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「エンタテイメント論」(81)

川勝 良昭 Yoshiaki Kawakatsu [プロフィール] 
  Email : こちら :12月号

エンタテイメント論


第2部 エンタテイメント論の本質

6 創造
●読者への質問
 先々月号のエンタテイメント論(79)で読者に2つの質問をした。その内容を以下に再度掲載する。その際に、「次号で(答えを)説明する」と約束した。しかし次号とせず、敢えて今月号で説明することにした。何故ならこの難問を2か月間でじっくり考えて欲しかったためである。

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 本号で「理性と感性の位相転換とは何か?」を「後述する」と書いた。しかしその説明を本号で敢えてせず、それに直結する「質問」を読者に投げ掛け、次号で説明することにした。

 その理由は、本稿の読者に質問して考えて貰う事をせず、本号で淡々と説明すると「コロンブスの卵」が示す様な教訓にならないためである。また「優れた発想」のために必要な固定概念や先入観を排除することが如何に難しいかを少しでも体験して貰う機会を与えられなくなるためである。頑張って以下の質問に答えて欲しい。

① 理性の「位相転換」に関する質問
 1+1=2の世界は理性で判断され、誰しも納得できる世界である。ならば理性で判断され、誰しも納得できる1+1=1又は1+1=3の世界は存在するか? 答えよ! 固定観念や先入観を打破すれば、答えられるかも? これはトンチの質問ではない。真面目な質問である。

② 感性の「位相転換」に関する質問
 感性で感じられ、異次元の世界に飛翔する世界とは、具体的にはどの様な世界を意味するか? 答えよ! また敢えて1+1=?の数式に表せば、「?」の値は何か? 答えよ! 固定観念や先入観を打破すれば、答えられるかも? これはトンチの質問ではない。真面目な質問である。

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●理性で納得できる1+1=1又は1+1=3の世界とは?
 その答えを見付けるためには、例えば、常識どころか、自明の理とまで考えられている「三角形の内角の和は180度」を根底から疑うのである。この様な常識にも、自明の理にも反する、とんでもない事、即ち「内角の和が180度以上又は以下になる事があり得る」事を理性的、理論的に考えるのである。筆者は、これを「理性の位相転換」と定義している。

 本発想法で最も強く主張している事の1つは、この「理性の位相転換」と別途説明する「感性の位相転換」を基に「自由発想」する事である。この両者なくして「優れた発想」は生まれない。逆に言えば、優れた発想を生み出せず苦悩し、苦労の末に素晴らしい発想に辿り着いた人物は、意識的又は無意識に何らかの「位相転換」を行っていた事が多くの文献で分かる。

 最近、日本ではビジネス・イノベーションが注目され、その実現への挑戦がようやく本格化しようとしている。またその成否の鍵を握る「優れた発想」を生み出すための「発想法」も注目され、日本や海外の様々な「発想法」が紹介されている。しかし不思議な事に、どの発想法も、固定概念や先入観の排除を主張しているが、筆者の定義する様な「理性の位相転換」や「感性の位相転換」を主張するものは殆どない。

●「三角形の内角の和は180度」は正しくはない。
 すべての理論は、ある前提条件下で成り立っている。前提条件が変わると当該理論は成り立たない。考えられる限りの前提条件を変えても、その理論が成り立つ様な理論はあり得るか? 物理学の分野では、前提条件が変わっても常に成り立つ理論は、唯一「エントロピー論」だけと言われている。

 さて誰しも学校では「三角形の内角の和は180度」と学んできた。しかもこれを絶対的真理と疑わない人が数多くいる。もし筆者が「正しくない」と言えば、「お前、馬鹿か!」と言われるだろう。しかし実際は「正しくない」のである。学校でも「正しいない」と教えるべきである。何故なら学校は真理を教える「場」だからである。

 重力変化が一切影響せず、純粋理論的且つ抽象的に描かれた水平面の三角形のみが180度なのである。地球を含む宇宙空間で描かれた三角形は、180度以上の場合や180度以下の場合が殆どある。これこそが1+1=1や1+1=3の世界の一例である。従って180度は正しくないと考える方が実際的で現実に即している。


 ちなみに三角形とは3点を最短距離で結んだものをいう。光は直進するから、光で三角形を描くことが出来る。しかし光も重力で曲がる。従って完全な180度を作れない。この事を証明したのが「相対性原理」である。これは「位相幾何学」がヒントになっている。

メビウスの輪 左:メビウスの輪
 これは、位相幾何学の出発点になった。位相幾何学は宇宙物理学の出発点になった。
 これは、輪の表と裏が繋がっている。この表面を辿ると無限に続く。∞の無限記号はこれから生まれた。

●時間と空間は絶対不変か?
 ニュートンは、「空間と時間」、「エネルギーと物質」を絶対不変の存在とした。しかしアインシュタインは、その事を疑い、ニュートンが対象とする地球空間から無限の広がりと地球上ではあり得ない事が起こっている宇宙空間を前提条件とする「理性の位相転換」を行った。これに依って新しい、優れた、飛躍した発想を生み出す事を可能にした。

 彼は、「空間と時間」は絶対的存在ではないことを証明した。例えば、宇宙空間の星の強力な重力によって空間が歪むこと、その中を最短の道を進む光は屈折する事を理論的に証明し、相対性理論を構築した。その後の進化した宇宙観測技術は、光の屈折を正確に実証した。

