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「日本再生“アベノミクス”を成功させるために何が必要か」 (9)
脳内改革が求められている (9)

東京P2M研究会 渡辺 貢成: 12月号

A. 先月は見識の高いZさんにご参加いただき、グローバリゼーション下での日本企業の問題点をⅠで指摘し、対策をⅡで示した。
Ⅰ. グローバリゼーション下での日本企業の問題点
  20年間の空白は目先の国内問題を優先し、グローバル社会での競争力強化に熱心でなかった。
  戦後から一貫して継続した弱者を保護せよという発想から脱皮できていない。グローバリゼーションという厳しい競争では、弱者を支援しても強者にはなれないという現実を避けてきた。
  時代は駆け足で変わっているという認識を国民全体が持っていない。それは自らをグローバリゼーションの流れの中におく決断に欠けていたからである。グローバリゼーション下での経営をデジタル化し、経営のスピードを心掛けたグローバル企業に対し、日本企業は米国経営の質を変えたソリューションパッケージを導入しながら、現状を改革しない旧来の稟議方式を維持する決断をし、経営陣から失敗者を出さない方式を20年間維持してきた。
  其のため各界のトップは『ノブレス・オブリージュ』の気概に欠けていた。トップがリスクをとる覚悟で、経営にまい進する気概の不足で、経済の停滞は避けられなかった。
  企業の人材育成が、将来に向かった戦略を出さず、旧来の教育の在り方である知識吸収型の踏襲で、マニュアル化した戦略の踏襲で、グローバリゼーションを乗り切れる人材が育たなかった。東大の世界順位が年々低下し32位である。

Ⅱ. 対策
  (1) 基本事項
    1 ) 『モノつくり技術:日本という過去のモノの見方』を切り替える経営が必要である。其のためには、グローバリゼーションに適合する重要な経営要素に優先順位を与え、確実に実践し、成功に向けた経営を実施する。そのための優先順位を下記に示す。
      資本の効率的な活用
      需要をつくり出す知恵の発揮
      経営資源:グローバル人材の育成と人材が容易に活用できる知的資産の整備
      マネジメント:人の管理を意味するマネジメントから脱却して、経営の将来性を管理する方向に切り替える。
      物流の領域開発:グローバリゼーション下ではどの領域を支配するかの戦略が重要。
企画・設計、製造、グローバル物流、システムの運用かおケースバイケースで考える。
    2 ) 国際金融資本の動向を調査と対応
    3 ) グローバル戦略の立案:マニュアル化されたMBA的な戦略だけではなく、将来を見据えたうえでの、現実の競合者の裏をかく戦略が求められる。(韓国の戦略は参考になる)
    4 ) 日本的商習慣からグローバル商習慣へのレベルアップ
日本企業の商習慣は大企業に好都合な形態となっており、グローバル社会では通用しない。グローバル社会で通用する商習慣を採用する。
      契約の概念、② グローバルスタンダードの受け入れ、③ ナレッジマネジメントの重視

  (2) 具体的案件への政策転換
    1 ) 20世紀型ビジネスモデルの進化(インフラビジネスの運用部門への進出(ローカルコミュニティとの付き合いのあり方の進化)
    2 ) 21世紀型電子・異業種融合空間式AタイプBM(ビジネスモデル)(10月号記載ずみ)
    3 ) 21世紀型電子・コミュニティ融合式Bタイプコミュニティモデル(今月記載予定)の説明をした。

