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メンタル・マイルストーンの勧め

プラネット株式会社 シニアコンサルタント 中 憲治 [プロフィール] :9月号

 マイルストーンとは、「プロジェクト、プログラム、またはポートフォリオにおいて重要な意味を持つ時点やイベント」PMBOK®と定義されているが、様々なプロジェクトにおいて活用されている。以前、ある造船会社の「進水式」に招待されてことがある。進水式は、新造船プロジェクトにおいて、納期(新船をお客様に引き渡す)と思っていたが、それがマイルストーンである事を知ったことがある。船に命名する儀式と、オーナー参加のもとに行われる進水式を行うという重要なマイルストーンを経た後、船を水上に浮かべ船の内装工事を行い、それが終われば納期となる。新造船プロジェクトにおいては、進水式はプロジェクトのオーナーも参加する大変重要なマイルストーンだった。
 フルマラソンを完走することを一つのプロジェクトと考えると、多くの人にとっては、第一のマイルストーンは中間地点(21.098km)だろう。「もう半分走った」、「後半分残っている」etc、人によりこのマイルストーンの持っている意味は異なるが、重要な意味を持つ地点であることは間違いない。次のマイルストーンは人により異なるが、30km地点だという人が多数だろう。エリートランナーにとっては、この地点から勝負を賭ける人が多いといわれる。市民ランナーにとっては、これまでの調子を考えて、“個人最高記録”を目指すか、“とにかく完走の目標タイム”を決める地点で、これも重要な意味を持つマイルストーンといえる。
 フルマラソンより長い距離を走るウルトラマラソン(100km)についてもマイルストーンがある。これも人により異なると思うが、最初のマイルストーンはフルマラソンの距離(42.195km)地点、次は中間(50km)地点、ここまでのマイルストーンは、目標タイムで走るために、マイルストーン毎に予想タイムを計画して置き、この計画値と実績値をチェックしてその後に対応を決めるいわゆる“レビュー・マイルストーン(造語です)”である。しかし、中間地点以降のマイルストーンは、“レビュー・マイルストーン”に加え、もう一つの意味を持つ。私はこれを“メンタル・マイルストーン(これも造語です)”と呼んでいる。50kmを過ぎれば、身体的にもダメージが大きいが、それ以上に完走意欲を維持していくと事が重要になる。それまでは10km、あるいは5km毎のエイドステーションを利用しているが、60kmを過ぎれば2km~3km毎に設定されたエイドステーションを“メンタル・マイルストーン”として活用することになる。このマイルストーンの効用は二つある。一つは、自らへの激励である。「よくここまで走ってきた、後○◯kmだ、ファイト」と自らを励ます地点である。二つめは、他者からの励ましである。エイドステーションのボランティアの人たちから「お疲れさん、もう少しですよ!」と声をかけられると、「次のエイドまで頑張ってみよう!」と思える。このようなマイルストーンは、60km以降は出来るだけ短い距離で設定することが必要なのではないか。10時間も近く同じ運動を続けていると、身体的疲労感に加え、精神的疲労感が増してきて、“本当に完走できるのだろうか?”、“今回はもうこれ以上走ることは無理なのではないか?”など当初懐いていた強い目標達成意欲が薄れてくる。これをカバーするためには、“ここまで来たのだから、もう少し頑張れる”“これまでやってきたことが水の泡になるなんてもったいない”“残りはあと○○キロだ、あと何時間だ、これまでの努力を続けるだけでいいのだ!”“私はまだ行ける!”など、自らを励ます言葉をかけ、それまでの努力をできるだけ頻繁に評価し、次のマイルストーンまでの継続意欲を奮起させることが大切なのではないかと感じている。そして、それが他の人(ここではボランティアの人)から同じような励ましを受けることにより強いものになる。これが、“メンタル・マイルストーン”の効果であると考えている。
 業務としてのプロジェクトでも同じこと言えるのではないだろうか。
一つのタスクで成果物を得るまでの時間が長いタスクとか、あるいは所要時間が長いプロジェクトなどにおいては、プロジェクトの後半では、タスクの節目・節目において、 タスクやプロジェクトの完遂にむけて、これまでの努力を評価し、かつ“一息入れる”とか“目標達成への意欲を再確認”するとかの“メンタル・マイルストーン”を設定することも有効なのではないかと考える。

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