 彼は、「エネルギーと物質」も絶対的存在ではないことを証明した。それは「エネルギー」と等価で、変換する事が可能である事も証明した。これこそが原子爆弾を生み出し、原子力発電技術を派生した。

左:重力による空間の歪み、中:アインシュタイン博士 右:エネルギーは物質と等価(→原爆、原発)
左:重力による空間の歪み、中:アインシュタイン博士 右:エネルギーは物質と等価(→原爆、原発)

 1+1=2と云う絶対的な世界は、1+1=1や1+1=3という信じられない世界も理論的にも、実際的にも実存することをアインシュタインだけでなく、多くの科学者は証明している。

●「重力波望遠鏡」による時空のゆがみ観測
 アインシュタインは、一般相対性理論に於いて、超新星爆発、超高密度星合体、ブラックホール誕生等に依る大質量の物質の激しい動きが時空の歪みの波となって宇宙に伝わると予言した。

 この「重力波」は間接的に存在が確認されているが、直接観測はまだない。日米欧が競って大型重力波望遠鏡の建設を進め、直接証明に挑戦中である。

 先進技術のレーザー光の超精密な物差は、到来した重力波で捕まえ、空間のわずか伸び縮みと時間変動を検出する。日本のこの重力波望遠鏡はKAGRAといい、同じ名前のプロジェクトが岐阜県奥飛騨の神岡鉱山の地下で建設中。軌道上に望遠鏡を打ち上げ,宇宙誕生直後のインフレーション期に放射された宇宙背景重力波を観測しようという計画も日本にある。


 本プロジェクトの目的は、以下の通り。
プアインシュタインの一般相対性理論の検証
宇宙誕生のより初期の情報の取得、および宇宙重力波背景放射の検出
非常に強い重力場での物理現象の観察
重力波を捕らえる意義である。

 理性の位相転換による「新しい知」の発見である「相対性原理」などを本気と本音で実証しようとする日本人関係者の試みに、我々は、敬意を表し、支援すべきであろう。

●発想が行き詰まった時こそ「理性の位相転換」
 >理性発揮(左脳思考)で「優れた発想」を生めず、行き詰まった時こそ、思考の同一平面(経営場面、プロジェクト場面、研究環境など)での「演繹法」「帰納法」「発想法」の展開を立体面に切り替えると云う「位相転換」をすると難問を打開できて、「優れた発想」を生む。

同一平面から別次元での発想へ

●理性の位相転換で成功した実例=宇宙食ラーメン
 日清食品の創業者兼会長の安藤百福氏は、日清食品のインスタント・ラーメンの「消費場」を地球上から宇宙空間に位相転換した。そして新しいインスタント・ラーメンの分野を築いた。それは、「野口聡一・宇宙飛行士」の宇宙食ラーメンである。

宇宙食ラーメン「スペース・ラム(Space Ram)」

 日清食品と宇宙航空研究開発機構(JAXA)が共同開発した宇宙食ラーメン「スペース・ラム(Space Ram)」は、米国航空宇宙局(NASA)のスペースシャトル「ディスカバリー号」に搭載された(日清食品、2005年7月27日公表)

 スペース・ラムは、微小重力(無重力)空間でもスープが飛び散らないように、スープの粘度を高めた。スペースシャトル内で給湯可能な70℃のお湯でも湯戻しできるように小麦粉やでんぷんの配合を工夫した。麺も1本1本が飛び散らないように、湯戻し後も形状を保持する一口大の塊状麺(特許取得)を採用した。

 この開発には安藤会長が「チキンラーメン」開発の際に生み出した「瞬間油熱乾燥法」を活用された。同技術は、世界中で年間に653億食も生産されるインスタントラーメンの基本製法である。味つけは「カップヌードル」をベースに、しょうゆベース、みそ味、カレー味、とんこつ味の計4種類が作られた。

 スペース・ラムは、米国、ロシア、日本など15ヶ国が建設を進めている国際宇宙ステーションに組み立て予定の日本実験棟「きぼう」での利用が決定された。日清食品は、「宇宙食開発のノウハウを活かして、簡便性の高い、新しい加工食品の応用開発を開始した。

●理性の位相転換で成功した実例=3Dプリンター
 名古屋市工業研究所の小玉秀雄(64歳)は、新聞の2次元印刷を3次元印刷できるかもしれないと考えた。この大胆な「位相転換」によって3Dの基本アイデアを発想した。しかし彼の職場の支持を全く得られず、自力で特許申請した。論文も発表したが反響はなく、日本の企業からの支援が全くなく、意気消沈した。そのため特許申請後の「審査請求」もしなかった。その結果、3Dの特許は消えた。その後、彼は英国で優れた発想に贈る「ランク賞」を受賞(1995年)した。しかし事態は変わらなかった。

 その後、小玉に遅れること4年の1984年、チャールズ・ハルが3Dの特許を取得し、「3Dシステム」のベンチャー企業を立ち上げた。同社は、米ストラタシス社に次ぐ、3Dプリンターの世界2大メーカーに発展した。

 日本には科学、技術を事業化する「目利き」は殆どおらず、居てもその目利き結果に投資する企業が殆どいない。日本のベンチャーキャピタルは、事業化の初期段階のベンチャー企業には投資をしない。既に事業化実績があり、上場の見通しがあるベンチャー企業にしか投資しない。これではベンチャーキャピタルとは言えない。日本の国や自治体はベンチャー企業に金は貸すが、投資はしない。しても微々たるもの。個人投資家のエンジェルも日本に殆どいない。その結果、日本は世界最低の新規事業起業率である。




つづく

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