今月のひとこと
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安全意識高揚について

オンライン編集長 三浦 進 [プロフィール] :10月号

 当協会の年中行事であるPMシンポジウム2014も総勢2,000名の参加者を得て無事終了しました。参加して頂いた方々、また、この成功の為にサポートして頂いた多くのボランティアの方々にお礼申し上げる次第です。皆様がここで何かを得られて、来年も参加頂けることを願います。

 今月は、安全に関して日頃感じていること、プラントの建設現場で経験したことをご紹介します。皆様が何かを感じて頂ければ幸いと思います。

 最近タクシーに乗ると「後部座席もシートベルトをお締め願います」とのアナウンスが流れる。現在では、助手席も含めて安全ベルトを締めるのは法で定められており皆守っている。高速道路では後部座席もシートベルトを締めなければならない。大昔のことであるが、学生時代に車の運転が好きで中古の車を購入した時は、2点式シートベルトであった。しかし、この頃はシートベルトを締める人は少なかったように記憶している。私は臆病なせいかベルトを締めていた。2点式のベルトは骨盤に確りと締めないと危ない。お腹に緩く締めていると衝撃で内蔵が壊れる可能性が高い。私は今でも飛行機に乗る時は、離陸と着陸の5分間程は、シートベルトを骨盤の所に確りと締め直している。
 カタールの超大型プロジェクトで長期に現場勤務をしたが、メジャー系顧客の安全に関する教育訓練は人命尊重の観点から徹底している。また、プロジェクト遂行において一番重要なマネジメントである。この中で、後部座席でもシートベルトを締めることが如何に大切かとのフィルムを見せられた。実際に起きたことであるが、5名が乗車しており後部座席真ん中の1人だけがシートベルトを締めていなかった。事故が起き不幸にも3名の方が亡くなった。シートベルトを締めていなかった人はフロントガラスへ飛ばされ、跳ね戻され、助手席の人の頭部と強くぶつかり、また、後部座席の1人の頭部にも衝突しその3名が亡くなったとのことである。慣性力は強い、現場では年2回安全大会が広場で開催され、各社から安全高揚のためのブースを設けアピールする。ここには、顧客のトップから皆が集まってくる。その中で毎回登場しているのが、衝突衝撃の体験モデルである。3点式シートベルトをつけて、傾いた所から滑り落ちて衝撃を体験する。私も怖々試してみたが20 km/h程でも強い衝撃を受ける。
 衝突衝撃から受ける慣性力をよく考えてみれば、何が起きるか想像はつくと思う。このことが理解できれば、身を守る為に普通の公道でも全座席シートベルトを締めるように心がける癖をつけるべきだと思う。

 メジャー系の顧客は、安全が身についている。先のシートベルトに関連するが、現場の視察でマイクロバスを使い、出発するときでも、ドライバーに全員がシートベルトを付け終わっているか確認させ自らも周りを見て声をかけ合う。安全な状態を確認してからバスは動き出す。これが習慣(掟)となっている。このメガプロジェクトの管理範囲内でシートベルトを締め忘れていることをセキュリティーに発見されると、「One strike out!」で、例えマネジャークラスでも揉み消しなど出来ない。次の日には現場から去らなければないことになる。
 この「One strike out!」は、色々と規定されおり、車のドライバーに関するものでは、スピード違反、携帯電話の使用がある。その他、現場での仕事で、安全ベルトを着けないで工事中の架台に登る、クレーンのブームの下に入る、仮説足場で安全検査(グリーンタグ)の有効期限が過ぎている所を見過ごして登ってしまう、等々である。ルールは厳しいが、怪我・事故を起こさない!との強い意思が含まれている。
 これらを徹底させるために、新しく現場で働く者には初期の安全教育がなされる。現場の安全担当がその任にあたるが、マネジャークラスは当番制で安全教育後の講話をする。「皆さん、遠いこの地に働きに来て大変だと思います。感謝します。皆さんがここで安全に働ける様に、ここのマネジメントは安全に働ける環境を作っています。もしも、何か不安に感じることがあれば、何時でも私に連絡ください。私は皆さんを助けます。私の携帯電話番号は XXX-XXXXです。何時でも連絡ください」。ここで大切なことは安全に働ける環境・システムが作られているとのことである。仕事始めの朝礼もマネジメントは当番制でどの工区に行くかが決まっている。ラジオ体操、安全担当の当日の講話のあと、安全に関連した話をすることになる。英語で話すが、場所によっては安全担当が通訳を行う。ここでの後の言葉は同じにしていた。「Everyone goes back home safe!!」である。これを書いたゴム製のブレスレットがあり私はいつもそれを身にして、最後に右手をあげて叫んでいた。
 この現場で安全を進める3つのGolden Ruleは、1.規則を遵守すること2. 声をかける。(危ない行為や状況があれば注意、知らせる)3. お互いを尊重する、であった。顧客と現場を視察・検査しているとこの基本が身についていることがわかる。暑くて休息をとっており、日陰でヘルメット、安全グラスを外している人を見つけても叱るような態度は取らない。見つけると近くに寄って行って、「大変ですネ、しかしここは危険な場所、幾ら暑くとも規則は守りましょう」と優しく話しかける。我々が気付く前に顧客は良く見ており問題を見つけると直ぐに行動に移す。この様な1つ1つが安全に継がり、作業員にもそれが伝わって行き、さらに労働生産性もあがる。私も同じように行動していた。

 顧客と現場での仕事を開始する前に、韓国で一緒に詳細設計を進めていた頃のことである。階段を降りていると、「Miura san, Put your hand on the hand rail!」 と言われた。それ程の歳とは思っていなく、階段を1段抜きで降りる若者を見ると羨ましく思うのであるが、怪我をしない安全の為に大切で、今は癖になって来ている。(歳だから??)
 また、会議が終わって離れるとき、必ず椅子をキチンと仕舞う。そのままであると誰かがつまずき怪我をする原因を作る。執務室で席を離れる時も同じであろう。これも今は癖となっている。
 この様に日常の1つ1つから安全が確保されていくのである。

 私が家族に昔から伝えている安全標語は、「安全第一!左右上下前後ろ、戸締り、火の用心!!」である。

以上

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