 講演 (1996/10/7) を見直してみると次の様に捉えている。
● |
Traditional Project Management : 1960 - 1985
プロジェクトマネジメントは国防・航空宇宙・建設業界に限られた時代 |
● |
Renaissance Period : 1985 - 1993
企業のマネジメントがプロジェクトマネジメントの有効性を認識し始めた大きな目覚めの時代 / 小さな仕事にもプロジェクトマネジメントを適用させて行った |
● |
Modern Project Management : 1993 - 1996
プロジェクトマネジメントを取り巻く環境の(量的・行動に関する領域の)変化が大きく、伝統的なプロジェクトマネジメントに変革が必要とされた時代、期待される能力は技術的な面のみでなくビジネスの知識・リスクマネジメント・企業内を纏める統合能力 |
古い話であるので、現在につながる要点をのみを振り返ってみる。
「1993年から1996年は、プロジェクトマネジメントを取り巻く環境の変化が大きく、伝統的なプロジェクトマネジメントに変革が必要とされた時代である。時代を見るとリセッションがプロジェクトマネジメントの発展を促したと解釈出来る。リセッションになるとバランスシートを良く見なければならない、また10%の人員の削減を進めて行かなければならない。顧客からの仕事も無くなってくると企業のシニアマネジメントは何か変革を考えていかなければならなくなる。--(中略)-- 歴史的にプロジェクトマネジャーは技術者出身が多く、彼らの立てる目的の多くは技術的な項目であったが、プロジェクトマネジメントが成熟して来ると企業ではビジネスの目的が技術的な目的と同じように重要視されるようになった。今日では技術的な目的というよりビジネスを最も重視するようになってきたし、また統合能力が重視されるようになった。その企業のビジネスに対する知識を理解しないでどうしてプロジェクトマネジャーが務まるであろうか。ビジネスを理解できないでどうしてリスクマネジメントを行い、組織内を統制・統合していくことが出来るのであろうか。--(中略)-- 今日においてプロジェクトが短い期間で進められるようになると、必要なことは改革や統制力と権限と言った視点ではなく、組織横断的なチームワークであり、またスポンサーシップが不可欠であるとのことに気がついてきた。プロジェクトスポンサーシップは複雑な組織の調整等に有効であり、更にプロジェクトマネジメント/マネジャーが普及・増加して来ると経営としても最高の権限をスポンサーに持たせる様になってくるであろう。このように興味のある変革は企業が最もプロジェクトマネジャーに期待している能力が技術的な面ではなくビジネスの知識・リスクマネジメント・企業内を纏める統合能力であり、これが将来において支配的となる」と述べている。
その後、2000年代に入りMission Orientedな、変革を成し遂げるリーダーや、様々な専門家を統合して新たな価値創造を実現する視野の広いプロフェッショナル(高度な専門的職業人)を育成するP2M (Project and Program Management for Enterprise Innovation)が開発された。PMがビジネスの世界、価値創造の企業改革に入り込んだ。「プログラム」という語は、古くから「プロジェクト群からなる大型総合プロジェクト」の意味で使われており、現在でもPMI® The Standard for Program Management (Third Edition)では「Program management is the application of knowledge, skills, tools, and the techniques to a program to meet the program requirements and to obtain benefits and control not available by managing project individually.」と定義されているが、P2Mがプロジェクトもプログラムもミッション由来であるとし、戦略的な視野とリーダシップを持つプロフェッショナルに必須の実践力基盤としているのとは異なる。
企業や組織に於けるプロジェクトマネジメントの成熟度は、現状で様々な状態にあると推察される。90年代から示されたProcess OrientedなModern Project Managementの考えは現在でも有効であり、計画や事業を個別プロジェクトと捉えてそれらを成功に導く為の目標管理に必須となる。プロジェクトマネジメントにまだ目覚めていない、もしくはまだ組織に根付いていないところは多いと思う。PMAJでは、大学教育向けに「プロジェクトの概念」(近代科学社2013年1月)を発刊しており、また、それ以前から長年に渡って大学・大学院へのPM教育支援を行っている。PMI®には PMI Education Foundationがある。PMの初等教育・中等教育および草の根普及を支援するPMI内財団の活動である。各種無償教材の提供、教育グラントの提供、災害復旧活動支援PMツールなどを提供し、また、各チャプターメンバーを通じたハンズ・オン普及活動を行っている。PMを低学年から教えることで、Managed by Project要素を教育しPM人口を増やそうとしている。これらの活動も参考になると思う。
P2Mのプログラムマネジメントは、プロジェクトマネジメントの上位概念であり、第4部(事業経営基盤)、第5部(知識基盤)、第6部(人材能力基盤)と基本となる各論が細かく解説されている。講習会も資格レベルのPMC, PMSと其其に合わせ準備されている。プログラムマネジメントはプロジェクトマネジメントの上位概念であるが、現状の課題を分析し、As-Is からTo-Beを考えミッションプロファイリングを行い、プログラムを設計する、プログラム統合マネジメントの流れなど、これらの基本要素に絞り短期間の教育プログラムを作ることは可能で、プロジェクトマネジメントの入門者でも大学低学年にも通用するものが出来ると考える。この様な、1日コース、半日コースなどで安価な入門編を提供することで更にPMC, PMSへの志願者を広げることが出来るのでは思う。
プロジェクトとプログラムをセットにした入門コース、大学等でのPM教育の普及に努める。これら地固めになるような活動を進めて行き、P2Mを広めること(更に多く知ってもらう)に力を入れて行くことかと考える。そのためには、PM研究・研修部会で資格を取得した元受講生が講師になって部会員が増えて来た様に、PMC、PMSの資格取得者から現在の資格試験対策コース主講師陣に加えて、教えたいとの新しい講師のリソースが集まって貢献されることが望まれる。
この様に身近で解り易い教材を仕立て、P2Mを知ってもらう、教え込む、その場を多くして行くことがまずは大切でないかと考える。
以上
|