今月のひとこと
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EV と EVM

オンライン編集長 三浦 進 [プロフィール] :4月号

 私がPMAJのお手伝いをさせて頂くことになり、もう1年になり、桜の季節が来ました。皆様も新しい気持ちで新年度に入られたことと思います。3月は4月上旬に発刊予定のジャーナル52号に追われました。特集に「PMAJガイド」「新春PMセミナー2015」等を組みましたが、種々のことがあり予定より遅れて進んでおり、編集を急いでいるところです。

 今月は、以前から触れてみたかったEVMの教え方、理解の仕方について述べて見たいとおもいます。
 プロジェクトマネジメントの手法が広まっていない大昔は、進捗率の測定も確りと決められていなく、例えば、土建工事の進捗を現場で確認「所長、今工事はどのくらい進んでいる?」、所長「35%位ですネー」と、「そうは見えない、まだ20%位ではないか?」。この様な会話がありました。これは共通の進捗率測定手法を持ち合わせていなかったからです。出来高(EV)の考えを使用してキチンと進捗率の測定要領を決めておけば上述のような会話のズレは生じません。まず、EVは、スケジュールのプログレス管理の基本であることを理解させることに注力すべきと思います。

 プロジェクトマネジメントの講習会では必ずEVM (Earned Value Management) が、コストマネジメントと合わせて組み込まれています。EVMをテキストに従って、EV とAC (Actual Cost)から CPI (Cost Performance Index) を求めてその効率が続くと仮定してEAT (Estimate at Completion) を予想する等の管理手法は、極めて理論的で米国DOD (Department of Defense)での調達で使われており、日本でも採用の方向があります。しかし、理論的にはシンプルですが、実践的にはEVMで将来予想・問題点の把握を行う為には、組立の元となるWBS Activitiesを正しく分解し、どのレベルで管理を行うか方針を定め、管理レベル内のそれぞれのWP (Work Package), Activitiesに計画予算のリソース(Man Hour or Cost)を現実的に配分しなければならなく、また、それに合わせて実績の収集が可能な仕組みが必要となります。EVMのコンセプトをプロジェクトマネジメントの知識として知っておくとは、タイム・コストの統合マネジメントの手法として必須とされていますが、実務レベルで理解するには奥が深く、入門者には難しいとか、教えても解らないであろうとの話も聴くこともあります。
 一方で、タイムマネジメントは、プロジェクトの方針、戦略に合わせたスケジュールの作成、進捗の測定、計画から乖離のモニタリング、問題解決、将来予測を行うプロセスであると説明されます。しかし、多くの場合このタイムマネジメントで進捗測定の手法は細かく説明されません。プログレスについては、コストマネジメントに続くEVMの中で解説され上述の通りとなります。
 この様に通常は、EVMは1つのテーマとして教えられますが、まず、EVのコンセプトを「プログレス管理」として理解させ、スケジュール進捗管理の手法として捉えさせる必要があります。EVMは「パフォーマンス管理」であり、Step by Stepで理解すべきと考えます。いつもEVが確りとおさえられなく教えられているように感じます。プラントの様な複雑系プロジェクトで報告される進捗率は客先と合意された手法でEVを計算しています。(他の業種でも進捗率の計算は同じでしょうが。)

 以下のテーブルはプロジェクト管理の教材で、「プログレス管理」と「パフォーマンス管理」を進める上での相違点を説明したもので古くから使われているものです。
出典:(有)デム研究所 城戸俊二 代表 教材より「プログレス管理とパフォーマンス管理のために使用するデータ項目と精度」
出典 : (有)デム研究所 城戸俊二 代表 教材より「プログレス管理とパフォーマンス管理のために
使用するデータ項目と精度」

 このテーブルは、マンアワー・データを用いてENG'G WORKを管理する例。
( 注 1 ) 精度が悪いと実績値(ACWP(AC))と比較する意味が薄れる。
また相対WEIGHTの精度が悪いとBCWS(PV) vs ACWP(AC)の精度が落ちる。
( 注 2 ) データの絶対精度及び相対精度が悪くてもプロジェクトの状態把握するに充分であることが確認されれば使用できる。
( 注 3 ) 作業計画と比較するために管理単位(WORKコードの何桁まで 区分するか)、実績付け出しの精度および実績データ処理のタイミングが重要となる。

 EVMは、Sカーブ3本線で説明されますが、これに関連して昔議論されたことがあります。「プログレス管理の為にSカーブは何本作成されるか? 計画線(PV)と出来高(進捗) (EV)の2本線であればよい。より細かく作成するならEarly Start と Late Startの計画線2本と進捗線1本で十分である。実費償還型契約でなく一括請負契約の場合に実績(AC)を示す必要はない。請負契約者の実績(お家の事情)を敢えて示す必要はない。こんなに状況は苦しいとアッピールしたいなら別であるが」と。契約の要求に従って管理の要領は決められますが、プログレス管理だけであれば計画(PV)の組立と進捗(EV)の仕組みを構築することです。全体進捗からどこに問題があるかは下位のWBSの進捗を見れば発見することが可能です。但し、当然に進捗(EV)とその達成に要した実績(AC)を測定し比較していないので効率を計算し将来予測をするは出来ません。この場合の将来予測としては、進捗(EV)カーブから類推する、今後のEVを予測計算してみることが出来ます。

 これからはEVMが、益々活用されるようになると思いますが、一般的に「プログレス管理」は、出来高(EV)と計画値(PV)の比較であり、客先と共通の管理手法を持って進捗管理をすすめるものであり、その上で「パフォーマンス管理」に入っていくことが大切かと思います。

以上

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