  さてDさん今月はBタイプコミュニティモデルの話をしてくれませんか。

D. これから考えるコミュニティモデルは、新しい社会における、利便性、経済性を考慮したコミュニティモデルとその運営形態です。まだ事例が多くありません。この発想が大きく発展するかは疑問ですが、トライしてみます。

  (1) 歴史に見るコミュニティマネジメント
コミュニティという組織形態は時代と経済の基盤によって変わっています。
最初が①狩猟時代、次に②農業時代、③工業化の時代④脱工業時代へと変化しています。しかし、いずれの場合もコミュニティの中ではパワーが存在します。 経済の形態により、3つのパワーの相対的位置が変わっている。では、3つのパワーとは何か!パワーとは筋力(武力)、金力、知力です。
    1 ) 狩猟時代のコミュニティ
狩猟時代のコミュニティは集団による狩猟が中心となり、知力に優れた長(首領)がコミュニティ支配します。しかし、狩猟は周辺のコミュニティとのテリトリー争いがあり、武力による解決が求められてきました。ここでは武力・知力社会といえます。
    2 ) 農業のためのコミュニティ
      農業と狩猟の大きな差は何でしょうか。農産物は土地が必要です。農産物は貯蔵ができます。農業は直接的には筋力、知力が必要ですが、土地を買うには金がいります。土地を外敵から守るには武力がいります。農産物は売ることで金を蓄えることができる。財産ができると、資産の維持が大きな使命となります。
      農業のコミュニティは直接的には開墾、灌漑施設の建設、季節的な共同作業等のコミュニティが必要です。土地は成功したものが所有し、零細農民を小作として使い、地主が益々金持ちとなる構造となっています。
      資産ができると資産を相続するための『家』を相続するための血族がもとめられる社会となります。ここでは金力・武力・知力という構造となります。農業を中心とする社会では、後に武力をもった集団が力を蓄え、封建領主が誕生し、武士と農民という関係が確立されてきました。この構造は武力・金力・知力の社会構造です。
    3 ) 江戸時代のコミュニティ
      江戸時代は4層構造になっています。武家のコミュニティ、農民のコミュニティ、都市化した城下町のための職人コミュニティ、商家のコミュニティという士・農・工・商という階級コミュニティが存在しました。武家は軍隊組織的コミュニティから次第に官僚組織コミュニティとなりました。農家は農事中心のコミュニティが存在します。都市は職人中心のコミュニティ、商家は金融と流通を司るコミュニティを構築しました。
      これらのコミュニティは家を守っていくという基本思想があり、これを補う組織として相互支援というコミュニティが社会維持に貢献しました。
その典型が江戸の職人コミュニティで「江戸っ子は宵越しの金は持たない」という社会のため、日常や緊急時のための「向こう三軒両隣的」な相互助け合いの人情コミュニティが存在しました。経済の基本が米で行われていたため、士農工商という序列になっていましたが、各大名、小名はコメだけでは藩の経済を賄うことができず、コメ以外の成果物の生産で、禄高の不足を補っていました。現実は経済の実態は米から通貨による経済に変わっていったが、江戸幕府は田沼意次という秀才は米経済から金融経済への意向を試みましたが失脚し、コメ中心経済の封建制の禄高経済を維持していたため、農民と武士が社会の実経済の成果を享受することができず、経済的には商・工・武・農が実質的な順位となっていました。
    4 ) 明治以降の工業化社会のコミュニティ
      緩やかな資本主義の進行で、農家のコミュニティは継続されるが、都会は工業や商業のための給料取りが生活し、官としての文官、軍人としての武官という高級者層と工業・商業のための都会生活者が存在し、中級以下の都会人は向こう三軒両隣的コミュニティを形成していました。
    5 ) 戦後のサラリーマンという種族の出現
      資本主義の規模拡大と専門職の必要性から、雇用者を効率よく活用するための方式として、終身雇用、年功賃金システムが採用され、人々は雇用先のコミュニティに属するようになりました。これらの雇用者は地方の農家出身者で学歴を得て、雇用されるため、国民の70~80%近くが、会社人間として生きることになりました。
      このシステムの問題は昔ながらの長男を中心とする『家』を守るという家系維持が薄れ、生活中心の会社コミュニティに属しながら、核家族中心の生活が社会に定着し、日本国民は中産階級として幸せなサラリーマン生活を享受してきました。そのため日本古来の『家』の概念が薄れたため、基本的に子供が親の面倒を見るという習慣も薄れ、会社人間を卒業したサラリーマンは『コミュニティという場』がなくなってしまいました。

  (2) 戦後の新しい家族コミュニティの弊害と対策
    1 ) 問題点
      核家族と老人の孤独問題
      老人の買い物難民、老人の病院たらい回し、孤独死問題
      介護による親族の苦労
      医療費増加による福祉政策破綻の問題
  老人の死亡前1年間の医療費が日本全体の医療費の1/3を占めている。
  尊厳死、安楽死問題を真剣に考えるべきであるが、医師の既得権益がその妨げとなっています。

  (3) 問題解決のための現在実践されている数少ない事例
    買い物難民、医院へのアクセス対策事例
    丸亀商店街の生活モデル
    丸亀商店街に老人専用マンションを建設し、1階に商店街、2階にクリニックの入居、3階に老人のための食堂、娯楽室、雑談室、介護・リハビリ室を設置した

    山万不動産による世代別住宅開発方式
      初期開発は子連れ中年層のための郊外住宅開発
      30年後駅近くの繁華街に老人用マンション開発
郊外住宅は子供が独立し、老夫婦、独居老人、空き家で占められる。このため老夫婦専用の繁華街2DKマンション建設で、郊外老夫婦に転居願う。長年の友達も同時に引っ越すために旧来のコミュニティがそっくり転居する。
旧郊外の住宅は、新しい中年子連れ家族向けにリフォームし、新築より安く売り出す。世代別時間差住宅開発方式と呼ばれている。
    不動産デベローパ年代別時差開発

    通院できない歯科医療を必要とする患者への訪問サービス
高齢化医療に革命を起こす:デンタルサポート社 社長 寒竹 郁夫
売上高48億円 従業員690名(歯科医療コーディネーター)
一人の歯科医が20人のための訪問医療ができる。
現在歯科医が10万人、歯科診療所68.000施設
歯科医の年収は5人に1人が300万円以下。在宅介護の患者に朗報。

  数少ないながら徐々に充実し始めていますが、ここで新しい形態である里山資本主義という概念を来月紹介します。

以上

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