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英語と日本語に架橋する

プラネット株式会社 中嶋 秀隆: [プロフィール] :2月号

皆様、順調に新しい年の滑り出されたことと思います。

 プラネット(株)の中嶋です。弊社はPMの研修・コンサルを中心とするビジネスを手がけ、15年ほどになります。これまでに活動の一環として、PM関連の各種出版物を出させていただいています。その中には、書き下ろしもありますし、英語から日本語への翻訳も含まれています。
 昨年末、嬉しい驚きのニュースが届きました。私どもが翻訳した『世界一わかりやすいプロジェクトマネジメント』(総合法令出版)がアマゾン 「オールタイム ベストビジネス書100」に選出されたというのです。この本は米国の書店でたまたま見つけ、帰途の航空機内で一読し、とてもよい内容に感心したものです。PMの国際大会で各国のコンサルタントで話をしている時、こんな話題が出たことがあります。「PMについて手際よく紹介した実用書を1冊挙げるとしてらどれか? 理論一辺倒ではなく、適度の詳しさで?」その時、意見が一致したのがこの本でした。友人である米国人コンサルタントも、この本を「PM分野で最も面白おかしい本」といっています。
 ある言語で書かれた文章を別の言語に翻訳をするには、楽しいと同時に骨の折れる作業です。外国語を翻訳するのに求められる能力とは、どんなものでしょう。
 日本のPMコミュニティでPM関連書の翻訳活動でボランティアを募るとき、真っ先に挙げられるのが外国語力のようです。選考基準に対米○○年とか対英○○年などという経験が幅を効かすこともあるようです。ですが、実際に翻訳をいくつか手がけると、これは大きな間違いであることに気づきます。翻訳という作業の本質から外れているからです。
 では、翻訳に必要な能力とは何でしょう。それには3つあります。優先度の順に、日本語表現力、情報収集力、外国語力です。

( 1 ) 日本語表現力
 まず、日本語表現力。外国語の本の日本語訳は、まともな日本語でなければならなりません。原文か透けて見えるような訳文では、読者を辟易とさせてしまいます。そのためには普段から、正確で筋の通った、よい日本語を書くことを心がけたいものです。

( 2 ) 情報収集力
 原文の書き手は自分の視野と思考の枠組みの中で文章を紡ぎ出します。つまり、翻訳されるということを頭に入れていないことが多いのです。つまり、翻訳する人の都合は考えていません。そして、当人の独自の背景や感慨が原文ににじみ出てくることもあれば、その人しか入手できない情報や、仕入れたばかりの情報、最先端技術の情報も現れます。翻訳者が一読しただけでは、チンプンカンプンということも少なくないのです。が、ここで匙を投げていたのでは、翻訳はできません。可能な限りの情報に当たって、原文の真意を把握しなければなりません。歴史や地理、文化、政治的背景、技術動向…等々、書物や出版物、ネット情報など、考えられる可能性をできるだけ洗ってみます。もちろん、PM書では翻訳者の実務経験がものを言うこともあります。原文の意味を咀嚼し、翻訳文は正確を期す。これをまとめて、情報収集力といっています。

( 3 ) 外国語力
 優先度の3番めでありながら、極めて重要なのが外国語力です。原文を読めなければ、全くのお手上げです。

 こんなことを話したら、ある友人が新年会で志を語ってくれました。英語から日本語への翻訳をすでにいくつか手がけている人ですが、フランス語の本『楽観主義者のため小辞典』を日本語に訳したいそうです。幸い、実績からいって、上の (1) と (2) は合格かもしれません。ですが、(3) のフランス語の力はかなり心もとない状態とのことです。でも、外国語力は、私の優先度では3番目です。新しい年に、彼の志が実ることを期待してやみません。

以上

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