永続敗戦論 ――戦後日本の核心――
(白井聡著、(株)太田出版、2014年8月18日発行、221ページ、第15刷、1,700円+税)
デニマルさん: 1月号
今回は、2014年に幾つもの賞を受賞した話題の本の紹介である。先ず、第35回石橋湛山賞の受賞がある。この賞は、自由主義・民主主義・国際平和主義の思想の継承・発展に貢献した著作に贈られる。過去に長谷川慶太郎(1982年)、寺島実郎(1994年)、田中直毅(1996年)等、2014年に著者が受賞した。次に、第12回角川財団学芸賞の受賞である。この賞は角川書店の創業者である角川源義が創設したもので、日本の文学・歴史・民俗・思想・宗教・言語等の著作を対象としているが、フィクションは含まないという。第1回の2003年は、三浦佑之が受賞している。2014年が呉座勇一と今回紹介の著書である。もう一つが、第4回いける本大賞の受賞である。この賞は、2010年に「ムダの会」(編集者や全国紙の文化・学芸記者等が、著者・出版等の意見交換をする会で、20年の活動歴がある)が、人文書やノンフィクション作品を選考対象としている。これも日本の文学賞のひとつである。この本は以上の団体からの表彰作であり、日本の戦後問題を多面的に掘り下げた内容である。「戦後レジームからの脱却」の意味することに関心ある方は、ご一読をお勧めしたい。
永続敗戦とは ――「戦後」の終りを考察する――
日本の戦後とは、太平洋戦争に敗れた1945年8月15日の終戦記念日からである。あれから75年を経ても未だ戦後かと著者はいう。更に、戦後=平和と繁栄という構図が、現在では死語となっている。そのことを明確に認識したのは、3・11の東日本大震災と福島原発のメルトダウン事故処理対応にあると指摘している。原発=安全という夢想が現実化し、隠れた問題が表面化している。敗戦を戦後という構図を見究めて「永続敗戦」と書いている。
戦後日本の核心 (その1) ――日本とアメリカの関係を見る――
戦後を語るには、ポツダム宣言の受託、米軍の駐留、平和憲法に始まり、日米安保体制から「国体護持」に至る諸々の事象の理解がベースに必要であるという。日本が、政治的・経済的・軍事的に対米関係において自立しているかどうかは、我々の国家・社会の在り方に掛かっている。その自覚が不可欠であるとも書いている。更に、国体とは何か、成すべきことは何か、護るべきことは何か等 3・11以降それを見直す条件が整ったと纏めている。
戦後日本の核心 (その2) ――日本の近隣諸国との領土問題――
戦後日本を取り巻く東アジアには三つの領土問題(竹島、尖閣諸島、北方領土)があり、ことある毎に問題視されている。その領土問題には、歴史的、政治的な経緯があり、両国間の理解が異なっている。その基点が、ポツダム宣言受託からサンフランシスコ講和条約に至る戦後処理の問題にあると著者は指摘している。そしてこの問題をより複雑にしているのは、サンフランシスコ講和条約に韓国、中国、ロシア(当時ソ連)が入っていなかった経緯がある。故に、日本が個別に解決せざるを得ない戦後処理問題である。この本には、それぞれの問題とその解決の糸口が書いてあり参考になる。ご興味ある方はご一読下さい。
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