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「エンタテイメント論」(79)

川勝 良昭 Yoshiaki Kawakatsu [プロフィール] 
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エンタテイメント論


第2部 エンタテイメント論の本質

6 創造
●発想促進法 ③
=優れた発想は、徹底した理性(位相転換)と徹底した感性(位相転換)の同時同質の発揮である「自由発想」で生まれる。

 この「位相転換とは何か?」について後述する。位相転換は理性だけでなく、感性についても必要である。以前の号の発想促進法の③の説明で、感性の後に(位相転換)の字を書き込むことを忘れた。ここで訂正し、詫びたい。

●自由発想
 「自由発想」とは、何人も、何事にも束縛されず、自由に、大胆に、楽しく、豊かに、想像的に、仮説的に発想することを云う。まさしく言葉の通り、徹底的に自由に考えることをいう。

 しかし与えられた条件が厳しく自由度が狭くても、その制約条件の中で何としても自由にアイデアは考えることである。この様な厳しい考え方は、筆者が各種の発明、各種の事業プロジェクトの発想(思考=計画)と発汗(行動=建設と運営)を実践し、実現させた経験から得た結論である。従って条件が如何に厳しくても、如何に不可能と思われても、「自由に考え」、「自由に行動」することである。その厳しい過程で更なる「優れた発想」が生まれる。
自由発想こそ、すべて 自由発想こそ、すべて

 自己の束縛を解き放して、現実と空想の世界を自由に飛び回ることが出来れば、極めて楽しい体験をすることになる。本来、発想は楽しくなければ長続きしない。発想促進法の①で発想の動機が必要であるとしたのは、強い動機さえあれば、楽しくなり、長続きするからである。

●自由発想の歴史
 人類は、地球上に誕生した600万年前から現在まで、眼前に迫る危機に直面し、そこからの脱出を試み、豊かな社会と生活を築くため、命賭けで「考え」、「行動」してきた。その結果、今日の文明と文化が築かれた。

 一方現在、我々が使っている様々「発想法」は、たかだか50~60年前に開発され、活用されてきた歴史しか持たない。この様な発想法が開発されるもっともっと以前から人類は、何人にも、何事にも、一切束縛されず、自由な発想を行い、物凄い発見や発明を実現させてきたのである。本発想法は、その人類史に於ける「自由発想」に着目した。

●時代の主役
 人類の歴史は、「頭脳の発展」の歴史と言い換えられる。この歴史には必ず「主役」が登場し、活躍し、文明史、文化史、社会史、産業史、経済史などを築いた。この「主役」は、封建時代、民衆時代などを問わず、新しいものを発見し、発明し、世の中に価値あるモノを築いた人物であった。この主役については、紙面の関係から次号以降で説明する。


●ブレーンストーミング
 先人達の「自由発想」に着目して構築された本発想法は、ブレーン・ストーミング法と異なる。後者には自己批判禁止、他人批判禁止、ヒッチハイク奨励などのルールがあるが、前者には遵守するルールは一切無い。ひたすら自由に楽しく発想すればよい。従って本発想法の具体的方法論で提示した10個+4個の方法は、すべて遵守すべきルールではない。気に入った方法を活用すればよい。優れた発想を生むことが目的である。手段や方法に拘ることは本末転倒であるからだ。

自由発想のイメージ 自由発想のイメージ

 さて多くの日本人は、不思議な事に、「ブレーンストーミング法」が自己批判禁止、他者批判禁止、ヒッチハイク奨励などのルールを持っていることを知らない。このルールを全く知らず又は知っていても実際には従わず、ブレーンストーミングを実施している。その結果、期待する効果はあまり生んでいない様だ。しかし本発想法の「自由発想」に似た発想を、「ブレーンストーミング」の名の下で実施されている様だ。皮肉な話だ。

●左脳と右脳の機能
 左脳は、時間認識機能に長け、理性(理屈)的判断を得意し、右脳は、空間認識機能に長け、感性(体感)的判断を得意としている。しかし自由発想をする主体者はあくまで「両脳」である。

 左脳的機能とは何か? 「理屈」で直ぐに理解されるだろう。しかし右脳的機能とは何か? 「感覚」で直ぐに理解されるか? 理解し難いのが普通である。いずれにしても、左脳(理性)と右脳(感性)を同時・同質に自由に使うとは何のことか?  この問い自体が問題である。何故なら左脳と右脳は、「脳梁」で繋がっており、本来、別々に使うなど所詮出来ない。

 左脳か右脳が事故や病気で機能しなくなった場合でない限り、常に両脳一体で機能している。しかし片方の機能ばかり強く依存する仕事習慣や生活習慣を続けると、優れた発想が妨げられる。ここに発想法の活用する意義がある。


 「優れた発想」のためには、両脳を同時・同質的に使って行う。頭(理性)で考え、頭(感性)で感じて発想する。しかし体が感じて、優れた発想を直感する機能が存在する様だ。これについて別途説明する。これらの機能発揮は、まさしく「自由発想」から生まれる。

 しかし自由発想を実践するとなるとなかなか難しい。そのため本発想法の実践のため「理論指導と実践指導のセミナー」を開き、頭と体で体得して貰っている。この指導の考え方は、禅の教えの「理入」と「行入」に準じたものである。

 理入は理論指導、行入は実践指導をそれぞれ意味する。長い歴史を持つ「禅」の教えは、本発想法の構築に役立っている。禅が現在にも通じる事を分かれば、人間の素晴らしい知恵と発想の歴史を実感する事が出来るだろう。

●読者への質問
 本号で「理性と感性の位相転換とは何か?」を「後述する」と書いた。しかしその説明を本号で敢えてせず、それに直結する「質問」を読者に投げ掛け、次号で説明することにした。

 その理由は、本稿の読者に質問して考えて貰う事をせず、本号で淡々と説明すると「コロンブスの卵」が示す様な教訓にならないためである。また「優れた発想」のために必要な固定概念や先入観を排除することが如何に難しいかを少しでも体験して貰う機会を与えられなくなるためである。頑張って以下の質問に答えて欲しい。

●理性の「位相転換」に関する質問
 1+1=2の世界は理性で判断され、誰しも納得できる世界である。ならば理性で判断され、誰しも納得できる1+1=1又は1+1=3の世界は存在するか? 答えよ! 固定観念や先入観を打破すれば、答えられるかも? これはトンチの質問ではない。真面目な質問である。

●感性の「位相転換」に関する質問
 感性で感じられ、異次元の世界に飛翔する世界とは、具体的にはどの様な世界を意味するか? 答えよ! また敢えて1+1=?の数式に表せば、「?」の値は何か? 答えよ! 固定観念や先入観を打破すれば、答えられるかも? これはトンチの質問ではない。真面目な質問である。

つづく

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