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P2Mに関わる理論と実践

筑波大学 アソシエイト 梅田 富雄 [プロフィール] 
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伝統的なプロジェクトマネジメントは、1945年以降現在に至るわが国の成長過程のなかで実践的な体系化がなされてきたように思われる。一般的なマネジメントは、必要に応じて社会科学の分野である経営学に基づき実践が行われているが、プロジェクトマネジメントについては、やや特殊な展開が行われてきたように見受けられる。主としてアメリカでの実践を通して専門家がまとめた書籍が多数出版され、特にエンジニアリング主導のプロジェクト業務分野では、これらに経営工学が加わり、QCDに関わる種々の方法が実践的に適用され、成果を上げてきたように思う。このような背景に対して、マネジメント主導の視点を取り入れることが社会的要請として感知され、P2Mが使命達成を目指して展開されてきたと考えている。1997年、わが国で初めて、カリキュラムとして経営学基礎、工学基礎、経営情報システムをベースに、研究開発、経営戦略、システム工学その他、理系と文系に属する科目を取り入れ、工学系、経営系、情報システム系の3系列から成る千葉工業大学工学部プロジェクトマネジメント学科 * の設立に関与することになったが、それ以来、協会とも関わりを持つことになり現在に至っている。
P2Mを社会科学の一分野として位置づけ、今後も発展、進化していくためには、いっそう理論と実践のバランスがとれた素養を身につけ、プロジェクト活動を行うことが求められると考えている。したがって、エンジニアリング系のプロジェクトマネジャーは特に経営学の素養を身につけ、グローバル展開をしていくことが必要であると思う。最近発行されたP2Mガイドブック改訂3版は、構成上も国際標準に合わせてあり、経営の視点も大幅に取り入れられ、理論と実践のバランスがとれた内容になっているように思う。10年ほど前にPMシンポジウムで100名近くの参加者に講演した折にM.ポーターの競争戦略、バリューチェーンについて聞いたところ2,3名しか知らないとの状況であったことを今でも鮮明に覚えている。今日では、このようなことはなくなったと思われるが、最近話題の共通価値創造については、どのような状況であろうか。P2Mが社会貢献に資することを目的として、サステナビリテイ志向のプロジェクト運営に関する研究活動を15年あまり行い、その結果を論文として国際P2M学会などに発表してきた。今後、多数のプロジェクト関係者が本協会および国際P2M学会と密接な関係を構築し、わが国独自のP2M展開がなされることを期待したい。

* Engineering No.75,1996.5 に学科紹介が掲載されている

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