今月のひとこと
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リスクマネジメントで感じること

オンライン編集長 三浦 進 [プロフィール] :11月号

 PMAJジャーナル編集部では12月上旬刊行予定のジャーナル51号(PMシンポジウム2014特集)の発行を急いでいます。原稿が集まり、編集者での作業中です。記事の作成にあたっては、編集委員だけでは不足し、毎年のことですが多くのボランティアのご協力を頂いており、感謝している次第です。皆様のご期待に添えるジャーナルが発行できることを願っております。

 今月は、リスクマネジメントで日頃感じていることを述べたいと思います。皆様も同じことを考えられていると思いますが、なかなか実践は難しいことかとも思います。

 リスクマネジメントの業務プロセスは、「方針策定」、「リスクの特定」、「リスクの分析評価」、「リスク対応策の策定」、「対応策実施と監視・評価」、「リスク教訓の整理」から構成される。 その実施も含めて管理の要点は当ジャーナルの読者にはPM資格取得者も多く、周知のことであろう。細かなマネジメントの要点はP2M等にゆずるが、リスクマネジメントを効果的に実施する上での大切なポイントは、次の3点であると考えている。
1. リスクマネジメントはプロジェクト期間を通じて実施される。
2. リスクマネジメントは、プロジェクトチーム員全員で行われること。
3. 特定されたリスクを管理する場合は、リスクオーナ(当該リスクの担当者)が決められリスクに対応していく。

1. リスクマネジメントはプロジェクト期間を通じて実施される。
 プロジェクトのリスクは実務においては、プロジェクトスタート前に拾われ評価され、回避する等必要な対応策が取られた上で、見積コストの中で予備費として計上されているものである。同種のプロジェクトである場合は経験的に、例えば設計費のx %とかで参入されるが、プロジェクトは同種としてもユニークなものであり、本来は、要件定義、契約仕様・条件のレビューを行ない、リスクを特定し、定量化し、リスクテーブルを作成し、過去の実績等にも照らして現実的な対応策また保有可能なリスク期待金額を予備費として確保すべきである。ここが出発点となる。顧客との交渉を経てプロジェクトは受注をもってスタートとなるが、見積時点の担当者がそのままプロジェクトマネジャー(PM)となる場合と、新たに任命されたPMに引き継がれる場合もあろう。契約交渉上の課程で新しいリスクが発生していることも多く、プロジェクト実行計画を作成する為にも、プロジェクトのスタート時に改めてリスクの特定~対応策の策定を行い、リスク管理テーブルを作成し、実行予算における予備費の計上額も決定される。ここまで述べてきたことはプロジェクトの開始時期に起こることである。プロジェクトの実施期間中には、新しい問題が発生し、プロジェクトは別名、「問題解決プロジェクト」と言われる状態になることも多い。最近は、リスクマネジメントも組織的にシステム化されてきていることと思うが、プロジェクトの週報、月報、定期的な成果報告などで、リスクマネジメントの推移を報告、必要な対策を講じていくことになる。この様にリスクマネジメントは、プロジェクトの遂行期間を通じて実施されると言うことが重要な点である。

2. リスクマネジメントは、プロジェクトチーム員全員で行われること。
 リスクマネジメントの業務プロセスで、「リスクマネジメントは、プロジェクトチーム員全員で行われる」は、極めて重要な視点である。プロジェクトはチームで人がマネジメントして行くが、種々の専門家から成り立っている。プロジェクトがグローバル化、複雑化して行く中では、特に、リスクの特定は全員で実施し、リスクを読み取りプロアクティブに皆が動く文化を築くことが必要である。新しリスクが発生していないか神経を尖らせることは、チーム員個々の役割・責任であり、プロジェクトの報告システムによって取り上げて行く。ある顧客の書類を参考に見せてもらったことがあるが、XXX管理要領書といった書類でも殆どの書類の最終章は“リスクマネジメント”に関しての記述が入っている。XXXを進める上で如何なるリスクが考えられ、どう対応するが検討されている。また、週間会議などでも状況報告に終始することなく、新しいリスクの発生はないかの検討もその議題の1つとすべきである。

3. 特定されたリスクを管理する場合は、リスクオーナ(当該リスクの担当者)が決められリスクに対応していく。
 とても常識的なことであるが、余り語られていない、時には明確になされていないことではないか、と取り上げた項目である。リスク管理テーブルのリスク対応策の場合は、全員でではなく、誰か適切な人材が責任を持って管理する必要がある(氏名と管理期間の欄があるべき)。不明確となると誰も追跡を行っていないことになりリスクマネジメント全体の意味がなくなる。リスク管理テーブルの管理が如何に適切になされているかが課題である。
 類似のことで、教訓の整理とその活用がある。プロジェクトの開始時に、同種の過去の教訓を整理したもの(企業のKnowledge Management Tool, Project Report等から)を用いて検討会を行うことがある。これもリスクマネジメントである。過去に発生した問題、これから起きうるリスクが整理され検討され、再発防止を行うものである。
時として過去の問題だけの検討会で終わることがあるが、それでは時間が経てば忘れられ、結果的に同じ問題を引き起こすことになる。ここで検討され、新しいプロジェクトでも起きうるとされた項目は、リスク管理テーブルに折込み、過去の要因、今後の対応策を記述し、それを誰が何時までに実施するかを明確にして管理していく。
 誰が対応策を実施するか、リスクオーナ(当該リスクの担当者)を決めることは、個々のリスクマネジメントを完結していく上で欠かせないことである。

   とても基礎的な視点でリスクマネジメントに重要な3点を記述したが、常に忘れずに、また、自分の企業の管理システムには問題はないか、確認されることをお勧めしたい。

以上

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