グローバルフォーラム
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「グローバルPMへの窓」(第85回)
閑話休題

グローバルPMアナリスト  田中 弘 [プロフィール] :11月号

 グローバル・プロジェクトマネジメント界に関わる者にとって9月末から10月は大変忙しい月である。PMI、IPMAの世界を二分するグローバル協会の世界大会があるし、他の各国協会の国際大会もこの間の開催というのが多い。今年はIPMAもPMIも世界大会をパスしたが、代わりに今年から私のレパートリーに加わった中国とセネガルの業務が10月に発生した。
 10月生まれの私は、一昨年はシンガポール・アジアパシフィック大会中に高層ホテルで、昨年はクロアチアドブロブニクで開催のIPMA世界大会閉会レセプション中に誕生日を迎え、友人達がお祝いをしてくれたが、今年はかろうじて5時間だけ家に居て、午前中に上海経由蘇州に向かい、蘇州のシャングリラホテルで関係の方々にお祝いの席を設けていただいた。
 さて、今月大変驚き、かつ、いたく感動した事は、中国蘇州で大学(理学部)3年生が、博士研究に関する通訳(英語↔中国語)をやってくれたが、通常人には難解な用語も含めて大過なく役割を果たしてくれたことである。私も教員を始めた10年前までは全く知らなかったが、Ontology, epistemology, positivism, constructivism, replication, convenience sampling, external reliability, internal reliabilityといった学者とその卵の業界用語であるこれらの単語を学部生が知っていたのである。
 私が蘇州を訪問したのは国慶節の大型連休中で、いつも通訳でお世話になっている女性は実家の取り込みで急遽ワークショップに参加不可となり、私の学生が連れてきたこのお嬢さんのお世話になった。場数の問題で、話すのはさほど流暢ではないが、用語は極めて正確であった。なぜ理学部の学部生でここまで英語ができるのかを尋ねたら、現在の中国では、公立の小学校で1年生から英語は正課であり、英語の教員はほぼ全員オーストラリア人であるとのこと。学年が進むにつれて種々の角度から英語を学ぶ環境にあり、成績の良い子であれば、語彙は自然と豊富となるそうで、各州の名門大学に進学する子女達は、学部の4年間で、米国、英国、フランス、あるいはオーストラリアの大学修士課程に問題なく進学できるほどの英語力を身につけるとのこと。裕福な家庭の子女は、中国の高校から米国の名門大学に進み、修士あるいは博士まで進む構図が普通であるそうだ。ちなみに通訳を務めてくれた学部生は、英国の修士課程で中性子の研究をやることで準備を進めているそうだ。

 今月は本ジャーナルの三浦編集長が月末に米国のPMI大会に出張であるので、原稿を早く出す必要ありとお触れがでている。そこで今月は閑話休題とした。
 ここ1年くらいで、食事の量がかなり減り、海外での会食で料理の量に困ることが多くなったが、もともと食いしん坊(というか雑食系)であるので、時々美味なもの、変わったものに出会うとやはり幸せである。
 今年出会った美味トップ・ファイブを上げてみる。
 一位は、ロンドンのLondon Summit of Leadersという世界シンポジウムのガラ・ディナーで供されたラムのローストであった。ヨーロッパの宴席ではメインコースはラムというのが多いが、英国最高の社交クラブで、参加費30万円(私はスピーカーでタダ)の宴であるので、このように美味なものがあるのかと思ったくらい肉の柔らかさ、旨味、肉汁の香ばしさが素晴らしかった。隣席のフランス人のエリートビジネス人も彼の人生で最高のラムであると保証してくれた。
 二位は蘇州で、初めて食した蘇州蟹を挙げたい。日本では、一般的に上海蟹として知られるが、本物は江蘇省蘇州市にある陽澄湖産で、陽澄湖産は、他の通称上海蟹の4倍から5倍の価格だそうで、原産地証明として、お子様ランチの旗みたいなものが茹でた一匹ごとに立っている。日本の毛ガニの3分の1くいと小ぶりであり食べにくいが味は極めて濃密である。蟹好きの日本人にはこたえられないが(中国人でも本物は滅多に食べられないとか)、西欧人はあまりの濃い匂いに手を出さない人が多いらしい。
 三位は、サンフランシスのベイブリッジの下のプロムナードテラスにあるベトナム料理店のフレッシュベトナム料理。なかなか予約が取れないそうであるが、午後1時過ぎに行ったら30分待で席がとれた。ベトナムには行ったことがないが、生春巻など、日本、フランス、アジアで食したどのベトナム料理よりも美味しかった。
 四位にはセネガル ダカール市の大学院学長代行のお宅で度々いただいた、セネガルの代表料理チェブジェン(Thiéboudienne)。フランス、北アフリカ、西アフリカの料理文化が混ぜ合わさった感じの、フランスのブイヤベースあるいはスペインのパエリャのセネガル版のごとき家庭料理で、魚貝スープで濃厚に炊いたライスを大皿に盛り、その上に、各種の焼き魚をのせ、オニオンソースなどいくつかのソースをかけて、大皿を取り囲んで、一家全員で食す。
 五位は、フランス リール市のレストラン Sainte Anneのラムの骨付ステーキ(Entrecote d'agneau)。 今夏、自分の担当するラトビア人の博士課程生が無事博士認定を受け、お祝いの夕食会をした際に久しぶりに食べた。伝統的なフランス料理であり、大好きであるが、通常の1人前の1.5倍くらいあるステーキが3枚供されるので、1枚食べるのがやっとであった。フランス人は普段は質素であるようだが、レストランでは大食いとなる。
 番外では、パリのシャルル・ドゴール空港の近くのトランジットホテルでいつも食べているビーフステーキがある。フランス人は実はビーフステーキが大好きであるので、フランスのビーフ(リブ)ステーキはハズレがない。
 今月末には、また、このリブステーキを食べてセネガルに向かう。

蘇州蟹(上海蟹) チェブジェン
蘇州蟹 (上海蟹) チェブジェン

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